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【完結済】生まれ変わったのに始まりません!  作者: 紫藤しと
第三章

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65.奈津子の話③

 タタン様の屋敷は学園から徒歩10分程度の所にあった。一人でてくてく歩いていると、横から馬車が次々と追い抜いていく。その殆どが学園に入っていくのを見て、なるほど格差というのはこういう所から始まっているのかと感心した。


 学園の門をくぐると広いロータリーがあり、その奥には桜並木があった。


 晴れ渡った空、舞い散る桜吹雪、その奥のお城のような校舎、制服を着た新入生たち・・・


 私は確信した。


 これ漫画じゃん!!


 絶対日本の漫画! だって制服が日本だから! なんならこの感じはアニメ化までされてる!


 道の隅で立ち止まってキョロキョロしていると、時々やたら派手な人がいることも気づいた。


 私の故郷ではみな髪や目は黒かこげ茶色だった。私も黒髪黒目だ。美形なんていなかった。けれどもさっき通り過ぎた真っ赤な髪の人はびっくりするようなイケメンだった。なんなら後光もさしてた。


 次に来たのはふわふわした金髪の男の人だった。この人もオーラが違う。あ、むらさきの髪の人までいる! ピンクの人も! 色素どうなってんの!?


 ワクワクしながら人通りを眺めていると、いつの間にか誰も来なくなっていた。そこで入学式の時間が近いことに気がつき慌てて、会場に向かった。


 入学式の間、私の頭の中は新しく見つけた可能性で一杯だった。これは異世界転生ってやつだ。さっき見た派手な髪の人たちはきっとキャラクターだ。そして残念なことに、地味な髪の色の人たちはきっとモブだろう、私も含めて。


 周りの人が拍手をしだしたので私も慌てて拍手をする。壇上にはさっき見た赤髪の人が上っていた。新入生代表の挨拶らしい。いい声で話し出したのでますます強く確信する。間違いない、彼にはCVキャラクターボイスまでついてる。アニメだ。


 式の後はクラスごとに別れて簡単な説明があった。平民と貴族はクラスがそもそも違うらしく、同じクラスは地味なモブタイプしかいなかった。さっき見かけた派手髪の人はピンクの子以外全員男だった。ということは逆ハーレムものの可能性が高い。こんな美形キャラばっかりでホラーとかはないだろう。いや、スポーツものの可能性もあるか。それも捨てがたい・・・


 楽しい妄想で聞き流しそうになるが、前では教師が少しでも成績が落ちれば、もしくは素行不良が判明すれば直ちに退学だと念を押していた。この学園は貴族の寄付で成り立っている。平民はそのおこぼれなので、そぐわない者はすぐ辞めてもらうということらしい。何回聞かされるんだこの話。


 簡単なガイダンスの後、早々に解散となった。明日の夜は新入生歓迎会がある。なにやらすでに意気投合したのか盛り上がっているクラスメイトを尻目にさっさと帰宅した。帰り際隣のクラスからピンクの子が出てくるのが見えた。どうやら彼女も平民らしい。なるほど、身分差の恋ってやつね、あるあるだよね。


 翌日制服でパーティーに向かおうとすると、寮母さんが目に見えて狼狽えた。


「え・・・それで行くの?」


「他に服がないので。学生なんだから制服で十分でしょ。」


「え、いや、あのっ、私の服貸そうか?」


「サイズが違いすぎるでしょう?」


 寮母さんは女性らしい丸みを帯びた体形だが、私は棒のようにガリガリだ。身長も私の方が高いし、服のサイズが同じとは思えない。


 なおも何か言いつのろうとする寮母さんに適当に返事をしてさっさと学園に向かった。入学式の朝より、私を追い越す馬車の数が多い。後で聞いたが新入生歓迎会と卒業パーティしか出席しない貴族も一定数いるそうだ。学校とは?と問い詰めたくなる。


 会場に入るとまだ人が集まり始めた所だった。なのに物凄く視線を感じる。なんだろうと思っていると、遠くからピンクの子がすごい勢いで走って私の腕を掴んだ。


「あんた、何してんのよっ!」


 声は小さいけれどかなり怒った顔で私を睨む。まつ毛が長い、目もピンクな上キラキラしていて吸い込まれそうになる。思わず見惚れているとますます怒ったように彼女は言った。


「ちょっと聞いてる!?」


「・・・あ、うん。何だっけ?」


 彼女は素早く辺りを見回し、私を人が少ない会場の隅まで連れて行った。


「何だじゃないでしょ、その服よ! 制服でくるなんてどういうつもり!?」


「自分だって制服じゃん・・・」


「私はいいのよ、目立ちたかったんだから! 二人もいたら目立たないじゃない!」


 辺りを見回すと確かに制服姿の人間は我々以外にいなかった。男女関係なくみな着飾った装いをしている。


「・・・これから増えるかもよ?」


「増えるわけないでしょ。パーティーに制服でくる馬鹿がどこにいんのよっ!」


 どこと言われても、ここに二人いるが。


「だって制服で参加してもいいって先生言ってたし。」


「あんなの建前に決まってんでしょ! あれはドレスを用意できないなら出席するなって意味よ。あんたパーティ出たことないの!?」


「ない」


 田舎出身なめんな。


「あんたあからさまに田舎者だもんね・・・想定外だったわー」


 ピンクの子は大きなため息をついた。胡乱な横顔も奇麗だ。これは絶対逆ハーだと確信した。


「ねえ、名前教えてよ。」


「ローズだけど」


 彼女はめんどくさそうに言った。目はキョロキョロと会場で何かを探している。


「私はナツコ。ちなみに入学試験で一位でした。」


「・・・あっそう。私、女には興味ないんだけど。」


「私もないけど友達になろうよ。どうせあんた成績悪いんでしょ? 教えてあげる。」


「失礼ね! 私は魔力入学だから勉強とか関係ないの。」


 魔力入学とは魔力が強いものは無条件に入学できるという優遇措置だ。魔力が強い人間は貴重なので素行不良でも卒業できるし、そのまま望めば役所への就職もできるだろう。実に羨ましい。


「玉の輿狙いなんでしょ? 私も協力してあげるから。」


 ローズは私を胡散臭そうに見た。


「じゃあ今すぐ帰って。」


「ひどーい、今来たばっかりなのに。」


「あんたがいるだけで台無しなのよ。今すぐ帰って。友達でしょ?」


「簡単に友達になってくれるなんて嬉しい☆ でも友達だからローズをこんな所に一人になんてできないよ。」


「うっさい、消えろ!」


 本気で嫌そうなローズを散々からかった後、私は早々にパーティ会場をあとにした。どうやら出席を取るわけでもなさそうだし問題ないだろう。


 会場の外に出るとまだ辺りはほんのり明るかった。会場から音楽が聞こえてきた。やっぱり貴族のパーティだから踊るんだろうか。


「私には向いてないな。」


 首を振って沢山の馬車が待機しているロータリーを通り過ぎた。


 私はヒロインの友達になろう。それでこのアニメの行く末を見守ろう。貴族にとってこれからの三年間は人生の余興らしいが、私だって楽しんでもいい筈だ。  

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