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【完結済】生まれ変わったのに始まりません!  作者: 紫藤しと
第三章

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90.奈津子の話㉘

 旅行の日の朝、ヒイロはローズと一緒に寮まで迎えに来てくれた。正確に言うとローズを迎えに来たついでのようだったが。僻みだろうか。


 ヒイロの家につくとパプルが待っていてさあ出発だと思ったのに、なぜかヒイロがお茶を飲もうとしたのでみんなで急かして馬車を出発させた。なんと前後に一台ずつ馬車がついてくるという大所帯だった。


「ねえ、他の二台は何が乗ってるの?」


 ローズの質問にヒイロが答えた。


「荷物と警備と交代の御者だよ。質素でごめんね。」


 私とローズは無言で視線を交わしこれが貴族の旅かと頷きあった。


 天気も良く馬車の中は会話が弾んだ。私はモブらしく聞き役に努めた所、どうやらヒイロとパプルはローズに夢中らしいということがわかった。卒業パーティの時はここまでではなかったので、一体この四か月で何があったのか・・・ローズに後で聞いてみようかとも思ったが、きっとローズはわからないと言うだろう。ヒロインとはそういうものだ。


 途中で何度も馬車を止めて休憩し、昼食前後もたっぷりと休憩をとり、今日の宿屋に着いた時はまだ夕方だった。休憩しなければ一日でつくのではと思いつつ宿屋に入る。やたら豪華な部屋に大きなふわふわのベッドが置いてあり、これが貴族の旅行かとため息をついた。


 夕食までの間私は隣の部屋のローズを訪ねた。部屋の大きさと設備にひとしきり一緒に感心した後、私はローズに尋ねた。


「で、どっちが好きなの?」


「もーまたそういう事ゆー」


 ローズが可愛らしく膨れながらベッドに腰かけた。私も隣に座る。


「私最近生徒会の方行ってなかったからさ、すごいびっくりした。いつの間にあんな感じになってたの?」


「あんな感じ?」


「お互いローズのことは渡さない! みたいなバチバチの感じ。」


「えーそんなことないよ。」


 ローズは困ったように笑った。「まあ昔より好意は感じるけど。」


「うん、好意があからさますぎてビックリした。ライバルがいるから余計燃え上がる!みたいな。」


「あー、確かにお互い張り合ってるね。時々私無視してただ張り合いたいだけじゃないのって感じもある。」


「で、どっちが好きなの?」


「うーん・・・なんか今は一周回って二人とも友達だなって思う。すごく人間ぽいって言うか、いいとこも悪いとこも見えてきて人として好きだなって。」


「友達ねぇ・・・」


 それ二人に言ったら火に油だねぇと思ったが言わずにおく。


「なんか今は色んな人と仲良くするのが楽しいって言うか、私今年から芸術系のクラスも取ってるじゃない? そっちの方でも知り合いが増えたりして、なんか今楽しいんだよね。」


「刺繡のクラスとか取ってるんだっけ?」


「楽しいよ刺繍。刺繍糸高いから卒業したらあんまり出来なさそうだけど・・・貴族の女の子も話したらわりと普通なんだなって思ったり。」


「へー」


 楽しく話していると夕食の時間になり、食堂に行くと男子二人はキチンとした服に着替えていた。私とローズは軽装のままだったので顔を見合わせて苦笑した。紳士二人は特に指摘することなく楽しいまま夕食は終わった。ただ宿の給仕の人の目は痛かったが。


 部屋についていたシャワーで全身を洗うと私は再びローズの部屋に行った。洗った髪が早く乾くように窓を開けながら私たちは色々な話をした。ローズは実はお父さん似だとか(目元が似てるらしい。)夕食で椎茸っぽいキノコが出されたが、全然味がしなかったのであれは一体なんだとか。


「しかしまだ明るいのに宿に入ったから無駄だなーって思ってたけど、夕食前に着替えたり化粧を直したりする為だったんだね。全く気がつかなかった。」


 ローズの話に私も頷いた。


「うん、向こうも当たり前すぎて言わなかったんだろうね。平民にそんな習慣ないっての。」


 二人でヘラヘラ笑う。以前は貴族と平民の違いに焦っていたが、今はそこまで気にならない。たぶん自信がついたんだろう。


「とはいえ明日からは貴族の屋敷にやっかいになる訳だから気を使わないとね。ヒイロのご両親と兄弟がいるんだっけ?」


 私の質問にローズが頷いた。


「うん、二つ下の弟だって。ちょっと変わってるけど気にするなって言われた。ずっと領地で剣とか農機具とか作ってるみたい。」


「貴族なのに? ・・・それは変わってるね。」


「うん、私はすごい筋肉ムキムキの男の子を想像してる。」


「まだ十四歳ぐらいでしょ? やだー!」


 二人でゲラゲラ笑った。窓辺で話しているので外に聞こえてるかもしれないなと思ったが気にしないことにした。夜風が気持ちいい。


「こんな風に夜知らない場所で話してるなんて不思議だね。」


 ローズが目を細めて笑う。「これだけでも私、王立学園に入ってよかった。」


「うん、私も。」


 その後ローズがいつも寝る前にしているというストレッチを一緒にしたり、またくだらない話をしたりしている内にいつの間にか一緒のベッドで眠ってしまった。大きなベッドで寝返りをうちながら、ローズの部屋の小さなベッドを少しだけ懐かしく思った。百合じゃないよ。

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