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津田佑衣奈⑦

「それではお疲れさまでした! かんぱーい!」

 軽音部の部長の掛け声で乾杯。



 お父さんのライブの打ち上げは居酒屋で行われるが、私たち高校生の打ち上げは今回、トスカーナというイタリアンを貸し切って行われた。


 コース料理で飲み放題。


 ライブを行った四バンドのメンバーと、見に来てくれた人のうちの何人かで、合計四十人くらいになった。


 約束通り佐井君も来てくれた。


 見に来てくれた人たちに挨拶回りをしていたので、最後になってしまったが、佐井君たちは残ってくれていた。



「遅くなってごめんね。今日は見に来てくれてありがとうね」


「いいえ。こちらこそいい演奏をありがとう」

 そう言って乾杯をして、佐井君の向かいに座わる。



 奥から上田君、南君、佐井君。テーブルをはさんで、恵美、涼子、私。合コンか。


 私が座ると上田君と南君は「イエモンを聞いたことがなかったから、他の曲も聞いてみる」と言っていた。


 布教活動をしているような気分になった。


 涼子もかっこよかったと言って撮った写メを見せてくる。


 奥の恵美はおとなしく話を聞いているようだった。



「セットリスト良かったよ。ああ、そうそう、三曲目はなんて曲? あれイエモンじゃないでしょ?」

 佐井君が聞いてきた。


「ああ、あれ? そうよくわかったね。あれはサザンのソウルボマーって曲」


「サザンなんだ」


「そう。北山君がサザン好きで、ボーカル引き受ける代わりに一曲はサザンを入れてくれって言うから、必死で練習したんだ」


「それはお疲れ。それにしてもサザンってポップスのイメージあったけど、あんなハードロックな曲あるんだね」


「そうなんだよね。北山君に楽器隊が三人でできそうな曲をいくつかピックアップしてもらって、その中から選んだんだけど、案外あるんだよね」


「知らなかったな。聴いてみる」


「うん。SAKURAってアルバムが比較ハードロックかな? ソウルボマーはそのアルバムじゃないけど」


「そうなんだ。わかった、聴いてみる」

 佐井君がウーロン茶を口に運ぶのを見て、私もコーラを飲む。


「佐井って楽器できるの?」

 南君が佐井君に聞いている。


「いや、できない」


「でも歌上手いじゃん。詳しいならバンドやったら?」

 上田君が奥から身を乗り出して言う。


「目立つじゃん。いいよ。やらない」

 嫌そうに佐井君が答える。


「やるんだったら見に行きたいな」

 恵美が会話に参加する。


「えー。いやいや、やらないよ」



 佐井君にボーカルをやれだの、じゃあ俺がベースだのよくある架空のバンド編成トークになった。



「じゃあ気が向いたら声かけて? 一度戻らなきゃ。今日はありがとうね」

 もう一度乾杯をしてから、席を立った。



 架空のバンド編成トークは身内でやると盛り上がるけれど、はたから聞いているとあまり面白くない。


 ただ、一つだけいいことを知った。


 佐井君は歌が上手い。聴いてみたい。


 バンドメンバーのところに戻る私の顔は少しにやけていたかもしれない。

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