海上保安庁傍受部隊物語(元海軍特設根拠地隊)
(´・ω・`)架空線記(アンテナのほう。)
(´・ω・`)大蔵大臣が失言しなくて鈴木商店が南洋進出で儲けてる世界線…。(台湾銀行が台湾以外で儲けている。)
新たに内務省内に発足した海上保安庁は大日本帝国の海を担当地域として区割りされ。
第一区司令部から第九区まで別けられ横須賀に総司令部を置いている。
船は海軍の桟橋や民間船の隣に。
海上保安庁は各地の海軍基地内の特設根拠地隊を譲り受け、建物を其のまま利用、又は増設で対応している。
その為、海軍の基地の港湾施設を間借りが多い。
海軍と共同の施設が多いが、海上保安庁にとって一番重要な施設は無線所に成ってくる。
海上保安船は基本的に無線封鎖は行わない。
積極的に位置情報と気象情報を送信している為だ。
お互いの船舶位置を確認して常時救難信号の受信に対応する為に地上局も無線傍受に備えている。
東京無線電機が安くて高性能な無線機を販売し始め。
急速に無線を搭載する民間商船、漁船が増えたためだ。
そして問題が発生し始めた。
ある日、東京無線電機の本社にアポ無しの来客があった。
「海上保安庁第8区司令部、副長官…殿。」
「おお、南洋区を管轄する海上保安司令部に所属しておる者だ。」
名刺を読み上げる。
名刺の主は白い物が混じった髭と日に焼けた肌と皺…。
海軍上がりの海の男で長く船に乗っていたと一目で解る。
「弊社に何の御用でしょうか?」
海軍の見慣れた詰襟では無く開襟制服に胸に勲章と徽章を下げて。
如何にも歴戦の元海軍将校という風体の初老の男だ。
「うんうん、昨今、船に無線機が普及して、小型船にも搭載されておる。」
「はい、弊社の無線機は地上局用や小型船でも搭載できるようにラック式とユニット式を用意しております。」
元々、東京無線電機は神戸製鋼所の子会社である。
親会社からアメリカ製の船舶無線機を渡され、ソレを元に回路図を起こし直し改良して使っている。(コピー製品)
その為、高性能で評判が良い。(真空管はアメリカ製)
「うむ、わが司令部でも貴社の無線機を使っておる。ソコを見込んで…。作って欲しい物がある。」
「何でしょうか?」
「救難信号…。いや、電波の発信方向が解る機械を作ってほしい。」
意気込んだ相手の言葉に少々困惑する。
「はあ…。」
可笑しな物を欲しがる…。
無線は通信できれば問題は無い筈だ。
「救難信号を出す様な状況は相手も切羽詰まっておる。現在位置を送信する前に途切れる事も多い。後で各地で受信した電波の感度を示し合せれば大体の場所は見当がつくがすべて終わった後だ。」
現状では後で場所が判っても救援に向かうのには遅すぎる。
言いたい事は解った…。
「つまり…。電波強度計と方位計の合わさった様な物が必要だと?」
ダイポールアンテナでも指向性は在る。
「出来るか?」
指向性を持ったカセグレンアンテナを機械的に動かせば良い。
問題は波長で大きさが決まる。
今の通信波長ではかなり大きな物になる。(数メートル単位)
誘導波板は動力でも人力でも…。
「原理は説明できますが…。アンテナを稼働する機構が必要です。今の指向性のあるカセグレンアンテナでは(波長の問題で)小屋ほどの大きさになります。ソレを動かすとなると。」
簡単に半紙の裏にポンチ絵を書く。
「そうか…。」
ポンチ絵を眺める将校。
「無線機受信部は小改造で対応できると思います、指向性アンテナが大掛かりになり…。船などに固定して、船首を振るとか…。」
「運用上問題が在るな…。大掛かりな物だと実験だけで予算がかかりそうだ。調子の良い話だと思うが、製品を作ってもらって少数を購入して、良ければ正式化したい。現地からの隊員の要望で遭難者の早期発見に必要な事だ。もし完成すれば見せてほしい。」
そう言い残し…。
将校は帰った。
どうやら官公庁の移動に立ち寄った程度だ。
「うーん。困ったな。」
海上保安庁は何が欲しいか理解した。
地上局用の無線機で大量に納品したお得意先だ、意見は聞いてあげたい。
しかし、コレはお金に成らない奴だ。
「あの…。宜しいでしょうか?」
技術部の社員が声を掛けてきた。
「なんだい?」
「去年の電気会報誌のコレならどうでしょう?新しいアンテナ特許の”電波指向方式”だそうです。」
雑誌を読む。
「八木・宇田アンテナか…。これなら軽く安く作れそうだ。」
東京無線電機は八木&宇田、両博士に連絡を取り。
新しく旋回式指向性アンテナを作って地上疑似試験ではソコソコの性能を出した。
船舶用は受信アンテナだけを増設改造すれば良く。
陸上用は方位と受信感度に精度を上げる事に集中した。
船舶用の受信アンテナ旋回範囲は手動で300度で。
陸上設置型は電動モーターで390度。(配線があるので元に戻さないといけない。)
実際の艤装実験に付いては第8区艦隊の方々が快く協力して頂けた。
それ程、海上保安庁の方々がこの方位受信装置への期待を肌で感じた。
海上保安官の方々の熱意のある改善提案により。
苦労は在ったが出来た製品は海上保安庁が望んだ性能で多くの船舶と地上局に納品された。
その後、海軍に船舶搭載型を売り込んだが…。
あまり興味を示さなかった。
(´・ω・`)空中線…。(アンテナのほう。)