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腸に重石を詰められた餓狼の心持ち

  『腸に重石を詰められた餓狼の心持ち』


 「シャワー、借りていいかな…?」

 出先から拙宅迄を駆け通したのだろう少女は人心地ついて漸く肌を湿らす不快の正体に気付いたらしい。慟哭に丸めた背中を乳飲み子をあやす様に撫ぜる内に吐息が嗅げるほど狭まった二体の隙間を恥じて後退ろうとする。体臭を気にする程度に男として見られて居た事が意外だった。交接を乞われた時点で今更とも思えるが、常の距離感からして妹程度に扱っていた為と納得しておく。


 腰掛けたまま上体を寄せ彼女の背中に手を回す。緊張か羞恥か、体を強張らせた一瞬の隙に首元に顔を寄せた。

 「俺は此の儘の方が良かったりするんだが」

 「やっ…もう、ばかっ」

 弱々しく押し退け様とする彼女の手に従って床に転げた。言葉ほどには拒絶も嫌悪も感じない力加減の抵抗。いっそ本気であって欲しかった。覚悟は決めたが、相手の不覚に相乗りして此処迄の経緯を無かった事にするのも決して吝かではないのだ。


 「キレイにさせてよ…はじめてだから」

 立ち上がりそそくさと浴室に進む後ろ姿を見送る気力もなく打ち拉がれた。胸は早鐘を打ち胃の腑は自壊を促す様に締め上がる。今なら腸に重石を詰められた餓狼の心持ちが汲み取れる気さえした。


 

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