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【完結済】生まれ変わったのに始まりません!  作者: 紫藤しと
第三章

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80.奈津子の話⑱

 放課後、二回目の私の授業は滞りなく終わり、今期の試験範囲と試験に出そうな箇所を重点的に説明できたので私はとても満足だった。


「ブルウありがとう。この本返すね。」


「もういいの?」


「うん大丈夫。ところでこの本どこから持ってきたの? 図書館の所蔵印っぽいの押されてたけど消されてるみたいだし・・・」 


「元々はあの先生が書いて図書館に寄贈したのを生徒が見つけたらしいよ。でもその後先生に取り上げられて所蔵品から削除されてる。気にしなくていいよ。」


「え、無茶苦茶気になる・・・まさか直接先生から借りたんじゃないよね?」


「違う、別の先生。若くて黒髪の・・・あれ何の先生なんだろうね?」


 相変わらずぽやぽやしている男だ。大丈夫かこいつ。


 話し合いの末なぜかそのまま私が本を持つことになった。一年生困ってるでしょう?と言って渡されたそうなので、次の困るであろう一年生に渡してしまってもいいのかもしれない。よくわからないけれど。


 前回とは違って水筒を持参したので喉はそこまで乾いていなかった。それでもなんとなく生徒会メンバーでカフェテリアへ向かった。よく考えれば私以外の四人は試験を受ける必要がないのに意外と付き合いがいいな。


「私今回の試験結構いい成績取れそうな気がするー。」


 ローズがにこにこしながらお茶を飲んでいる。


「前回はどうだったの?」


 パプルが茶化すように言った。


「前回は赤点ギリギリ! でも今回はナツコのお陰でいけるよ!」


「え、ローズ勉強してたの?」


 意外だった。授業や試験を受けているのはあくまでポーズであって、真面目にやっているとは思っていなかった。


「どういう意味よ? 当たり前でしょう。ちゃんとやってるってば。」


 ローズは可愛らしく膨れた。


「だってローズは魔法関係さえやってれば卒業できるんでしょ? 授業出てるの家の仕事したくないからだと思ってた。」


「ひどーい! ちゃんと真面目にやってるってば! そりゃ確かに学問系の成績はほぼ赤点スレスレだけどさ・・・生活態度も見られるっていうから出席してたのも否定しないけどさ・・・だけど私は途中で決めたの。この三年間は思いっきり”学生”をしようって。だってこんな三年間は二度とないでしょう?」


 ローズのキラキラした目にヒイロが頷いた。


「わかるよ。僕も大人たちから王立学園はいい所だって言われて育ってきたからね。三年しかないんだから思い切り楽しめって。だから生徒会に入ったんだ。楽しもうと思ってさ。」


 貴族の楽しむと平民の三年間は違うような気がしたが、私は微笑んで黙ることにした。指摘するだけ野暮だろう。


「卒業したら大人って感じするもんね。・・・私なるべくみんなで卒業したいんだあ。もう既に5人いなくなっちゃったけど、残りの35人みんなで卒業したい。」


「俺たちは入ってないの?」


 パプルが苦笑した。


「だって貴族は何もしなくても卒業できるじゃない。」


「でも仲間外れは寂しいよ。」


 ローズとパプルがなんだかいちゃいちゃと言い合いを始めたので、私は遠くを見ながらお茶を飲んだ。カフェテリアにはぽつぽつと勉強している人がいる。鬼気迫る雰囲気なのであまりここで騒ぐのは良くないかもしれない。


「そろそろ出ようか。ここは勉強している人もいるみたいだから。」


 ブルウが静かに切り出した。


「ここはカフェテリアなんだからお茶をするぐらい構わないだろう?」


 ヒイロが真顔で尋ねる。まあそうなんだけどさ・・・


「卒業試験が間近なんだから多少は配慮するべきじゃないかな。」


 ブルウがそう言って立ち上がるとなんとなく全員が続いた。ローズが小さな声でブルウにありがとうと言うと、ブルウは無言のまま微笑んだ。なぜか胸がキュッとした。


 寮に戻ると食事室から泣き叫ぶ声が聞こえた。こっそり覗くと三年生の先輩が泣いているのを寮母さんが慰めていた。見つからないように自分の部屋に入ってため息をつく。


 あの先輩は私が知る限りずっと勉強している人だ。まあ部屋に入ったことがないので実際に勉強しているところは見たことがないが、前期試験時は目の下のクマがすごかった。休みの日も出かけているところを見たことがないし夏休み冬休みもずっと部屋に閉じこもっていた。そんな人でも卒業試験前はあんな風になるとは恐ろしい。なぜか私の顔を見るたびに睨みつけてくる人だが、無事卒業してほしいものだ。


 あの人が春に卒業し、もう一人の遊びまくっている人が卒業?したらこの寮は私一人になるんだろうか。それとも誰か新しい学生が入ってくるんだろうか。


「普通の子がいいなあ・・・」


 そんなことを考えながらベッドに横になっていたらいつの間にか眠ってしまった。

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