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【完結済】生まれ変わったのに始まりません!  作者: 紫藤しと
第一章

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29.休憩

 思いがけずしっかり寝ていたらしい。メイドに起こされると、村に着いたので昼食を取ると言われた。


 王都とドーナー領を移動する際は大体皆この村で食事と休憩をする。顔なじみの店だ。


 昼食の席にクマはいなかったが、気にしないことにした。食事を平らげ強張った足腰をほぐす為に少し散歩をする。馬の休憩も兼ねているのでしばらくは動けない。


 私は伸びをして、村の端っこから辺りを見回した。王都とドーナー領に挟まれたこの地は、地面が固く農作に向いていないため牧畜が盛んだ。土地は広いが人は少ない。今は過疎化が進んでいるようで来るたびに心配になる。ただ人が少ないが故に警備が楽らしく、今もそばにメイドと、離れたところに警備が一人いるだけだ。


「用心棒のくせに・・・」


 私は小声で呟いたが、メイドは返事をしなかった。そうだ、独り言に返事をしてはいけない。返事をするならわかりやすくするべきだ。


 しばらく散歩をした後、馬車に戻った。御者が出発できるというので出発することにする。先に馬車に乗り込んでいると、遅れてクマが乗ってきた。


 私の非難がましい視線に気付くと、クマは無言で肩をすくめた。


「仕方ないだろ。」


「これってお父様の差し金?」


「だろうね・・・あと警備隊も面白がってる。」


 動き出した馬車の外に目をやったが、相変わらず並走しているはずの警備が見えない。確かに面白がっていそうだ。


「何が面白いの?」


「俺をからかうのがじゃない?」


 そっちなのか。


「ドーナー家の警備隊とはなんだかんだでよく会うし、可愛がられてると、思う。」


 なぜ学生とうちの警備隊がよく会うことがあるのか。


「俺、貴族のパーティ会場の警備とかよくしてたから。基本は同級生の貴族から頼まれてのバイトだったけど、ドーナー家の警備に認められてるってことになって声かけてもらったり・・・今日一緒に来てる二人は今もドーナー家の警備隊に入れって言ってくるな。冗談だとは思うけど。」


 クマは意外とうちの家と関りが深かったんだな。


「ちなみにシャルルに頼まれてパーカー家のパーティーに出たこともある。いつも通り外で警備するつもりだったけど、なんか会場に入れられて、あんたとシャルルが踊るのを見たりしたよ。」


「・・・昨日お母様から聞いて知りました。」


「だろうね」


 クマはしたり顔で頷いた。どういう意味だ。


「シャルルはなんか知らないけど、俺も踊らそうとしてさ。柄じゃないってすぐ逃げたんだけど・・・そういえばその後ぐらいから前世を思い出し始めたような・・・パーティがなんかのきっかけなのかな?」


 さあ? 私に聞かれてもわからない。


「まあつまり、今回の依頼を受けたのは、あんたの親父さんと警備隊のみんなへの今までの礼を兼てるんだ。流石にもうバイトする訳にもいかないし。」


「今後は警備される側になるだろうしね。」


「宰相候補とか周りが言ってるだけだよ。本気にするなよ。」


「そう?・・・お父様が本気を出せばできそうだけど。」


「いや、別に俺はなりたくないし・・・てか何? なって欲しいの?」


「・・・面白そうだし?」


 なんだそれとクマは鼻で笑った。 


「俺は金稼いで教会というか、孤児院をもうちょっと豊かにしたいんだ。今は貴族の支援もあって、平民でも希望すれば最低限の勉強が教われるようになってるけど、もっと広げたいというか。」


「王立学園じゃダメなの?」


「あそこは平民には狭き門過ぎるよ。それにそんな専門的なことじゃなくて、読み書きとか算数とかでいいんだ。もちろん王都は恵まれてる方だったわかってるけど。」


 若いのに偉いなぁと私は思った。


「政治で実現できそう?」


「それが出来たら最高だけど、難しいだろうね。だから、俺は別に金を稼げる仕事ならなんでもいいんだよ。」


「・・・つまりうちの警備隊に入ってもいいってことじゃない?」


「・・・いやいやアダール様が許可しなかったら無理でしょ。」


 今なら簡単に許可する気がするなあ。あの人の早く孫が見たいって言うのは本気だと思う。クマには言わないけど。


 それにしてもクマのことで知らないことが多すぎるな。数週間前までろくに知らなかった人だからしょうがないけど。


「・・・あれ、ひょっとしてまだ二週間経ってない?」 


「何が?」


「卒業パーティから」


 クマが考えるそぶりをしてから頷いた。「経ってないね」


「結構怒涛だな・・・」


 本当なら今頃、シャルルと正式に婚約を結んでいる時期だ。なのになぜか違う男と馬車に乗っていたりする。人生は不思議だ。


 しばらく二人とも黙って馬車に揺られていた。日差しはいい塩梅に温かく、眠くなってくる。


「着いたらもう夜だね。」


「うん?」


 特に眠くなかったらしいクマが顔を上げた。


「クマ君は明後日帰るんだよね?」


「うん。別に明日でもいいんだけど。」


「馬がなかったんじゃない?」


「ドーナー家がそんなことあるかよ・・・」


 そうなのかな? 確かに馬は、王都でも領地でもいっぱい飼ってるけど。


「一緒に流れ星見たって言ってたじゃない?」


「・・・うん」


「私本当に覚えてないんだぁ。見てみたいな。流れ星。」


「・・・ひょっとして、吉田酔ってる?」


「うん? 昼食にワインを少し飲んだけど、別に酔うほどじゃないよ?」


 でもなんだかふわふわする。温かいせいだと思ってたけど、酔ってるのかもしれない。大きなあくびがでたので顔を隠す。


「無茶苦茶眠そうじゃん・・・」


 確かに眠い。うん、眠いな。あくびが止まらない。別に昨日眠れなかったせいじゃないよ。


「俺、馬車メイドさんと代わるから、寝たらいいよ。車止めてもらうね。」


 クマはそう言うと御者と話し始めた。いい奴だなぁ。


「ねえクマ君・・・」


「ん?」


「クマ君の下の名前なんだっけ・・・」


 ちょうど馬車が止まってクマの返事は聞こえなかった。私はそのまま眠ってしまった。

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