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【完結済】生まれ変わったのに始まりません!  作者: 紫藤しと
第三章

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75.奈津子の話⑬

放課後、とりあえずブルウが一人で歩いているのを見つけたのでカフェテリアへ拉致してみた。ブルウは不思議そうな顔をしながらも大人しくついてきた。


「ブルウって婚約者いるんだよね、卒業したら結婚するの?」


 前置きが面倒なので二人で椅子に座るなり、単刀直入に聞いてみた。


「うん? 彼女は一個下だから彼女が卒業したらするよ?」


 一切悪びれずにブルウは言った。当たり前のように。


「じゃあ何でローズに思わせぶりな態度取るわけ?」


「なんでって・・・ここはそういう場所でしょ? ローズだってそういうの望んでるんじゃないの?」


 青い目はあくまで無表情だ。


「君はそういうの嫌いそうだからしないけど、望むなら君も口説くよ?」


 ぶん殴ってやろうかと思った。


「・・・いらない。じゃあ本気じゃないんだよね。もうそういうの止めてもらえない?」


「なぜ?」


「好きでもない子を惚れさせてどうしたいの?」


「・・・恋がしたい。」


 ブルウが少しはにかんだ。


「燃えるような恋がしたいんだ。」


 私は反射的に手元にあったコーヒーをブルウにぶちまけた。


「ふざけんなっ! 貴族の遊びにこっちを巻き込むんじゃねぇ!」


 怒りで手が震える。ブルウは何も言わずにコーヒーにまみれた制服を見ていた。遠巻きにこちらを見ている視線に気がつき、私はその場を逃げ出してしまった。


 少し走って人気のない廊下に座り込む。やってしまった。でもマジでムカついたからしょうがない。でも制服にコーヒーかけるのはやり過ぎだ、クリーニングが大変だろう。でもあいつは貴族だから大丈夫なんじゃないかな。


 座ってぐるぐる考えていると上から声をかけられた。


「ナツコ、何してるの?」


 ヒイロだった。近くには誰もいない。もうこれはなにかのイベントだと思って、ついでにヒイロにも聞いてみることにした。


「ヒイロって婚約者いるの?」


「どうしたのいきなり・・・一応いないけど。」


「一応ってなに?」


「うーん、親同士が盛り上がってる相手ならいるけど、別にちゃんとした婚約じゃないよ。」


 いるんじゃないか。私はスカートを払って立ち上がった。


「ヒイロは燃えるような恋についてどう思う?」


「え? いいなって思うけど、どうしたの? 具合悪い?」


 心配そうなヒイロが顔を覗き込んできたので、思い切り睨み返してやった。ヒイロが怯む。


「昨日の演奏会で泣いてる平民の親がいたの知ってる?」


「いや、知らないけど・・・」


「平民だってちゃんと生きててそれぞれ青春してんのよ。良かったねって泣いてくれる親もいんのよ。馬鹿にしないでよね。自分たちだけが主人公だと思わないで!」


 私はそう叫ぶとまたその場を逃げ出した。頭の隅ではさすがにあれではヒイロは訳が分からないだろうとわかってる。なにやってるんだ私は。ヒロイン気取りか。


 適当に走っていると遠くにパプルを見つけた。もう無理。さすがに三連続は無理だと慌てて廊下を曲がる。歩いているといつの間にか来たことがない場所に来ていた。この学園は広い。遭難はしないだろうけど、迷子になるには十分な広さだった。


 キョロキョロしながら歩いていると、校舎の中からピアノの音が聞こえてきた。ということはここは芸術校舎の近くだ。頭の中で地図を思い描く、よかった戻れる。


 安心したらピアノは昨日ローズたちが演奏した曲だと気が付いた。古い恋の歌だ。去ってしまった恋人を今でも想ってるという女の歌・・・ローズになんて歌歌わせるんだ。確かにいい曲だけど。


 プリプリしながら道を戻っていると、曲がり角でばったりパプルに会ってしまった。避けられないのか・・・


「ナツコこんな所でどうしたの?」


 パプルが不思議そうにたずねてきたので適当に誤魔化すことにする。


「別に・・・パプルは何してるの?」


「昨日の楽譜を音楽室に置いておこうかと思って。いい曲だからね、他の人も演奏してくれると嬉しいし。」


 パプルは楽譜を見つめて微笑んだ。基本的にはみんな良い奴なのだ。楽譜だって高いだろうにポンと寄贈できるほど。いやそれは親の財力の話か。


「ねえ、パプルはローズのこと好き?」


 パプルは目に見えて狼狽した。


「どうしたの急に。もちろん好きだよナツコだって。生徒会の大事な仲間だしね。」


「いや私のことはどうでもいいから。」

 続けて釘をさそうとしてやめた。お節介がすぎるだろう、さすがに。それに多分言ったって意味がない。まだ二人が付き合ってる訳でもないし。


「・・・どうしたのナツコ。何か変だよ?」


 心配そうなパプルが私の顔を覗き込んだ。こんな風に顔を覗き込まれるのは本日二回目だ。もういいや、お腹いっぱいだ。


「ゴメン変なこと言って。忘れて!」


 私は手をぶんぶん振り回してその場から去った。パプルからの返答はなかった。


 少し歩くと中庭にベンチがあったので座り込む。なにやってるんだろう私は・・・。やり過ぎだ、明らかにやり過ぎだ。途中からは八つ当たりだったし、酷すぎる。しばらく頭を抱えて自己嫌悪に陥った。今日はもうマズイことしかしていない。


 燃えるような恋がしたいんだ


 ブルウの言葉を思い出すとまた腹が立ってきた。そんなものの為にこっちの純情を弄びやがって。怒りで顔が熱くなる。あいつは絶対許さん。


 誰とも顔を合わせたくなくて私はそのまま帰宅した。歩きながらなぜか何度もブルウの言葉と、口にした時のはにかんだ顔がリフレインした。


 燃えるような恋がしたいんだ

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