表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/108

津田佑衣奈①

 佐井君のうわさはすぐに広まった。


 彼女がいるといううわさではない。


 それはガセネタだったとホームルームで明かされたらしい。


 広まったうわさはその後のこと。


 ホームルームで次のレクのペア決めで、佐井君に希望が集まったということだ。


 もはやうわさではない。事実だ。


 麻衣のちょっかいを出している男の子という認識だった佐井君が、一気にモテ男としてスポットライトが当たった。


 ノーマークだったモテ男がどんな顔をしているのか、どんな雰囲気なのかと、学年中の女子がD組を覗きに行った。


 私もその一人。


 しかし佐井君自身はどこ吹く風。


 女子に注目されて、照れることもなければ、嫌がることもないし、調子に乗ることもない。モテ男感をにじみ出すことすらない。


 休み時間は本を読んだり、友だちと話しをしたり。他の男子と何ら変わりがない。


 遠目にはなぜ彼がそんなにモテるのかはあまりわからない。


 だから他の男子から妬まれたり、嫌がらせを受けたりはしていないようだ。なかなか人たらしなのかもしれない。


 だけど事実としてD組では人気がある。


 その話を聞きつけ、部活に所属していない佐井君を、女子に注目されることを目論んで、勧誘する部活まで現れたが、華麗にスルーしている様子だ。


 できれば私の所属する軽音楽部に入ってもらえるといいのだけれど。


 ライブを企画するときの集客としてかなり役に立つだろう……なんて打算的に考えたりして。


 今うちのバンドはボーカルがいないし、歌上手かったら入ってくれないかな。


 ただ、そんなことを考えてはいたときは、私は佐井君と面識はなかった。


 話したこともない。話すこともないじゃないかと思っていた。


 とにかく、佐井君はよくわからない人物だった。


 でも今は、一番知りたい人。一番話をしたい人だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ