8話 俺の妻でござる
俺は綾を先に馬に乗せ、その後綾が俺を引っ張り上げてくれた。俺は綾の前に座って手綱を握った。彼女は俺の腰にしっかりと手を回し、お腹の前で手を組んで固定した。
「いや〜、でもまさか綾ちゃんまでタイムスリップしてるとは……」
「ふふふ。タケ君は久しぶりね。マサ君とはほとんど初対面かな?」
「2年間に1度会っただけです。こうやって話すのは初めてです」
「はじめまして。安田健太の妻の綾です」
「あ、は、はじめまして。マサです」
綾の話によると、彼女は俺たちがタイムスリップした次の日にタイムスリップしたらしい。俺が家に帰ってこなくて、心配していた矢先のことだったと言う。
彼女が降り立った場所はここ浜松。目を覚ますと山の中にいて、通りがかりの旅人に助けてもらって、浜松の宿場町に連れてきてもらったそうだ。
「パン屋があったから驚いたの。でもここで働けばヤスくんが来てくれるかも、っていう望みをかけて、あのパン屋で働いてたってわけ」
「なるほど。とりあえず無事で何よりだ」
さらに幸運なことに、綾はパン屋で稼いだお金をたくさん持っていた。これで飢えを凌げると、俺たちは胸を撫で下ろした。
「で、ヤスたちはどこに向かってるの?」
「京都」
「京都に行ってどうするの?」
「……坂本龍馬と写真を撮りたいな、って思って」
「え?どういうこと?」
彼女がそう言いたいのもわかる。この時代に来た記念を作ろうという、男3人で考えた馬鹿な計画だ。彼女にそれを打ち明けるのは少し恥ずかしい。
「せっかくタイムスリップしたんだし、記念に坂本龍馬と写真撮って、それが済んだら未来に戻ろうかなって」
「あー、なるほど。そういうことね」
「どう?ついてきてくれる?」
「もちろん!楽しそうだね!」
綾は結局そう言ってくれたが、俺には一抹の不安が残った。彼女をこんなことに巻き込んでいいのだろうか、そんな迷いが俺にため息をつかせた。
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