反撃と反感
「おい!何してんだよ?!」
扉を荒く開けて、少し肩が上がってる透が入ってきた。教室の空気は凍りつく。
「おー、王子様のご登場だ。」
クラスの誰かが呟く。その一声で張り詰めた空気は緩くなり、皆が笑い始める。
「飼い犬を庇いにきたの、真鍋くん?いい加減目覚した方がいいよ。どんなことコイツとしてるか知らないけど、騙されてるから。」
当たり前のようにクラス中がクスクスと笑う。楽しんでるんだ。みんなこの状況を。いつもとは違う非日常を楽しんでる。
「いい加減にしろよ!!」
透の怒鳴り声が教室中に響く。先ほど以上に空気が固まる。誰も言葉が出てこず、沈黙が流れてる。一息ついた透が話し始めた。
「意味わかんない。なんでこんなすぐわかるような嘘を付いて、それを当然のように言って、周りは信じるわけ?前から思ってたけど気持ち悪いよこの空気。誰も何も思わないわけ。嘘に乗って、わからなくても笑って誤魔化して、部が悪くなったら陰でありもしない噂を流して、すぐ信じて、それを広めて当たり前のように嫌って。どうかしてるよ!」
今までの鬱憤を晴らすかのように言い切る透。周りは心当たりがあるのか、透の方を見なくなる。沈黙が続くと思ったが、前の子が話し始める。
「えっ、何ガチになってんの?もしかして本当だからガチギレムーブ出して流そうとしてる。そんな怒鳴んないで怖いよ?ねぇ、みんな」
それな、と口々に言ってく。空気の流れが変わった。今の透の発言を皆が淡々と塗りつぶしていく。
「別に嘘ついてないし。」
「逆ギレでガチギレとかきっしょ
。」
「噂とか、、ただの世間話の範疇だろ。」
「やっぱ、ヤッテてのかよ。」
「本当に加藤さんがビッチ説?!」
「前から思ってけど真鍋って過剰だよな。」
みんな口々に根の葉もないことを言い始める。もう止まらない。火のついた枯葉はなくなるまで燃え続ける。
「都合のいい関係作ってたってことw」
「やっぱ真鍋最近付き合いわりぃと思ってたらこう言うことかよ。」
「真部君って嘘つきみたいな喋り方するよね。」
「わかる。私も前から思ってたんだー。」
「なんか距離感じるって言うか、あいまい〜みたいな?」
「加藤さんっていつも1人だよね。もしかして、狙ってたり?」
「前から怪しいと思ってたんよ加藤ちゃん。」
「俺も!ビッチ匂漂うというか、間違いじゃなかった笑笑」
「いいなぁー、俺もやりてー」
終わらない罵倒と行き交う推測。透は下を向いている。葉は3年間分残ってる。今までの透との関係が全て種となる。
「そういや、加藤と真鍋って入学式の後2人で話してたよな。」
何処からか出てくる新しい種。
「マジ?!まさかその時から…」
「ちょっときもーい。でもそうかもね。」
「うわー熟年カップルって奴。」
「じゃあ真鍋がバスケ部やめたのって…」
「お熱いですね〜」
それに飛び交う火。
「そんなんじゃない!」
透が声を上げた。でも空気は止まらない。そのまま続ける。
「ねねかはそんなんじゃない!お前らが勝手に決めつけるな。ありもしないこと言うなよ!証拠は!?根拠は?何にもないのに好き勝手言うなよ。」
「ハイ、図星過ぎて逆ギレ入りました〜!」
調子に乗った声で誰かが透を煽る。そして、それに乗るクラス。
もうそろそろじゃないかな。
「もういい!」
透が私の方に来て、強引に手を掴んでそとに連れてく。透の手は少し温かかった。後ろのドアを強引に開ける透と、叫び始めるクラスメイト。教室の外の春風は何故か少し暖かい。
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