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【完結済】生まれ変わったのに始まりません!  作者: 紫藤しと
第一章

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12/135

12.始まりですか?

 同窓会は和やかに終了した。奈津子とは次の休みも会うことを約束した。クマは月末に貴族名鑑を返しに来ると言った。


 二人が帰るとどっと疲れて、自室のソファーに倒れこんでしまった。なんせ情報量が多かった。加えて感情の振り幅も大きかった。天井を見上げてぼんやりしていると、ドアのノック音の後に父が入ってきた。慌てて体を起こそうとしたが眩暈がしてまた倒れこんでしまった。


「ああ無理しなくていいよ。」


 父はそう言って向かいのソファーに座った。 


「興奮して疲れちゃったのかな、君もまだまだ若いね。」


 父はいつもと同じ顔で微笑んでいる。なのに少し違和感を覚えた。


「申し訳ございませんお父様。今日の夕飯はご一緒できそうにありません。」


「聞いてるよ。そっちの要件じゃないんだ。クマンドとはどうなった?」


 それ、今聞かないといけない? 明日でいいんじゃない?


「特にどうも・・・友人にはなれたかと。」


「そう。ちなみに今話してるの日本語だって気付いてる?」


 心臓が嫌な音で跳ねた。無言で父を見上げるとやはり微笑んでいる。私は無理やり体を起こしてソファーに座り直した。


「無理しなくていいのに。」


「無理させてるのはお父様でしょう。いえ、先生とお呼びすれば?」


「君に先生って呼ばれるのは嫌だな。お父様のほうがいい。」


 嫌ってなんだ。と思ってから違和感の正体に気が付いた。この人は私を今、娘として見ていない。


「あなた・・・誰?」


「父であり、先生であり、息子だった時もあるよ。その前はずっと恋人だったよ、永遠のね。」


 永遠の恋人。


 何かのキャッチフレーズのような言葉に首を捻る。


「そうでしたっけ?」


「そうだよ。君の気まぐれでここしばらくはすれ違ってるけど。」


「・・・避けられてるのでは?」


「ひどいことするよね」


 父からの熱っぽい視線に目を反らした。この目を知っている気がする。


「避けられてるのに、追いかけてるんですか?」


「僕たちはずっとそうだっただろう?」


 知らんがな。


「覚えてないです。」


「まあ、今世では別にいいよ。娘に生まれちゃったし。僕、娘に手を出す趣味ないし。」


 それは良かった。


「今世というと、来世でも追いかけてくるんですか?」


「もちろん」


「ストーカーって言いません?」


「問題ないよ、君も僕を愛してるし。」


「いや、完全にストーカーの言い草ですね!」


 父に似た人がおやおやという顔で手を広げた。


「君も強情を張らずにいい加減逃げるのやめてよ。僕だって辛いんだから。」


 いや、それ犯罪者のセリフ!・・・話が通じる気がしないな。


「・・・娘に生まれてるので、完全に避けてる訳ではないのでは。」


「この前は他人だった。しかも途中で僕の記憶を消したね? そのせいで君が死ぬまで君のことに気づけなかった。」


 なんだか聞いちゃいけないことを聞いている気がする。


「出会っていたのに、君に気が付かなくて、気が付いた時には君が死んでいたなんて、僕がどんな気持ちだったかわかる? 目の前が真っ暗になったよ。だからあの世界を終わらせて君を追ってきたんだ。」


「終わらせた?」


「うん、君と僕がいない世界なんて意味ないだろう?」


 魔王みたいなことを言う。ひょっとしてこの人魔王なのかな? クマをけしかけて倒してもらった方がいいのでは。


「滅ぼしたって意味ですか? あの世界にはまだ奥さんも子供もいたのでは?」


「子供は君と同じ時期に死んじゃった。だからもうどうでもいいかなって。」


 開いた口が塞がらない。子供さんの事は気の毒だけど、他にもわんさか人はいただろうに。


「・・・私そういうサイコパスな方はちょっと。」


「それよりさ、どうやって僕の記憶を消したの? 君にそんなことされるなんて思わなかったよ。」


 赤い目が私をじっと見つめる。少し怒ってる。この人はいつだって情熱的だ。


「覚えてないです。」


「ふうん、まあいいけど。僕が君のことを忘れるなんてことはないし、君だって僕を忘れないんだから。」


 ものすごい自信だ。だけど安易に否定できない力があった。


「・・・言いたいことはそれだけですか?」


「うん? そうだね、色々思い出したみたいだから、今回は生きてる内に話し合おうと思って。また逃げられたら堪らないし。」


「逃げるとか・・・」


「あれは逃げだよ」


 赤い目が私を射抜いた。


「僕を愛さなかったばかりか、僕の愛を受け止めることもなく死んじゃったんだから。僕はもう、二度とあんなことは許さない。」


 後ろに赤い炎が見える気がする。この人はいつだって私を全力で愛してる。


「・・・わかったわ、アダール。今日は疲れてるの、一人にして。」


 彼は微笑むと無言で立ち上がった。私の座っているソファーの後ろに周り、見上げた私の額にキスを落とした。


「愛してるよ、ミツ」


 そう言って部屋を出て行った。

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