31.満月
綺麗な月が浮かんでいる。
私は中庭のベンチに座って目を細めた。月のくせに明るすぎやしないだろうか。明かりがなくても人の顔が見えるぐらいだ。
「で、なに?」
横から呆れたようなクマの声がした。
「いい月ね」
「それ言うために呼び出したの?」
「どうせ暇でしょう?」
「一日中座りっぱなしで疲れたから、軽く稽古つけてもらう予定だったんだけど・・・」
丸一日かけて移動したのにまだ動くのか。体力馬鹿怖い。
「夜に話せるなんて、もう今日しかないでしょう?」
「昼間じゃダメなの?」
「うん」
こんな恥ずかしい事、明るいうちに話せない。
「前世の合宿の時、私あなたに告白されたのかしら?」
「・・・してないけど。」
してないのか。でもその時クマは私のことが好きだったんだろと思う、根拠はないけど。
「正直前世は私あなたに興味なかった。・・・でも今は、わりと好きみたい。」
怖くて隣が見られない。
「・・・俺もだよ。」
クマの声に体が震えた。散々ためらった後に隣を見ると、クマはとても真剣な顔で私を見ていた。
「ずっと好きだよ。あんたを追いかけて生まれ変わってるっていうのは覚えてないけど、また会ったら、また好きになるよ。」
なぜ私は泣くのか。少女漫画のヒロインじゃあるまいし。
礼儀正しく人一人分空いていた空間を、クマはあっと言う間に埋めた。少し肌寒かった春の夜があっという間に暖かなものに包まれる。
「・・・知ってたし。」
「じゃあ言わすなよ。」
クマが苦笑した。体に振動が伝わる。
「だって結婚しないって言われたし。」
「そりゃ・・・あんな誰でもいいって感じだされたらねぇ・・・腹立つでしょ。」
「怒ってたの?」
「うん」
顔を上げてクマと目を合わす。近いな。
「今は?」
「今は・・・このまま押し倒そうかなって思ってる。」
私は吹き出した。
「無茶苦茶護衛に見られてるよ?」
「知ってる。もう慣れた。」
クマは笑って私にキスをした。私はしばらくあたたかな腕を堪能することにした。




