平尾香苗⑨
サンシャイン60通りに着くとシェーキーズが目に留まった。
でもバイキングだ。パフェが食べられなくなるかもしれない。
いや、こーくんの前で大食いは見せたくない。
「シェーキーズにしない?」
こーくんも目に入ったようで、お店を指さして言った。
「私もそれ思った。でもパフェ食べられなくなるかもしれない……」
「そっか。じゃあ他にしようか」
「シェーキーズは今度来たときにしよう?」
「いいね。そうしよう」
こーくんはまた私と一緒に出掛けてもいいと思ってるって事だろうか。
その場の相づち程度の返しでないことを祈ろう。
結局向かいのデニーズで昼食にした。バイトをしているファミールと同じ系列で、メニューも似ているけれど、文句は言わなかった。
私はとろ~りオムライスにした。
こーくんは担々麵を選んでいた。わかっているな。
注文をすると、こーくんは鞄からハサミ男を取り出し、返してくれた。
「ありがとう。めちゃくちゃおもしろかった」
「でしょ? 映画化もしてるよ」
「そうなの!?」
それからデニーズではハサミ男についてお互いにネタバレ感想を言い合った。
腹ごしらえをした後は、すぐにパフェは食べられないということになり、アドアーズでUFOキャッチャーをしたり、マリオカートをしたりして過ごした。
思い出としてプリクラを一緒に取りたいと思ったけれど、言い出せなかった。
でもこーくんがイーブイのキーホルダーを取ってくれたので、これを代わりに思い出としよう。
二時過ぎのミルキーウェイは混んでいた。
根気よく待って席に着くと、すぐに注文する。
選ぶも何もない。自分の星座を言うだけみたいなものだ。
「私は射手座」
「俺は蠍座」
注文を取った店員さんがいなくなるなり私は聞いた。
「こーくんの誕生日っていつなの?」
「十一月十四日」
「え、そうだったの? 近いね。」
「香苗は冬なんだね。いつなの?」
「十一月二十九日」
「そうか。覚えておく」
「いいよ別に」
二人とも十一月生まれか。まあ珍しい組み合わせでもないけど。
しばらく話をしていると、パフェが運ばれてくる。
パフェに星がちりばめられていて、いちいちかわいい。
射手座も蠍座もかわいいし、たぶん蛇遣い座もかわいい。
今日はミステリー小説の話は少ない。
こーくんの好きな音楽の話や、私の好きなドラマの話などをした。
ちなみに最近はサザンをよく聴いているらしい。私も聴いてみようかな。
食べ終わってもまだ三時くらいだったけど、二人とも人ごみに疲れてしまい、帰ることにした。
急行で帰ると、清瀬を使うこーくんはひばりヶ丘で乗り換えのはずだけど、所沢まで来てくれた。
「ごめんね、所沢まで来てもらっちゃって」
「いえいえ、今日はありがとう。カラスの親指読んだら感想聞かせて」
「こちらこそ。わかった。じゃあ今度、森博嗣の小説貸して」
「いいよ。おすすめ」
手を振って解散。
こーくんは二駅引き返すために池袋行きの三番ホームへ。
私は西武新宿行きの二番ホームへ。
駅の時計を確認すると、まだ四時だった。
この時間なら五時前に家に着くだろう。なんて健全なんだ。
こーくんから森博嗣の小説を貸してもらう約束をした。
でもいつになるかはわからない。
またこうやって出かけたいな。
お祭行くか。うん、そうだな。清瀬のお祭に行くか。
そう決めて、西武新宿線に乗り換えた。
 




