現実との狭間、みたいな
視線が相変わらず集まってる気がする。でも、誰も話しかけてくれない。透もまだ一回も見てない、宿題を写しに来るのを諦めたのか?今日は空がな綺麗だなあ。真っ青な空に真っ白な雲が少し浮かんでる。風が吹くと木々たちが喜ぶ声が聞こえて来る。鳥の音も聞こえるようになってきた。今日はいつもより少しだけ視野が広い。先生が髪の毛を切った事。それに誰も気づかないで先生が悲しそうな事。廊下の掲示板が変わってる事。隣の席の子がシャーペンを変えた事。校庭に50メートル走用の白線が引かれてる事。楽しい時にいつもより時間流れが早く感じるのは本当だ。もう4時間目が終わってる。昼休み、透のところに行こうと思ってたが透は今日もまだ質問攻めにされてるらしい。そんなに私のことが気になるのか。別に何かを変えたってわけじゃないんだけどな。
「ねねかちゃん。」
「…どっ、どうしたの?」
は、話かけられた。声大丈夫かな?少し上がっないかな、ちゃんと聞こえただろうか。確かこの子は昨日クラスに来た透に話しかけに行ってた人だ。名前は…知らない。ごめんなさいっ。
「今日、放課後空いてたらさ教室で待っててくれるかな?少し話してみたいなぁなんて思ってさ〜」
「は、はい。わかりました。」
相手はありがとっとニコッと合図して帰ってった。綺麗な人だな。声も透き通ってて綺麗だったし、爪も綺麗に揃ってた。何よりもいい匂いがした。放課後か…仲良くなれるかな。どんことを話すんだろ?いや、それはもう決まってるんだ。紅茶の話とお店の話。これを話せばいいんだよね。もしも全然違う話とか持ってこられたらどうしよう。どうやって話を変えたらいいんだ。透!透に聞かないと。でも、まだなんか話してる。うーん…透と話してる時いつもどうしているっけ?透がシャーペンの話をし出したら…ごめんそれ興味ないって言ってる、、それを言って紅茶の話に変えて、そこらか近くのカフェの話に持って行く。完璧だ。オールパーフェクト!ノープログレムであります、!そしてそのままそのカフェに行っちゃったりして…想像が膨らむなぁ。もしかしてもしかして、あの子も紅茶の歴史に興味あったりして。そしたらそうだなぁ紅茶の歴史についても話してあげないと。楽しみだな。午後の授業は午前の授業よりもさらに早く過ぎてく感じがした。その時にはもう空模様なんて興味がなくて、これからあの子とカフェに行くことばかり考えた。午後の体育でやった50メートル走は去年より少し速いタイムが返ってきた。透にあとで自慢しよ。ショートホームルームが終わってみんな一斉に帰宅したり部活に向かったりする。いつもはここで1番に帰るんだけど今日は予定があるから少しだけゆっくり準備を進める。教室に私だけになった時、昼休みの子が入ってきた。あれ?2人増えてる。友達になる子が2人増えたってことだ。嬉しいな。
「ごめん。待たせちゃった。」
「いえ、そんなに待ってないので大丈夫ですよ。」
本当だ。ちょうど準備が終わって、話したあとそのままどこかに行く準備ができている。
「真鍋くんのことどう思ってる?と言うか付き合ってるの、2人。」
ん…?紅茶の話は、仲良くなってカフェ行くんじゃないの。声がさっきとは打って変わって低くなってる。恐ろしい。
「えっと、、あっ、」
「この子がさあ、真鍋くんのこと好きらしくて告白しようとしてるんだけど、なんか真鍋くん気乗りしてないし、逃げてばっかいるしなんかあんのかなぁって思ったらあんたと2人でいるところを見たって奴がいてさ。2人ってどう言う関係?」
さっきとは変わって、もう1人の人が説明してくれる。多分後ろにいる子のことなんだろう。まさかこれって、恋バナって奴?!でもなんか相手さん怒ってない?なっなんかしたっけ。透と私を外で見た?そういえば、透が傘忘れたって言ったから駅まで送ってったっけ。ほんとにめんどくさかったなあ。あの後雨強くなって、傘さしてもびしょびしょになったし。とりあせず、なんか空気悪いし話を変えよう。
「ごめん、その話興味ない。紅茶の話しない?」
「は?」
「紅茶って面白いよね。元々18世紀に中国からヨーロッパ諸国が茶を輸入してたんだけど、当時の航海経路がアフリカを通る遠回りしてたから、その間に輸入した茶が日の光を浴びて発酵して紅茶になったらしい。」
いや本当に面白い。これが世で言う趣深いと言う奴なのかもしれない。
「あんた何言ってんの?」
?あーなるほど。なんでアフリカ経由なのかが分からないのか。私も最初はそう思ったんだよね。ヨーロッパからならエジプトを通ればいいじゃんって。
「当時はね、オスマン帝国っていう大国が西アジアを占拠してて、そこを通るには莫大な税金を払わないといけなくて、それを回避するためにアフリカを通るようになったらしいよ。これが大航海時代の始まりらしい。」
趣深い。大航海時代は、必然性があったのだ。
「ごめん、ほんとに何言ってるか分かんない。というか何興味ないって喧嘩売ってるの?」
「いえ、そんなつもりはないです。今日は仲良くなって友達になるつもりなんで。でも、やっぱり興味ないことは興味ないんで、お互い知ってる話の方がいいかなって思って。」
怒ってる?そんなに透と私の関係が気になるのかな。別になんか深い関係って訳じゃないんだけどな。付き合ってるとかそんなことないし、どちらかというと友達以上家族未満みたいな曖昧な関係なんだよね。
「あんた美優の恋愛に興味ないっていうの?」
「えっあっはい。知らない人ですし、結局決めるのは透でそんなこと私に言われてもなんもできることないんで。というか、そもそも何で3人で来たんです?美優さん1人でいいでしょ。」
薄々わかってた。私と友達になる気はないらしい。一応話してみたけどどうでもいいらしい。なんだかムカついてきた。人の恋愛なんて知らないよ。最後に告白するのはその美優って人なんだから1人で考えさせてあげなよ。相談されたと言ってもここまで関わる必要なくない?やるとしても陰でアドバイスぐらいでいいじゃん。透も透だよ。絶対わかってたじゃん。面倒事押し付けてきてさぁ。人を振る道具に使うなって話だよ。
「いい加減にして!こんなに話の融通の聞かない人だとは思ってなかった。いつも教室で静かにしてるボッチのくせになに!?物事を決めつけないで。そんなんだから誰も近ずかないんだよ。今まで付けてなかったリンスーなんてつけてさ、気付いてんのよ!色気つかないで気色悪い。それに、ちょっと頭がいいからって調子に乗らないで。」
ヒステリー起こさないでほしい。そんなこと1番私が知ってる、、いや、リンスーつけた事に怒られても知らないよ。あなたもつけてるでしょ。と言うか分かるんだそういうのって。
「あんた気づいてないの?あんたがいつも1人でいるからそれを気にして真鍋くんが構ってあげてんのに思い上がらないで。付き纏って気持ち悪いよ。そのせいで真鍋くん、昼休み遊べてないんだよ。他の男子はサッカーしてんのにあんたのせいで真鍋くんは教室にいるんだよ。ちょっと優しくされたからって依存しないで気持ち悪い。」
依存…正面切って言われるとやっぱりキツイな…気づいてない訳では無かったけどやっぱり依存なのかな。あー、苦し。分かってる。分かってるから言わないで欲しかった。今どうにかしようとしてるのに、分かってるって。自分が依存してることも、透の自由がなくなってることも、透が優しいことも。私がその優しさに漬け込んじゃってるのも。五月蝿い。分かってるから。
「分かってるから、ごめん。」
「ごめんじゃないの、やめてって言ってるの。人に依存するとか高校生としてどうかと思うよ。中学のころからずっと付き纏ってんじゃん。いい加減やめたら?真鍋くんも嫌がってると思うよ。周りも見てて気持ち悪いし、不快感。この際だから言わせてもらうけどさ、見合ってないんだよあんたみたいな隠キャボッチ。」
「も、もういいよ、行こっ!」
多分美優って人が2人を連れて教室から出て行く。最悪の気分だ。自分の無力感が辛い。
「2度と真鍋くんに近づくなよ!」
「……」
……
……
苦しい、辛い、痛い。なんで私だったんだろ。なんで透は私と仲良くしたんだろ、特段容姿がいいという訳でもない、優しい訳でもない。なんでなんだろ。考えてみるとそうだよなぁ。透は容姿も良くて、運動神経も良い。頭も私の方がいいけど客観的に見たらいい方だ。性格も怒ってるとこ見たことないし、誰にでも笑ってる。いつから自分が特別だって思ってたんだろ。哀れだな。醜いな。差が染みる。体が熱い。首元が熱い。目が熱い。なんで?なんで私なの?なんで私と仲良くしたの、私じゃなきゃいけなかったの?なんで、なんで?もういいかな。誰もいないよね。
「あー、やな感じ。ダメだなぁ私は…もしも私が普通の社交性のある人間だったら、もっと上手く出来たんじゃないかな。嘘か、つくべきだったな。ニコニコして、笑いながらえっ、そんなことないよって言うだけでよかったじゃん。そしたら相手も安心して帰ってくれるし、私もここまで言われなくてよかった。全部自分のせいじゃん。期待し過ぎたなぁ。私の今の生活をもしかしたら変えてくれるかもって、いい方に持ってってくれるって。バカバカしい。嘘、ついとけばよかった。こっちが誠実でいたら相手も返してくれるとか思い上がるんじゃ無かった。透の言う通りにしとけばよかった。もういいか。めんどくさくなっちゃった。もういらない。友達も、透も、何も要らない。1人でいっかな。別に1人でも生きて行けるし、必要最低限のコミュニケーションだけでいいか。そうしたら、私も傷つかなくていいし、誰も迷惑かからない。透とも縁を切ろう。そしたらみんなバンバンざい。うん。いいね。」
「ねねかさん、大丈夫だった!?」
えっ、誰?
読了お疲れ様でした。三連休で少しモチベが高かったので、すぐ出せて何よりです。もうすぐ夏休みで、その間には書き切ろうかなって思ってます。気長にお待ちください。