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【完結済】生まれ変わったのに始まりません!  作者: 紫藤しと
第三章

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72.奈津子の話⑩

「十一月の終わりに有志で演奏会をしようと思うんだ。」


 放課後の生徒会室でヒイロが私を見ながら言った。好きにすればいいと思う。周りがにこやかに頷いているので私もそれに習うことにした。


「もう学校側に許可は取ってあって、日にちも場所も押さえてある。ナツコには有志募集のポスターを作ってほしんだけど、お願いできるかな。」


 ポスターは書記の仕事かなとは思ったが流れで頷く。私にも多少は生徒会っぽい仕事をしておきたいという気持ちはある。演奏会が生徒会と関係あるかどうかは知らないけど。


 いつの間にか生徒会室にはお茶のセットが持ち込まれており、パプルがお茶を淹れてくれた。美味しい上にお茶請けまでついてきて気分は喫茶店だ。金持ちはこういうとこブレなくていいと思う。


 ポスターといってもA4サイズのを何枚か作るというので、夏休み中に練習した飾り文字を頭にいれて、残りは箇条書きにした。


「参加希望者は生徒会役員か音楽教師まで・・・って私もはいるのか。」


「当たり前だろう。」


 独り言だったのに横にいたブルウが呆れた顔で返事した。今のとこあまり自覚ないし。


「ブルウも出るの?」


「生徒会はオープニングアクトとして出るって聞いてるけど、ナツコは楽器は?」


「何も。私は裏方に回るからいいよ。」


 そもそも出ることを聞いてない時点で戦力扱いされてないし。聞けばローズが歌ってヒイロがピアノを弾きパプルがギター、ブルウがバイオリンを弾くらしい。もうガチガチに決まってるじゃないか。別にいいけど。


 ポスターを二枚作り終わった時点で面倒になり、他の人たちにも手伝ってもらうことにした。


「はいこれ見本。箇条書きの部分だけそのまま写して。残りの部分は私が書くから。・・・ローズは書かなくていいよ。」


 ローズの字の下手さを知っている面々は特に何も言うことなくポスターを書き始めた。ローズだけふくれっ面でそっぽを向いている。別に本気で拗ねてるわけじゃないだろうけど。


「ローズはお茶淹れて。」


「まだ飲むの?」


「ううん、紅茶の汁でちょっと色を付けようかと思って・・・あ、でもこの紅茶高い?」


「うーん、絵の具の代わりにするには高いかな。」


 ヒイロが苦笑いしている。これは相当高そうだ。


「じゃあ私、どっかで絵の具借りてくるよ。」


 ローズはそう言うと一人で生徒会室を出て行った。誰かついていくかと思ったが三人は黙々とポスターを書いていた。


「・・・生徒会の備品で絵の具を置くってのはどう?」


 私が提案するとブルウが頷いた。


「そうだね、家にあったと思うから持ってくるよ。」


 そこは買わないのか。意外と堅実だなあと思いながらあとは無言で書き続け、いつの間にか十枚以上のポスターが出来上がっていた。けれどもローズが帰ってこない。


「ローズ遅くない?」


 パプルが怪訝な顔で言う。確かに遅い。


「美術室だよね? こんなに時間がかかるほど遠くないと思うけど・・・」


 ヒイロも首を捻っている。私はふと気が付いた。


「・・・あの子、美術室も場所知らないかも。芸術系の授業取ってないし。」


 そういえば私だって美術室の場所を知らない。芸術系の教室がある校舎の場所は知ってるが、用事がないので入ったことがない。たぶんローズもそうだと思う。


「探しに行ってくるよ。」


 パプルが立ち上がった。同じようにヒイロも立ち上がる。


「じゃあついでにこのポスターも貼ってきてほしい。ちょっと地味だけどもう完成でいいでしょ。私は違う校舎に貼ってくる。」


「誰か一人残った方がいい?」


 ブルウは座ったまま言った。やる気ないな。


「部屋にみんなの鞄がるからわかるでしょ。ブルウもどこかに貼ってきて。」


 適当に数枚押し付けて私たちはそれぞれの場所に散った。途中で同じクラスの子に話しかけれれて平民が見に行ってもいいかと聞かれたので適当にいいと思うと返事をしておいた。観客がいない方が問題あるだろう。


 思った以上に掲示板が見当たらず、無駄にうろうろと歩き回ったので生徒会室の戻るのが遅くなってしまった。そろそろ寮に戻らなくてはいけない時間だ。


 生徒会室を開けると私以外の全員が戻っていた。


「おかえりナツコ、時間大丈夫?」


 ローズが暢気な顔できいてきた。


「もうそろそろ帰るよ。っていうかローズは何してたの?」


「たまたま会った音楽の先生と話してたらいつの間にかすごく時間経ってて。ビックリしちゃった。」


「こっちもビックリしたよ。誰もいない教室で一人で座ってるんだから。」


 パプルが苦笑しながら言った。


「なにそれホラー? おばけでもいたの?」


 想像するとちょっと怖い光景だ。


「なんでよ。ちゃんと直前まで先生いたんだって。話した後ちょっと一人でぼーっとしてただけ。」


 笑いながら言うローズに釈然としないものを感じつつ、時間がないので私は先に帰ることにした。乙女ゲームなら妖精とかいるかもしれないしね。


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