流れ星の願い事
冬童話2022投稿作品です。
とある流星群の夜のお話、二人は
出会います。
私は流れ星。
流れ星のキラリ。
長い間、星の海を旅をしてきたの。
私たちの仲間は皆、年頃になると
ひとり旅にでる決まりがあるわ。
そしてあの日、私も旅立ちの時を迎えた。
本当のところを言うと
住み慣れた場所が、名残惜しい気持ちもあって
仕方なく旅に出た、なんて言ったら
怒られるかしら?
とはいえ、私の興味をそそる物は
そうそう無くて、とーっても退屈な旅だったの。
あの星を見つけるまでは、ね。
その星は、まるで宝石のように輝いていて
遠くからでも、私に訴えかける何かがあったわ。
自然と、もっと近くで見たくなって
私は駆け出したの。
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ながれぼしってなぁに?
「流れ星って言うのはね、皆のお願い事を叶える為に、お空から降ってくるお星さまなんだけど、誰かのお願い事を叶えたら、すぐに消えちゃうんだ」
パパがおしえてくれる。
きえちゃうの……?
「そう、だから急いでお願い事をしなくちゃならないんだ」
そういうパパのとなりでママは
「あいかわらずパパは、ロマンチックね」
ってわらってる。
ロマンチック……?
「と、ともかく! その流れ星が今日はたくさん見られるんだ」
いっぱいみれるの?
だったら、ぼくのおねがいも、きいてもらえるかな?
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ぐんぐんと星に向かう私の身体に
少しずつ、でも着実に異変が起こり始める。
身体が、あつい……?
その熱は留まるところを知らず
次第に、私の身体のあちこちを燃やし始める。
──ああ、そういう事。
ずっと前に、私の母さんが教えてくれた事。
「あなたの旅の目的は、運命の星に巡り合い、その星の願いを叶える事よ。自分の持てる最大限の輝きでね」
星の願い? 私の願いは叶わないの? とか、
最大限の輝きってどうしたら良いんだろ? とか、
そもそも、願い事を叶える力なんてあるのかな?
……なんて思っていたけど
これだけ輝いていれば充分よね、きっと。
そんな風に呑気に考える。
……炎に身体を灼かれているのに、ね。
不思議と苦痛も無いし、むしろ力があふれてきて
今なら、願いを叶える事さえも
出来るんじゃないかと思えてくる。
きっと、それが流れ星の宿命だから、なのかな?
私が今向かっている星、それがきっと
運命の星に違いない。
そう確信をもって、私は更に速度を上げた。
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ちょっとさむい……。
あっ、ちょっとねちゃってた……?
「まだ、この子には大変な時間だったかな?」
「それはそうでしょう?」
ここはどこ? ベランダかな?
まわりはまっくらだけど、だっこしてくれてる
ママのあったかさはわかる。
「ほら、せっかく頑張って起きていたんだ。お空を見てごらん」
パパのことばで、おもいだす。
そうだ、ながれぼし!
ぼくはおそらをみあげる。
──わぁ! きれい!
おそらはおほしさまがいっぱいで
キラキラとひかってる。
「うーん……でも、なかなか流れないね」
「流星群って言っても、雨みたいに降ったりはしないわよ」
そのとき、キラッとながれぼしがひかる。
あのながれぼし……、ぼくをみてる?
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「どうも初めまして! こんばんは、かな?」
「えと、おねえさんだれ?」
「あははっ、そうよね! 突然のやって来てこんばんはって言われてもね。私は流れ星。流れ星のキラリ」
「え! ながれぼしって、あの?」
「うん、きっとキミの思っている通りよ。キミの願いを叶える為に遠いお空からやって来たの」
「ぼくのおねがい? あのね! えっとね! ……うーんとね」
「急に言われても、決められないかな?」
「うん、やりたいことがいっぱいすぎて、きめられないよ……」
「うんっ! やっぱり、その瞳の輝きは見間違いじゃなかったね! じゃあ、こうしよう?」
キミが、夢に向かって進んでいる限り
私は何時でも、キミの背中を押してあげる。
それは今の夢から、違う夢になったとしても
変わらないよ。
私を思い出す度に、必ず力になってみせるわ。
「ホントっ! うんっ、ぼくもそれがいい!」
「分かったわ! きっとステキな夢を……叶えてね!」
まわりがまっしろになって、キラリはいなくなった。
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「起きなさい! もう朝よ!」
ああ、もう朝か……
あの流星群から、何年も経った。
未だにあの光景を思い出すけれど
あれが、夢だったのか、現実だったのか
判断がつかない。
だけど、僕が夢に向かうとき
思うように行かず、挫けそうなとき
抱えきれないほどの重圧に負けそうなとき
彼女は僕の胸の中に現れ、背中を押してくれる。
……僕の勝手な錯覚かもしれないけどね。
──それでも僕は今、確かに夢に向かって歩み続けている。
「いつだって応援しているわ ──だって、キミが夢を叶えることが、私の願いだから、ね」
いつしか見た『流れ星』は
きっとあなたの胸の中にも。
彼らは、あなたが夢の一歩を踏み出す時
きっと背中を押してくれるでしょう。