押立さくら②
高校生活初めての終業式だったけれど、中学校の頃と変わらずつまらないものだった。
校長先生というのは、話をつまらなくする研修でも受けているのだろうか。
担任の佐藤先生の話は聞いていられる。国語の先生だからかな?
まあそんなことはどうでもいい。それよりも明日からは夏休み、という事実が大事なのだ。
夏休みの予定はそんなにないけれど、りかと行くダイヤモンドシティの日程が近づいている。
ホームルームが終わる。
佐藤先生は今日の学校が終わっても、今日は夏休みではないとか言っていたけれど、そんなことはない。今日ももう夏休みという感覚だ。
荷物をまとめる。
「りか、帰ろ」
私はりかが佐井君とバイバイをし終わったタイミングで、肩をとんとんとたたいて言った。
「あ、さくら。うん。帰ろう」
佐井君のこと考えていたのか、私の声に不意を突かれたような顔をしていた。
りかも荷物をまとめると、二人で教室を出た。
「ねえ、どこかでお茶していかない? 夏休みの計画とか立てたいし」
この間まで距離を取ろうと思っていたけれど、それももうどうでもよくなってしまった。
時間は有限だし、気持ちを抑えてぐずぐずするより、叶わなくたって好きなように振る舞いたいと思うようになった。
「いいよ。行こう行こう。どこがいい?」
久しぶりの私からのお誘いだったから、りかは少し驚いたようなリアクションを見せたけれど、すぐに笑顔になり同意してくれた。
「駅前のミスドは?」
「いいね。ドーナッツ食べよ」
佐藤先生には悪いけれど、やっぱり今日ももう夏休みだ。
今年の夏休みは楽しみがいっぱいあるといいな。いや、いっぱい作りたい。
並んでミスタードーナツへ向かう。いつも一人で歩いていたので、なんだかうれしい。
それにりかが私の鞄も自転車に乗せてくれたので、いつもより楽だ。
「りかは何のドーナッツが好き?」
「私はエンゼルフレンチ一択だね」
「あ、私も!」
一緒だねと笑った。
そもそもそれ以外の選択があるのだろうか。まああるか。
店内には私たちと同じ制服の客もいて、みんな早速夏休みを楽しんでいるのだなと思った。
席を確保してドーナッツを選ぶ。
私はエンゼルフレンチとハニーチェロにして、りかはエンゼルフレンチとオールドファッションを選んでいた。
なんだかんだ言って、結局一択ではなかった。
「私も新しい浴衣買うことにしたんだ」
席に着くなり、りかが言った。
「そうなんだ。じゃあ一緒に選ぼう」
「うんうん。楽しみだな」
来週にはダイヤモンドシティに浴衣を買いに行く。りかと色違いもありかな。
りかがエンゼルフレンチを食べている。私はガムシロップを紅茶に入れかき混ぜる。
「そうそう、お祭ってりかの住んでる国分寺市のお祭り?」
どこのお祭りか聞いていなかった。
私なりに調べていて、国分寺市で夏祭りが開催されると知っていたけれど、一応確認しておくことにした。
私の質問にりかはドキッとしたようなリアクションをして、話し出した。
「あ、いや、違う。清瀬氏のお祭りなんだ……」
りかは気まずそうな顔をしている。
私はそれを聞いて少しイラっとした。




