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【完結済】生まれ変わったのに始まりません!  作者: 紫藤しと
第一章

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17.続・口説きましょう

「あの日、流星群がきてたんだよ。俺が夜中に一人で星見てたら、吉田も来て一緒に星みたの。覚えてない?」


「私、夜中に何してたの?」


「トイレとか言ってた気がする。」


 風情ないなあ。合宿・・・夜中・・・星・・・浮かんできたのは卒業パーティのドレスだった。青い布に小さな石がたくさんついて、キラキラしていて、まるで星のようだった。


「思い出した・・・かな?」


「どっちだよ」


「私その時に、アダールの記憶を消したのよ。私というか本体の力だけど・・・たぶん同時に私の記憶も消したんじゃないかな。今回はクマ君と一緒に生きようとしたのに、あの人に見つかっちゃったから。」


「そうなの?! ・・・なんで自分の記憶まで消したの?」


「なんでだろう? 男には追いかけられるのが当然だと思ってたからかな。」


 あ、クマが引いてる。でもしょうがないじゃないか、本体はモテモテな恋愛体質なんだから。


「意気地なし」


「は? 俺が?」


「生まれ変わっても追いかけてきたくせに、邪魔者もこっちで消してあげたのに、何もしないなんてクマ君が悪い。」


 クマはなにやら文句を言っているが、どう考えたってクマが悪いと思う。


「・・・可愛かったらしいわよ」


「何が?」


「あなたが。ちなみに私の本体は今も魔王サマを愛していて、また生まれたら魔王サマと愛し合う気満々よ。」


「へー」


「そんなつけ込む隙がない二人につけこもうと何世代も追ってきたあなたが可愛かったんですって。」


「・・・嬉しくない」


 クマは苦い顔で紅茶を飲んでる。もっと砂糖を入れればいいのに、もう冷めてて溶けないだろうけど。


「・・・魔王っていうか、先生って妻子いたよな? 授業中でもよくその話してた気がするんだけど、吉田に出会う前に結婚してたってこと? 吉田を探しながら?」


「あー、そういうのは彼らには大きな問題じゃないみたい。」


 クマの顔にはてなが浮かんでいる。これに関しては私も納得できないので説明が難しい。なのですっ飛ばすことにした。


「ちなみにその時の奥さんが、今の私の母親。」


「はい?」


「あなたと同じ、生まれ変わってもついてくる系の人みたい。」


「・・・魔王サマは色んな人を引き連れて何度も転生してるってこと?」


 肯定するとクマが小声で呟いた。


「まさしく魔王だな・・・」


 静かになった部屋に子供たちの歓声が聞こえる。クマもぼんやりと窓の外を見ていた。


「今のその、魔王サマは吉田のことどう思ってんの? 俺消されない?」


 熟考したあとに出てくるのがそれか?と思いつつ私は返事をした。


「今の魔王サマはちゃんと私が本体じゃないって気が付いてるよ。娘に手を出す趣味はないんですって。」


「そりゃ良かったな・・・公序良俗的な意味で。」


 確かに。そんな泥沼は嫌だ。


「前世では私が死んだあと世界を滅ぼしたらしいからねぇ。本気出したら何するかわかんないよ、あの人。」


「え、それ初耳なんだけど。世界を?滅ぼしたの?」


「って本人は言ってた。私が死んだ後だから知らないけど。」


「俺も死んでたのかな。・・・あ、中川がなんで死んだかわかんないって言ってたのそういうこと!?」


 クマが一瞬立ち上がって、またドスンとソファーに座った。ほこりが舞うからやめてほしい。


「こえー・・・まじで魔王じゃん」


 私は肩をすくめた。


「生まれ変わるごとに魔力が強くなってるらしいから、マジで魔王だよ。って本体が言ってた。」


「じゃあ吉田は・・・本体じゃないから弱いのか。」


「たぶんね」


 理屈はわからないけどそういう事なんだろう。


「以上が、あなたが私とくっついた方がいい理由です。」


「・・・わかったようなわからんような。別にくっつく必要はないんじゃないの?」


「あなたは来世でも私を追ってこないの?」


「・・・知らんがな、そんなん。」


 クマが眉を寄せている。確かに来世のことなんてわかんないけど。


「せっかく私があなたに向き合い始めたんだから、あなたももうちょっと前向きに考えてくれてもいいと思う。」


「前世に左右されるなんて俺は嫌だな。今の俺にはクマンドとしての人生あるし。もう熊田じゃないんだよ。」


「あなただって私のこと吉田って呼ぶじゃない!」


「それは・・・便宜上だよ。」


「便宜上ってなによ? 私だってミツコ・ドーナーって名前があるのよ? ドーナー様って呼べばいいでしょ!?」


「それはお前が断ったんじゃないか。」


「お前って言うな!」


 コンコン!


 大きめのノックの音に二人とも我に返った。ドアの所にベルデが呆れた顔で立っていた。


「外まで聞こえてるよ・・・どうしたの?」


 イライラする。私はにっこりした笑顔を張り付け、ベルデに向き合った。


「反物はお気に召して頂けたかしら?」


「ええ、とても。ありがとうございます。ドーナー様。」


 どこから聞かれてたんだろう。でもそんなことどうでもいいや。


「それは良かったわ。私はそろそろお暇します。急に訪ねてきてごめんなさいね。」


 そのままクマの顔を見ず部屋を出た。後ろからベルデが追ってくる。


「あの、喧嘩ですか? クマがなにかしましたでしょうか?」


「気にしないで、ただの痴話喧嘩よ。」


 痴話喧嘩・・・とベルデが小さな声で呟く。納得できないんだろう。でもそんなこと、知らん。


「私の御者がどこにいるかご存じ?」


「あ、もう馬車のほうに戻られてます。」


「ありがとう。見送りはここで結構よ。」


 振り返って有無を言わせぬ笑顔でベルデを見る。ベルデは黙って頭を下げた。賢明な子だ。私がすごく怒ってることに気づいているのかいないのか。


 そのまま私は馬車に乗って帰った。


 馬鹿みたい。また振られちゃった。

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