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【完結済】生まれ変わったのに始まりません!  作者: 紫藤しと
第一章

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25/135

25.日曜日は終わらない 

 部屋の中にはムスッとしたクマと、ご機嫌な顔をした奈津子がいる。


 丸いテーブルの上にはいくつかの料理が並んでおり、それを三人で三角になって囲んでいた。こんな星座があったなとぼんやり思った。


 奈津子がニコニコしながら言った。


「ほら、美味しいから来てよかったでしょ?」


「確かに旨いけどさ・・・」


 歯切れは悪いがクマの口にはもりもりごはんが詰め込まれていく。見事な食べっぷりだった。


「あまり沢山食べるのはどうかと思うけど・・・下品には見えないのが不思議ね。」


「・・・食わなきゃやってられっかよ。いきなり連れてこられて。」


 キチンと飲み込んでから喋るのもいい。


「で、話ってなに?」


 そこは聞てないのか・・・


「えっと、食後に話そうかと思ったんだけど・・・私が領地に帰る際の用心棒をしてもらえないかしら?」


 クマは少し考えた後、あっさりと頷いた。


「いいよ。でもいつ?」


「そこあっさりなんだ!」


 奈津子が驚く。「もっとごねるかと思ってた。」


 私も同意見だ。


「貴族の用心棒は何回かやってるし・・・いい金儲けになるんだよ。知らずに頼んだの?」


 私と奈津子は顔を見合わせ曖昧に笑った。


「ただもうすぐ仕事始まるし、その前の試験もあるから日程次第になるんだけど。それでいつ行くの?」


「えっと、火曜か水曜日かなって。クマくん次第だけど。」


「え? 俺ありきなの?」


 訝し気なクマとばっちり目が合ったので慌てて反らした。


「まー別にいいけど・・・」


 奈津子が割り込んだ。


「熊田さぁ、今俺モテる~とか考えてたでしょ。」


「考えてないよ」


「いやいや顔赤いし。どっちかって言うとあんたの方がみっちゃんのこと好きだよね。」


「なっちゃん!」


 耐え切れずに私が叫んだ。立ち上がって奈津子を廊下に引きずり出す。


「なんでそんなこというのっていうかなっちゃんはなにがしたいの邪魔したいの応援したいのどっち!?」


「まあまあ、息継ぎしなよ。私だってあんたらが目の前でいちゃいちゃしてるのは耐え難いのよ。」


「いちゃいちゃ? 耐え難いってなに?」


「・・・みっちゃんて彼氏いたことないんだっけ?」


「ないですけど!?」


 そんなの奈津子もでしょと思ったが言葉を飲み込む。


「そっか、私たち萌える話はしてたけど、恋バナってしたことないのか・・・」


 奈津子は一人で頷いている。萌える話もどちらかというと奈津子が一人で盛り上がってただけで、私はだいたい聞き役だったんだけどな。都合の悪いこと忘れてない?


「わかった! お姉さんに任せなさい!」


 奈津子は私の肩を叩くと部屋へ戻っていった。渋々私もついて戻るとクマは帰り支度をしていた。


「もう帰るの?」


 奈津子の問いにクマは軽く頷いた。


「うん、もう食ったし。・・・美味しかったよ、ご馳走さん。」


 急に話を振られて慌てて頷く。


「仕事は詳細決まったら契約書ちょうだい。出発の準備はしとくから。俺は一泊か二泊のつもりでいいんだよな?」


 そこはおそらく馬の都合になるだろう。私は頷いて言った。


「出発は明後日を予定しています。契約書は明日になるかとは思いますが、先にご準備の程お願いいたします。」


 クマは笑いを堪えるような仕草で頷いて、部屋を出て行った。なんか今笑えるとこあった?


「明後日なんだ~?」


 奈津子が気が抜けるで言う。


「だってクマ君の試験31日でしょ? 体力的なこと考えたらもう明後日ぐらいしかないよ。私の支度もあるから明日は無理だし。」


「ちゃんとかんがえたのね。まあ私もさすがに明日は職場に説明して旅行準備してるだけで終わっちゃうかな。しかし急展開よね。」 


「ほんとうにね・・・」


 私が頷いていると奈津子が横目で誰のせいだみたいな顔で私を見た。


「えっとまず・・・なっちゃんを両親に紹介して雇用許可を貰う。雇用条件についても決めないとね。たぶん身辺調査は済んでると思うから問題ないと思う。それから領地に帰る許可と、用心棒の雇用の許可か・・・忙しいな。」


「私の身辺調査終わってるんだ・・・」


「そりゃ怪文書送ってきた時点で調べるでしょ?」


 そういや送ったねと奈津子が呟いているうちに、メイドが部屋に入ってきてテーブルの上を音もなく片づけた。まだ食べてたけど・・・全員立ち上がってるのだから、食べたと見なされて当然だ。クマは食後のお茶飲まずに帰っちゃんたんだな。悪い事した。


「お母様はお戻りになってらっしゃる?」


「いえ。ですがもうじきお戻りになられるとのことです。」


 メイドは一礼して出て行った。


「じゃあ、お母様が戻られたら突撃して雇用許可を貰いましょう。」


「許可でるかな?」


「たぶん大丈夫でしょ」

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