〜母親というもの〜
「なあ?香澄。あんた、なんで四天王ハンターなんてやっとるん。」
「え?」
風の天王から突如言われ、私は黙り込んだ。父のため。父は望んでいた?私が四天王ハンターに入団することを希望していた?そもそも…
「やっぱいいわ。なんか察した。」
「…そ。」
「…今日もだめか。そろそろ花の天王様も探さねばならんなあ。」
「時間ならまだまだありますが…」
「ふむ…よし、いいぞ。いってこい。」
「ありがとうございます。」
…(ここにいるはずなんだけどなぁ)
あたり一面花が咲く花園が、花の天王の境内なのだ。
「…花の天王さーん。でておいでー。」
やっぱり、脱走してるんだ…でもおかしい。
天王が境内にいる時、境界付近の歪な機械が反応するのだ。それが、ずっと反応している。だから、どこかに隠れている。もしくは、機械が故障している。
しかし、機械に異常はなく、まだまだ反応するとされている。
「香澄!緊急事態だ!!今すぐ風の天王境界へ向かうぞ!乗れ!」
私は咄嗟に車に乗り
「風の天王がどうしたのですか!何かあったのですか?!」
「ああ。風の天王が何者かによって傷をつけられたんだ。今、風の天王様が出血をされている。緊急でうちの団員を呼んでいる。他の団体もくるはずだ。」
「なっ…風の天王が…?!」
風の天王境界前で車は急停止し、激しく揺れる。
周りは治療するためのものを詰め込んだ救急車やパトカーが止まっている。
「えー…おそらく花鳥風月撲滅団の仕業でしょう。奴らは四天王を傷つけるのが仕事だ。目的はわからない。」
「…馬鹿だなぁ…四天王が一人でも欠ければ世界は終わってしまうのに…」
「嗚呼…。」
「奴らが花の天王をさらったという説もあるんだ。数々の団体が花鳥風月撲滅団基地に偵察に行くんだが、100%で失敗に終わっているらしい。」
奴らが?花の天王の行方を知っているかもしれない…
「…私、行っていいですか。偵察に。」
「…俺は構わんが、ハンター長の幸太郎様に報告しな。うまく説得すりゃ行かせてくれるぜ。」
「げっ…説得させなきゃ行けないパターンなのね…わかったわ。」
「そこ!!早く治療薬を持ってきなさい!」
「あ、はーい!」
「失礼します。」
「話は聞いたよ。花鳥風月撲滅団の基地へ行くんだろ?」
「あ…は、はい!」
「駄目だよ。」
「…え?」
そうなるよね。でも即答なの?私の実力では及ばないのか?
「君は駄目なんだ。君だけは行かせない。花鳥風月撲滅団は四天王を傷つけて撲滅させる団体なんだ。絶対に行かせないよ、香澄。」
まさか即答されるなんて思ってもいなかった。私はショックでその場を黙って離れた。
ー…を…お願いします…どうか……まで…………―
「俺は藤次郎。花鳥風月撲滅団の団員だ。今日のターゲットは花の天王か…」
「行くぞ藤次郎。まずは境内に入るが、お前は後ろから回れ。いいな?」
「了解、任せろ。」
花の天王は目を微かに開き、本を読んでいて、こちらの存在には気づいていないようだった。
「…!!」
僕はとある物と目があった。
―どうやら、相方の準備が整ったらしい。そして、相方は咄嗟に進み、花の天王を捕えた。
「嫌ッ!!どうか!どうかあの子だけは!!嫌ッ!」
その後、花の天王の行方は誰も知らない。さらわれたのか、死んだのか。
僕は今、とある四天王ハンター長になって、仕事をしている。
「幸太郎様、今日の風の天王様の事件は…」
「花鳥風月撲滅団の仕業で間違いないだろう。」
「わかりました。ところで、香澄さんなんですけど…」
「嗚呼。知っている。必ず行かせないようにしろ。」




