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100匹の回送艦物語。

「おおーやっと着いたな。」

瀬戸内海に入り日本の山々を見れば元気になる。

艦橋から双眼鏡を覗き。

目指す相生(あいおい)湾の入り口(岬の灯台)を見ればもう家が見えた模様な物だ。

「ふう。あと何回コレをやれば良いんでしょうかね。」

士官ではない船員がぼやく…。

播磨造船に雇われた船員だ、話によれば之で三回目の航海だという。

アメリカから駆逐艦を日本へ運ぶ簡単な話だと思われるが400名で8隻の大船団だ。

「鳥羽造船組が頑張ってくれるさ。」

舵を握る船員が話す。

水兵の経験があるという話だ。

どれもこれも暫く動いて居なかった船だ。

牡蠣を落としたり塗装したり、あまり通じない英語で石炭と食料を確保したり…。

少ない人員のため自分も参加して総出で給炭した。

終わったら顔が真っ黒で誰が誰かも判らなくなった。

今は良い思い出だ。

アメリカ出発前の苦労も一塩の笑い話に変わる。

一応武装がついている為、海軍から自分が士官(オブザーバー)として私が派遣されている。

アメリカ海軍の担当官との折衝、調達の通訳として参加したのだ。

「お!会社が見えてきました!」

マストの上の船員が叫ぶ。

湾の中を進む。

後方二つの煙突から黒煙を吐くアメリカ製の駆逐艦隊は日の丸を掲げ岸壁を目指す。

「あー未だ前の奴、手が付いて無いんだな…。」

並んで係留された4本煙突を見て呆れる船員。

「確かに動いてないな。」

双眼鏡を覗くと煙突が2本で補機と武装が全て取り外された痛々しい船体もある。

「この船もあんなんになるんですかねぇ。」

一緒に太平洋の荒波を越えた船だ。

回送とは言え船乗りとしてはあまり見たくない姿だ。

「ああ、あの船は初めに来た船だ、何せ神戸(製鋼所)の社長が元技本で海軍のお偉いさんだ。海軍に見せたらしい。」

「海軍さん買わなかったのか?」

乗って解るが、兎に角、アメリカの駆逐艦は使い辛い。

「数隻は南洋庁の警備部が買ったそうですが…。」

「改良しないと使えないか…。」

解る、この駆逐艦は最高速度は出るが、水兵の寝床が最悪だ。

真っすぐ走るだけで船尾に水が掛かったり。

旋回すると船体傾斜が酷い上に長時間走らせられない。

全てのボイラーに動力給炭機が付いていたのは驚いたが。

あまり良い性能ではない。

火床の状態が悪いので燃焼効率が悪すぎる。

精々、給炭員(火夫)一名分の仕事をする程度だ。

ボイラーを全力運転するには火夫の力量が重要で。

石炭船は機関兵の胆力だけで船の行き足が決まる。

機関補助員(火夫)の腕で航続距離(効率)が変わるのは石炭ボイラーの常識だ。

配置と連携が悪いボイラーでは火夫が疲れるだけで良い事はない。

「ま、あとは会社が何とかするさ。」

「アメリカ式は日本人には合わないよ。」

アメリカの駆逐艦の炊飯所(キッチン)には日本の船に必須の蒸気巨釜が無いので…。

米を炊くにも大変だ。(パンは焼ける模様。)

現地で調達した食料も謎の缶詰が多くて困った。

開けてみないと判らない物が多かった。

缶詰には悲喜交々だ。

思い出す。

「保管庫に残された木箱の中身が爆薬筒だと大騒ぎしたのは笑ったな。」

呼ばれて黄色い缶の注意書きがコンプレッションフードと書いてあり正体が判明した瞬間に皆が脱力した。(アイアンレーション)

「食料の缶詰だったのな。すごく不味かった。あの調理方法は本当に正解だったのかな?」

如何にも…。楕円の筒形で黄色い缶詰だ。

魚雷も実弾も有ったので皆、完全に爆破用の爆薬だ!と。

アメリカ軍用の如何にもな木箱に詰まっており、見た目で自沈用の爆薬だと思い込んだ。

「正しいと思うぞ…。向こうの何処かの宿の朝食で似たような物を食べた…。あれほど味が酷くなかったが…。」

「あれのお陰でホットチョコレート(ココア)が時々飲めるのは良いことだ。」

「そのまま齧っても良いと書いてあったが…。」

「試してみた。不味い、のどが渇く。唾が持ってかれる。チョコレートはまあまあだ。砂糖と胡椒が入っているのがいい。」

鼻歌で舵を取る船員。

「そうか…。一個もらって置こうかな…。家への土産に。」

アメリカの物価が高いので向こうでは贅沢できなかった。

「員数外だから問題ないだろう。喰ってしまったこと、でいい。」

何せ、今回の船には毛布や薬、包帯に聖書まで揃っていた。

全て書類にない(員数外)物資だ。

会社に雇われた俺達の仕事は、アメリカから日本に船体を運ぶだけだ。

引き渡せば仕事は終わり。

「初めの航海の時はアメリカ側もピリピリしてたが、今回はいい加減なモンだ。」

「そうだな…。」

船体を受領した後、調査した時。

まさか、全ての魚雷発射管に魚雷が装填されたままだった。

弾薬庫には4インチ砲の弾がそのまま残されていた。

流石に3インチ砲の方は殆ど空砲だった。

一応、向こうの担当官にも報告したが。

(意訳)『ああ。もう既に引き渡した後だから好きにしてくれ。アメリカ製の砲弾は暴発しないから安心してくれ。』

(意訳)『魚雷は発射管から外すと危険かもしれん装填したままなら嵐でも大丈夫だ。3インチの使い道は途中の寄港で礼砲が打ちたい放題だぜ!HAHAHA』

まあ、いい加減なものだった。

アメリカ軍の常なので仕方がない。

駆逐艦勤務が長かったが之で予備役だ。

最後の仕事が民間の駆逐艦の回送航海とは…。

(´・ω・`)ウィックス級駆逐艦に自動給炭機が付いていたか不明です!!

(´・ω・`)…。(発明されて10年以上経ってるし高速巡行する為にホッパー式の給炭機は付いていたと思います。)但し、初期型で全自動ではなく均等な火床均しは人力だと思います。


(´・ω・`)自動給炭機は長い年月を掛けて改良され…。(この時代に火床コンベアーは付いていないと思うわ…。)全自動が完成した頃に石炭船が消えた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 御参加ありがとうございます。皆さま、お題の艦を手にするため色々と考えていただいているようで、ありがとうございます。 [一言] 平甲板型は、史実でも日本海軍が鹵獲した艦がありましたが、こちら…
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