表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/65

(7)

「ところで、あんた、何で、そんな体になったんだ?」

 医務室に居るのは、怪我人・病人・溺れかけた河童だけじゃなかった。

 精神操作能力者のおっさんは、上着もYワイシャツもズボンも脱いで椅子に座り……いや、ガチで「昔は羽振りが良かったが、今は零落(おちぶ)れてる」ようだ。

 上着やYシャツは「良く見ると何か変」程度だったが……肌着は……。

 パンツのゴムは明らかに緩んでる。シャツには、所々、穴が空いてる。

 そして……体のあちこちには傷跡。ついでに、手足の関節には、パワーアシスト装置らしきモノを装着。

 今は、そのパワーアシスト装置に充電をしてる最中だ。

 なるほど……「バッテリーが切れると、ロクに動けない」のは、過去に何か大怪我をしたせいらしい。

「いや……誰でも言いたくない事の1つや2つ有るでしょ。訊かないで下さい」

 「魔法」と「超能力」は原理は似たようなモノだが、大きな違いが有る。

 「超能力」は基本的に、生まれ付きか、ある日突然使えるようになったモノ。

 超能力者の家系の出身でもない限り、訓練をやったにしても我流だ。

 一方、「魔法」は基本的に師匠が居るし、どっかの「流派」に属しているので「魔法使い」同士の横の繋りが有る。

 つまり、技術・知識・ノウハウは「魔法使い」の方が「超能力者」より圧倒的に上だ。

 早い話が……。

()()()()()()()()()()

「は……はい……」

 余っ程、嫌な過去だったらしく、おっさんは俺に「何も訊くな」って「精神操作」をやった。だが……。

 「精神操作」が専門じゃない「魔法使い」は……「精神操作」が専門の「魔法使い」の「精神操作」を「防ぐ」事は出来ても「呪詛返し」までやるのは困難だ。

 ある柔道家とある空手家が戦った場合、普通の喧嘩では柔道家の方が勝てるとしても、柔道家の方が空手家の方に()()()()で勝つのは難しいようなモノだ。

 しかし……「精神操作」系の「超能力者」が、「精神操作」が専門じゃない「魔法使い」に「精神操作」を行なおうとした場合、超能力者の方が化物(チート)級で、魔法使いの方が超ヘボでも無い限りは……。

「まず、あんた、精神操作能力者だろ? それも、師匠に付いて修行したんじゃなくて、生まれ付きか、ある日、突然、使えるようになったタイプの」

「そ……その通り……です……」

「お……おい……とんだ危険人物じゃないか……」

 河童の若造がそう言ったが……。

「落ち着け……何で、正直に、このおっさんが自白(ゲロ)ったと思う?」

「何でだよ?」

「だから、ちゃんとした修行をした訳じゃないんで、『精神操作』は出来るけど、技術はヘボだ」

「ヘボって?」

「『魔法』の心得が有るヤツなら……『精神操作』系が専門じゃなくても、このおっさんの『精神操作』を『返す』事は簡単に出来る。で、おっさん、こんな体になった訳を正直に教えてもらえるかな?」

「あの……少し前に……その、ある犯罪組織の女ボスに『精神操作』をしようとして……」

「ひょっとしてエロ目的?」

 横から自称「クリムゾン・サンシャイン」が口を出す。

「は……はい」

 駄目だ……このおっさん……。人間として完全に駄目だ。

「犯罪組織の女ボスって誰だ?」

「は……はい……『旭日皇国エンパイア・オブ・ザ・サン』の首領の通称『姫巫女』です」

 ……。

 …………。

 ……………………。

 マヌケが……。

 「旭日皇国エンパイア・オブ・ザ・サン」の「姫巫女」ってのは、流派までは不明だが……かなりの腕前の「魔法使い」系らしい。

 悪党デビューしてから、ほんの1〜2年で、あいつが作った高品質な防御魔法の「護符」は、他の犯罪組織・テロ組織の間で高値が付くようになり、「魔法使い」が少ない組織の大物が何者かに「呪詛」された場合に、並のサラリーマンの年収の何倍もの金で雇われるようになったり……。それ位の、俺程度の奴じゃ十人や二十人居ても、絶対に太刀打ち出来ねぇレベルの「化物(チート)」だ。

「それで、どうなった?」

「は……はい……寝室に案内されたら……」

「どうせ、実は、『姫巫女』には、あんたの『精神操作』は効いてなかった。効いてたように思えたのは、全部、相手の芝居だった。あんたは、何で、自分の『能力』が効かなかったのかさえ判らない。そして、いざ事をいたそうとしたら『姫巫女』の手下がやって来て、あんたは袋叩き。そんな所だろ」

「な……なんで判ったんですか……?」

 ……。

 …………。

 ……………………。

 この船に乗ってる「悪党」は、ビミョ〜な能力しか無い奴らばっかりのようだ。俺も他人(ひと)の事をとやかく言える程じゃないが。

「よく手足だけで済んだな……」

「あ……ホントはチ○コを切り落されかけたんですが……それだけは勘弁してくれって頼んだら、代りに大型ハンマーで」

「やめろ、それ以上は聞きたくない」

「私の手足の骨を砕いたヤツも、かなり嫌そうな顔で、何回かためらって……」

「やめろって言ってるだろ」

「すいません」

「あんた、あと、昔っから、自分の事を『そこそこのイケメンなのに何故か女にモてない』とか思ってなかったか?」

「え……何で、判ったんですか……?」

 そうだ……このおっさん……齢の割には役者にしてもいいような顔だ……。

 でも……。

「だから、女とヤるのに精神操作を使ってただろ」

「は……はい……だから何で……?」

 何でって……そりゃ決ってるだろ。

「何で、判ったか教えてやろうか? 頼むから、その酷い口臭と、しゃべる度に口から唾を飛ばす癖だけは、何とかしてくれ」

「えっ?」

 自分で気付いてなかったのかよ……。

 クソ。全世界にロクデモない伝染病でも流行(はや)って、四六時中、マスクをするのが当り前の世の中にでもならない限り、この屋内で、おっさんの近くに居たくねえ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ