22.続・傘を回すのにうってつけの日
二話更新、二話目です
「きみ、独り言大きいよねぇ。」
書斎にいた父はため息交じりに言った。
確かにこの部屋は庭に面しているが、そこまで大きい声だった筈はない。
「あら、屋敷の中まで聞こえましたかしら?」
「聞こえたよ。領主の仕事がどうとか聞こえたけど。」
・・・本当に聞こえたんだろうか。魔王サマ得体が知れないから可能性はある。なんなら心を読んでいる可能性もある。心の中でバッテンを作りながら私は言った。
「ええ、王都にいても特にやることもないですし、領地に言って叔父様をお手伝いしようかと思いまして。」
「やることがないとは思わないけど。結婚相手探さないの?」
父は頬杖をついてつまらなさそうに私を見上げた。私は心に100のダメージをおった。
「・・・そんなほいほい相手は落ちてませんよ。」
「クマンドは? 振られたんだっけ?」
心に300のダメージ! ミツコは重体だ。
「振られ・・・」
てないと言いかけて止めた。振られてた。自分で自分に50ダメージ。死にそう。
「まあ相手は誰でもいいんだけどさ。僕、孫可愛がりたいんだよね。だから早く作って。」
そんな子供が親におやつでもねだるみたいに・・・
「善処します。」
勝てる気がしないので撤退することにした。相手は魔王だ、人間は勝てない。これは戦略的撤退だ。
「まあ、あっちで結婚相手が見つかるかもしれないから別にいいけど・・・あいつも変な奴だね。あんなにしつこく追いかけてきたくせに、手に入りそうになったら逃げだすのか。死ねばいいのに。」
薄々思ってはいたが、私が前世を思い出してからお父様のキャラが変わった。あのダンディでイケメンだった父はどこへ。こっちが素なんだろうけど。
「とにかくそういうことで、準備が整い次第出発しますね。」
「さすがに娘に一人旅させる訳にはいかないよ。」
父が相変わらずつまらなさそうに言う。「行きたいなら誰か一緒に行く人を連れて行きなさい。」
父は仕事があるし母も忙しそうだ。婚約者はすでにいない。誰かとは?
「自分で考えなさい」
そう言うと父は退室を促した。渋々礼を言って廊下に出る。
確かにこの世界で若い娘の、特に貴族の一人旅なんてありえない。ここはかなり治安はいい方だが、夜盗や強盗や追剥も普通にいる。というか話の都合上そういう設定にした。自分で作った設定に邪魔されるとは困ったものだ。
うなりながら廊下を歩いて自室に戻った。途中で奈津子を連れて行こうかと思いついたが、若い娘が二人になったって許可はでないだろう。困った。結局両親が出発する6月ごろまで待つしかないのだろうか。それまですることもないのに。
「あれ、振り出しに戻っちゃった・・・」




