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刀は要らぬ 〜激動の明治維新!〜  作者: しいらしゆう
江戸時代へようこそ
4/18

4話 いきなりピンチでござる

 タケの叫び声と共に、凄まじい数の足音がこちらに近づいてくる。


「どうしたんだタケ!」

「マサが何者かに気づかれたんだ!とにかく逃げろ!」


 俺はその場に革靴を投げ捨て、全力で走り出した。舗装されていない土の道には水溜りが残っていて、走りやすいとは言えない。

 俺は水溜りに気を取られすぎるあまり、道の上に放置されていた屋台の角に体をぶつけ、その場で転んでしまった。


「大丈夫かヤス!早くしろ、もう迫ってる!」


 俺に追いついたタケは、俺の手を引っ張って起こしてくれた。ぶつけた右肩がまだ痛む。


「マサはどうした?もう捕まったのか」

「ああ。まずいな」

「どうする?逃げるしかないのか?」

「今はそうするしかない」


 しかし、俺とタケが少し話している間に、敵はもうすでに俺たちを取り囲んでいた。チョンマゲ姿の武士のような見た目をしている。この町の役人だろうか。


「異国人を捕らえよ!」

「はっ!!」


 ざっと数えて7人ほどか。彼らは腰から刀を取り出すと、俺たちにそれを向けた。


「異国人?俺たちのことか」

「まあ、そうだろうな」

「ここは大人しく捕まるしかなさそうだ」


 タケがそう言った瞬間、俺たちは強引に体を地面に押さえつけられた。太い縄で俺たちの両手を縛ると、黒い布を頭に被せられ視界を奪われた。


「ほら、さっさと歩け!」


 扱いは酷いものだったが、耐えるしかない。俺は言われた通りにするしかなかった。すぐに斬られなかっただけ、まだマシだ。


 

 ぬかるむ道を縄で引っ張られながら30分ほど歩き、急な階段をいくつか降りていくと、その部屋でようやく手の縄を解かれた。


「ここで待っておけ」


 役人はそう言うと、ガタンと重い鉄の扉の閉まる音がした。やがてその役人の足音が遠ざかっていくと、かすかな物音がかなり近い距離から聞こえてくるのだ。


「おい、誰かいるのか?」

「いるぞ。俺だタケだ」

「俺もだ。マサもいるぞ」


 俺は安心して、頭に被せられた黒い布をゆっくりと取った。2人は俺の横に座っていたが、手の縄はまだ解かれていなかった。


「なんだここは」


 俺たちは牢屋に閉じ込められていた。4畳ほどの狭いスペースに太い鉄格子がはめられ、出入り口には分厚い南京錠がかかっている。

 牢屋の中には膝ほどの高さの行灯(あんどん)が1つ置いてある。狭い牢屋には十分すぎる照明で、2人の服についたシミもよく見えた。

 タケやマサの縄を解き、頭に被せられた黒い布も取った。彼らは自分達の置かれている状況に気がつくと、わかりやすく肩を落とした。


「一体どうなってやがる。ここはどこだ。あいつらは誰だ」

「わからない……。でも俺たちのことを異国人って言ってたぞ」


 タケは鉄格子を両手でがっしりと掴んで、隙間から牢屋の外を見渡した。だが、目立った収穫は何もなかったのか、すぐに戻ってきた。


「マサ、なんでこんなことになったんだ?」


 マサは牢屋の端っこで体を丸めている。


「……宿屋だと思ってその建物に入ってみたら、あいつらがいたんだ。そしたら、突然襲いかかってきたんだ」

「それで、捕まったと」


 マサは小さく頷いた。こうなってしまったことは残念だが、殺されなかっただけ良かったと捉えるしかない。江戸時代であることが本当ならば、あそこで命を落としていても不思議ではなかった。


「んで、どうやって脱出する?力ずくじゃ無理そうだが」

「……」


 タケは俺たちの返答をしばらく待っていたが、誰も何も言わなかった。言う気力すら残っていないのだ。

 彼がピンチの時に頼もしい存在であることは間違いないが、たまに俺たちを置いていってしまうことがある。今がまさにその状況で、俺とマサはこの状況をまだ飲み込めていないにも関わらず、タケは既に次の解決策を練っている。

 俺は深いため息をついた。長すぎる1日に疲れが溜まっているのは紛れもない事実だ。


「……わかった。今日はもうここで寝よう」


 俺とマサの心境を察したタケは、そう言うとその場で寝っ転がった。彼も相当疲れが溜まっているのだろう。

 俺たちは牢屋の中で川の字になって寝た。3人ともうっすらと酒臭く、服は泥まみれだったが、そんなことが気にならないほど、俺たちはぐっすりと寝ていた。

小説を読んでいただいてありがとうございます!!


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