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【完結済】生まれ変わったのに始まりません!  作者: 紫藤しと
第一章

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15.口説きましょう

 手紙をクマへ渡すように頼み、私は昼食へ向かった。ちなみにこの世界に郵便制度はなく、人に直接持って行ってもらう。


 父は出掛けており、家にいた母との昼食だった。


「食べたら教会に行って参りますね。」


「どこの?」


「サンタナ教会です。」


「クマンドに会いに行くのね・・・」


 母はため息をついた。「なにか手土産は?」


「手土産?」


 首を傾げると母はまたため息をついた。


「未婚の貴族の娘が自分から平民の男に会いに押しかけて行く醜聞の悪さを自覚しなさいな・・・いいわ、なにか用意させましょう。」


 母はそういうと近くのメイドになにか囁いた。手のかかる娘ですまない・・・ずっと婚約者がいたから気分的にはもう既婚者だったんだよね。そうか、未婚の娘か。しかも最近婚約を破棄された娘だ。あせって男を追っかけまわしてるようにみえるんだろうな。まあ半分あってるけど。


 準備に時間がかかるということで待機を命じられた。


 部屋に戻ると机に上に置きっぱなしだったボツ手紙を読み返してみた。我ながら一つもグッとこない。部屋の暖炉で燃やすとあっという間に灰になった。


 さて、口説きに行く貴族の娘とはどんな恰好をするのだろう。しかも傍から見て浮かれていない恰好とは・・・


 悩んだ結果、白いブラウスに紺のスカート、黒いカーディガンという恰好になった。この間まで着ていた制服とあまり変わらないな。スカートはもっと短かったけど。なぜか学園ではスカートは短いのが普通だった。そういう決まりなのかと思って私も膝丈にしていたけれど、あれはたぶん前世基準だったんだな。


 そんな事を考えていたら用意ができたと呼ばれた。馬車には何やら荷物が括りつけられている。


「反物です」


 母が後ろからやってきて言った。


「少ないですが仕立ての練習にお使いくださいって言うのよ。ちゃんと言えるかしら?」


 それぐらいさすがに言えますよ。


「今うちが贔屓にしている仕立て職人があの教会出身だって知ってる?」


 知らないというと母はため息をついた。ため息つかせてばっかりだな。


「あなたも何度かドレスの打ち合わせしたでしょうに・・・とにかく、うちで出資して近々彼中心の新しい仕立て屋を立ち上げる予定よ。教会出身者の雇用にも繋がるし、うちもセンスのいいドレスが着られるわ。あなたは今日準備が進んでいるか見てきなさい。」


 母が贔屓の仕立て職人を支援しているのは知っていたが、それが教会出身だとは知らなかった。ただの道楽だと思っていた。


 母に礼を言うと教会に向けて出発した。母もついてきたそうだったが先約があるらしい。あまりおかしな行動を取らないようにと注意されながら馬車に乗り込む。もう18歳ですよ・・・


 馬車は15分ほどで教会に着いた。近いんだなと思いながら馬車から降りると、若い男女が待っていた。


「ようこそお出で下さいました。ミツコ・ドーナー様。」


 笑顔がまぶしい。一人は髪が緑のイケメンだ。目も緑で、誠実そうで・・・これ攻略キャラじゃないか?


「ご無沙汰しております。急に押しかけて御免なさいね。」


 私はにっこりと貴族的に微笑んだ。ヤバい、この人の名前思い出せない。


「いえいえとんでもございません! お嬢様に来ていただけるなんて光栄です。中へどうぞ、お茶をおだしますね!」


 緑の子はさっさと建物の中に入ってしまい、取り残された私ともう一人の女の子が顔を見合わせた。女の子は髪も目も茶色で、軽く日焼けしていてなんだか全体的に地味だった。この子はモブだなと思いつつ話しかけてみる。


「今日は少ないですが反物をお持ちしましたの、どうか役立てて下さいね。」


「そうなんですね、すみません!ベルデったらそそっかしくて、すぐ呼んできますね!」


 女の子は走って中に入っていった。いや、呼ばなくていいよ。


 私は御者に反物を運ぶように告げると後を追って建物の中に入った。あの二人は出迎えの為にいたんじゃないのかしら?


 二人が入っていった建物は学校だった。ひんやりした石の廊下の脇にはいくつもの部屋があって、幾つかは授業中だった。懐かしい学校の雰囲気に頬がゆるむ。


「すみません! 案内もせずに!」


 女の子が奥から走ってきた。私が声を落とすようにジェスチャーで伝えると、ハッとして口を押える。可愛いな、地味だけど。


「あの、裁縫室に案内しようかと思ったんですが、クマンドがそれは失礼だから教会に呼ぶようにって・・・あのクマンドとお知り合いなんですか?」


「同級生だもの」


 あ、そっか。と声に出してないのに表情だけでわかる顔をして彼女は頷いた。


 結局学校の中を通り抜け、隣の教会に入った。なんだこの遠回りは・・・


「よこそお出で下さいました」


 改まったクマンドの顔と声に口が緩む。


「今日は急にきてごめんなさいね。お詫びと言ってはなんだけれど、手土産を持ってきたの、だれか手が空いていたらうちの御者を手伝ってもらえると嬉しいわ。」


 女の子が頷いてすぐ走り出した。若いな。


 クマに促され近くの部屋に入った。大きな窓からは子供たちが歓声を上げて走り回ってるのが見える。


「若いなぁ」


「俺らもそれなりに若いけどな」


 クマがそういいながらワゴンを押して部屋に入ってきた。紅茶のようだ。


「なんか最近色んな事を知ったというか、思い出し過ぎて一気に年とった気分なのよ。・・・今の18歳と前世の25歳足したら43歳か・・・あんまり若くないわね。」


「前世はどの程度思い出したの?」


 クマが食器をテーブルに並べながら聞く。


「うーん、正確に言うと前世というか私になる前の話かな。私が魔王サマといちゃいちゃしてた頃の話を。」


「・・・長そうな話だな」


 クマが食器を並べ終えて向かいのソファーに座った。開け放たれたままのドアを見るがあの二人がやってくる気配はなかった。

「あいつら、どこまで行ったんだ?」


「そこまで大量に持ってきたつもりはないんだけれど。」


 なにより本人たちに運んでくれと言ったつもりはなかった。こういうの、良くないかもね。


「で、今日はなんの話できたの? ベルデの話なら俺要らなくない?」


 冷たい。なんか口説きにいたとか言いづらい。


 もじもじしてるとクマがため息をついた。


「俺忙しいんだけど・・・貴族のお嬢さんのわがままに振り回される時間ないんだけど。」


 更に冷たい。ひどい。


「私この世界の創造主だったんだって。」


「え? 今からその話すんの? もうすぐあの二人戻ってくるけど。」


「いや、この話をするためにきたんだけど、お母様が手土産もなく行くなって言うから。」


「俺と話すためにわざわざ反物用意したの?・・・そりゃどうも。」


 驚いたというクマの表情になんだか居たたまれなくなる。


「えっとつまり、ベルデに用はないのか。じゃあ来なくていいって行ってくるよ。」


「あ、でもあの子攻略対象みたい。」


 立ち上がろうとしていたクマがまた座った。


「そうなの? まあ確かにハンサムだよな。でもあいつ王立学園の卒業生じゃないよ? 聴講生として一年だけ通ってたけど。」


「そうなんだ」


「ドーナー家のお力添えですけどね。」


 知らなかったの?という顔をされて少々苛立つ。お母様が支援している個人とか団体とかいっぱいあるし!


「・・・たぶん生徒会の方の話の隠しキャラじゃないかな。孤児院出身で天才的仕立て職人だけど気弱で誠実みたなキャラだった気がする。」


「キャラっていうなよ、俺の幼馴染を。」


「あ、ゴメン」


 幼馴染なのか。同じ孤児院だもんな。 


「ともかくベルデに用はないんだろ?ちょっと行ってくるよ。落ち着かないから。」


 そういうとクマは部屋を出て行った。相変わらず窓の外は子供たちがはしゃいでいる。


 話したいことは山ほどある筈なのに、本人を目の前にすると意外とでてこないものなんだな。やだ、私乙女みたい。


 卓上の砂時計が落ち切っていたので紅茶をカップについだ。二人分でいいだろう。あ、カップが温められていない。こういうのもクマは覚えた方がいいんじゃないだろうか。でも一代貴族は自分でお茶を淹れないんだろうか。そんなことを考えながらお茶を飲んでいると、クマが戻ってきた。


「あいつら、あんたの所の御者とお茶飲んでたわ。なんでそうなるのかねぇ。」


 首を振りながらクマがソファーに座った。


「あ、お茶ありがと。お客様にお手数をおかけしてすみませんね。」


「いえ、このぐらいお気になさらず。」


 私は優雅に微笑んで飲みたくない紅茶を口に含んだ。あまり美味しくない。これは茶葉の問題だろう。


「つまりね、私とあなたがくっつけば、色々上手くいくらしいの。」


「何がつまりなんだよ。そんな理屈で吉田は俺とくっつけるの?」


 クマが呆れた顔で言った。


「そうするのが一番合理的かなと思って。」


 合理的、とクマは呟いて頭を掻いた。なんか甘いもんほしいなと呟いて立ち上がろうとしたので慌てて引き留める。


「甘いものならそこに砂糖があるから舐めてて! これ以上話をややこしくしたくないの!」


「ややこしくしてるのはお前だろう?」


 クマが心底呆れたという顔で足を組みなおした。


「もうちょっと俺にもわかるように一から説明してよ。」


「えっとね・・・昔昔ある所に、とてもいちゃついたカップルがおりました。」


 クマの呆れた顔が変わらない。


「カップルの男は魔王、女の方は私。」


 クマが座りなおした。


「それで?」


「カップルはとても仲が良く、何度生まれ変わってもめぐり合いいちゃつくというのを何度も繰り返しておりました。ですが、ある時女の方が別の人を好きになります。それがクマ君です。」


「え、俺?」


 クマの目が丸くなった。


「そう。でもクマ君はだいぶ前からその女の人が好きで、何回も追いかけて転生したらしいです。だから最初に好きになったのはそっちです。」


 クマの顔が見られない。


「だから、あの、その・・・」


「ちょっと待った! 俺もずっと転生を繰り返してるってこと? あんたを追っかけて?」


「ソウミタイデスヨ」


 なんだかこの部屋暑いな。冷たい紅茶が飲みたいな。


「それはちょっと衝撃だな・・・その割には前世なにもなかったよな?」


「あー・・・魔王サマによるとどうやら私が記憶を消したらしいです。」


「その魔王サマってのはあんたの父親であってる?」


「そうですね、今世は私の父親です。」


 なんでそんな喋り方なんだという顔でクマがこちらを見ている。昔話だからデスヨ。


「・・・俺も思い出したけど言ってなかったことがある。高校入ってすぐの親睦合宿覚えてる?」


「合宿? あー、山の中で延々と校歌うたわされたやつ?」


「そう、それ。あの時夜中に俺に会ったこと覚えてない?」


 私は首を傾げた。あの合宿で奈津子と仲良くなったことは覚えてる、あと寝る場所が変なテントみたいな小屋よりもひどい所で雑魚寝だったことも。


「あの日、流星群がきてたんだよ。」

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