プロローグ
私はひどくぼうっとして、自分のドレスについて小さな石を見ていた。
これだけ小粒なのにこんなにもキラキラ光るということはこれは本物のダイヤモンドではないだろうか。しかもカットがいい。それがドレス全体に何十、、いや何百とついている。いったいこのドレスは幾らなのだろう。数千万?いや億?
「聞いているのか、ミツコ!」
私は驚いて顔を上げた。目の前には金髪碧眼の、まるで王子様のような見目麗しい男が立っていた。傍らの可愛らしいピンクの髪の女性を抱き寄せながら、顔を真っ赤にして怒っている。
「君との婚約は今をもって解消だ!わかったな!」
どうやら私はこの男と婚約していたらしい。ところでこの人誰だっけ?
変わらずぼうっとしている私に更に腹を立てたらしいその男は、プリプリしながら傍らの女性と一緒にどこかへ行ってしまった。残されたのは遠巻きに私を眺めている大勢の人だけ。
「・・・帰ろっと。」
私は小さくつぶやくとその大きなパーティ会場を後にした。そう、これは大事なパーティだったはずだった。王家が主催する晴れやかなパーティ。
誰とも目を合わさずに廊下に出る。城のエントランスを目指して歩いていると、侍女が無言で後ろからついてくるのがわかった。エントランスに着くとさほど待たずに自分の家の馬車がやってきた。御者が開けるドアに乗り込むと、馬車はゆっくりと走り出した。
そう、私は貴族だから一々指示なんて出さない。みな私の目線や行動を見てやりたいことを察して動く。それは当たり前のこと。なのにーー
「私ミツコって名前だったかしら?」