日吉瑞希①
後ろめたさはある。
麻衣が幸助のことを好きだという気持ちは知っている。
麻衣は大切な友達。これからもずっと一緒にいたいと思っている。
だけど同じように幸助も大事な人。
だから麻衣に取られるのは嫌だ。
レクのペア決めのホームルームで私は幸助に立候補した。
結果としては百村さんがペアの権利を手に入れたけれど、立候補したことで麻衣が私に対して不信感みたいなものを抱いたのは確かだ。
言い訳として、体育祭のときに仲良くなったから、一緒だったらうれしいなと思って幸助を希望したと麻衣に伝えた。
納得していないようだったけれど、それで私たちの関係性は壊れずに済んだ。
というより、当時は幸助に対して恋愛感情を抱いていなかった。
そもそも今私が抱いている感情も恋愛感情なのかはわからない。
麻衣と違って今まで恋愛をせずに生きてきたから、この気持ちが恋愛感情だと言い切ることはできない。
ただ、幸助を誰にも渡したくないという気持ちがあるだけ。
それと同時に麻衣も失いたくない。どちらかを選ぶことはできない。
だから今は麻衣に隠れて幸助とやりとりをしている。
後ろめたさはある。
裏切っているような気持ちになることもある。
でもやめられない。どうしようもない。
私は楽観的な性格をしていると思う。
ばれてもどうにかなるだろうと考えている節がある。
なんにせよ、ばれるまではこのままでいい。
このまま。このまま何も変わらなければいい。




