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本編「あまのめさま」

 ああ、そうか。もう10月31日になるんだね。団子の材料を用意しないとね。ん? 何故団子だって? うちの故郷の風習だよ。故郷離れたし作らなくてもいいとは思うんだけどどうしても無視できない理由があってね。

 故郷にはその地特有の神様みたいなのがいてね、確か「あまのめさま」って呼ばれてたかな。団子はその神様へのお供え物なんだ。

 子供の頃から毎年行っていたから不思議に思ったこともなかったんだけどある日外から引っ越してきた家族がいたんだよ。

 その時初めて故郷の外では団子でなく甘いお菓子を用意するって知ったんだ。でも郷に入っては郷に従えってことでその家族も10月31日には団子を作ったんだ。

 でも事件はその次の年に起こったんだ。その家族は父に母に娘の3人家族なんだけど父親は故郷の外で仕事をしていて帰ってくるのは仕事のない週末だけで基本は母と娘の二人暮らしだったんだ。

 彼女とは当時同じ職場で仲が良かったから家庭環境については聞いてたんだ。そしてその10月31日、彼女の母は前日に父のところに行っていてその日は彼女は家で一人だったそうなんだ。なんでも父が風邪で寝込んじゃったとかで母は看病に行ってたらしいんだよ。

 それで、その、彼女は団子を作らなかったそうなんだ。職場で話したときめんどくさいからいいやって話しててね。

 そしてその夜彼女は職場からの帰り道に車で事故を起こして大怪我をしたんだ。命の別状はなかったそうなんだけど割れたガラスを顔面に浴びてしまったみたいで顔の傷が特に酷かったみたいで中々面会ができたくて見舞いにも行けなくて。

 それからしばらくしてやっと彼女と顔を合わせることができたんだけど驚いちゃったよ。顔の傷はほとんどきれいに治ってたんだけど右眼に眼帯をしてて。どうやら事故のとき右眼がつぶれちゃったそうなんだ。

 そのとき彼女が呟いた言葉が印象深く残っててさ。団子を作らなかったからこうなったのかな、てさ。

 それがあって何か怖くなって故郷を出てきたんだけどこれだけはどうにもやめる気になれなくて。

 トリックオアトリートで失明なんて全然笑えないでしょ?

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