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転生するならチートにしてくれ!─ご令嬢はシスコン兄貴─  作者: シギノロク
一章 十二歳、王子と婚約しました。
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14.お説教、頂戴しました!

 王宮のとある一室で、俺たちはレグルス王子の護衛たちに囲まれて事情聴取を受けていた。


 大男たちを説得……というか、言葉でねじ伏せてやって、無事に王宮に戻ってきたのまでは良かった。

 しかし、パーティの主役であるレグルス王子が居なくなったという事態に会場は大混乱していた。

 そこに俺たちが帰ってきたものだから、婚約発表がお流れになってしまったことを含め、各方面からお叱りを頂戴しまくった。


 その後、こちらの話も聞いてやろうという寛大な国王陛下の言葉からこのような大掛かりな事情聴取を受ける羽目になったのだ。

 四、五名の護衛に囲まれ、王や両親を目の前に話をしなければならない、この状況は流石に緊張する。


 因みに、俺とレグルス王子、例のごろつき三人組とは既に打ち合わせ済みだ。

 護衛たちにも、レグルス王子と俺が王宮を抜け出してデートをしていたところを暴漢に襲われ、大男たち三人が助けてくれたという説明をしていた。


 普通、デートってそれなりに恋愛感情や好意のある相手と行くものだろ。

 アルキオーネのせっかくの初デートが未来のDVクソ男となんて嘘でも許せない。

 許せないが、背に腹は変えられぬ。

 レグルス王子と仲良くしてると思われたくないが、仕方ない。

 俺は嘘がバレないことを祈りながら、レグルス王子の横にいた。


「申し訳ない」

 レグルス王子は立ち上がると、リゲルや護衛たちに向かって深々頭を下げた。


 護衛たちは困ったように頭を振った。


「いえ、簡単に振り切られるような護衛である私たちが悪いのです。護衛であれば、常に側にいるべきでした」

 薔薇園でレグルス王子の護衛をしていたランブロスが深く反省したように言った。


「ランブロスよ。気に病むことはない。余がレグルスを甘やかしすぎたのだ」

 国王がしゅんとした顔でそう首を振った。


「いいえ、陛下のせいではございません。ワタクシのせいですわ。ワタクシが母親としてしっかりしていないから……」

 デネボラは顔を隠して泣くような素振りを見せる。


 レグルス王子は冷ややかな目でデネボラをちらりと見た。

 気持ちは分かるんだけど、もう少し、もう少しだけ穏便な表情はできないものだろうか。


 俺はヒヤリとしながら、レグルス王子の様子を見守る。

 偉い人たちが話していると、俺は口を挟めないわけで、 ここは話が振られるまでレグルス王子に頑張って貰うしかない。


「申し訳ありません」

 レグルス王子はもう一度頭を下げた。


 真実を知るためとはいえ、一国の王子に嘘をつかせた上に頭を下げさせる俺はライバル令嬢や悪役令嬢というより、悪女だなと頭の中で呟く。

 俺、一応、男なのに。


「いいえ、ワタクシがいけないんです……」

 デネボラはハンカチを握り、涙を拭った。


 あっという間に周囲の視線はデネボラのものになる。


 すごい。

 この女、女優かよ。

 俺もそのうちこのくらいにならなきゃいけないのかな。

 俺はそんなことを考えながらその場を見守った。


「いや、余が母親のいないレグルスを甘やかしすぎたのだろう」

 国王はデネボラの肩を抱く。


「貴方……」

 デネボラはうるうるとした瞳で国王を見上げた。

 まるで映画のワンシーンのように自然な流れだった。


 それを見ていたレグルス王子は苦虫を噛み潰したような顔をした。


 レグルス王子、笑顔!

 いつもの笑顔、忘れてる!

 そう言いたいが言えない。もどかしい。


 いや、両親のいちゃいちゃを見てしまった思春期男子の微妙な気持ちは分からなくもない。

 ものすごく微妙だよな。

 アルキオーネの両親も仲が良く、娘である俺の前でキスをする。

 そのときの恥ずかしくて居たたまれない感じといったら、言葉にできない。


 しかも、レグルス王子の場合、両親は国王と()()()()である。

 そんな顔をするのも無理もない。

 ものすごく分かるけど、今は抑えてくれよ。

 俺は祈るような気持ちでレグルス王子を見つめた。


「あのぅ……俺たちはどうすれば……」

 本来であれば口を開いてはならないのだろうが、大男は痺れを切らしてそうおずおずと切り出す。


 そうだ。

 国王と王妃のいちゃいちゃを見せられているこっちは「どうすればいいの?」ってなるよな。

 事情聴取のはずが、話を振られ無さすぎて、俺たち完璧にオブジェになってたよな。

 俺は大男に同情していた。


「おお、すまなかった。アントニス殿、バシリオス殿、カロロス殿、王子とご令嬢を助けてくれた上に王宮まで連れてきてくれたこと、礼を言う」


「恐れ入ります」

 消え入りそうな声で大男が答える。


 分かるよ。

 場違い感半端なくてそうなるよな。

 俺は心の中で何度も頷く。


「少ないが、金貨だ。受け取ってくれ。アクアオーラ卿」

 国王はそう言うと手を上げる。


 アクアオーラ卿と呼ばれて護衛の中でも一際偉そうな男が進み出る。

 そして、アクアオーラ卿は大男たちに重そうな袋を渡す。

 大男は少し驚いたような顔をして、袋を受け取った。


 因みに、大男の名前はアントニス、ハゲがバシリオス、ガリガリがカロロスというらしい。

 初めて聞いたときは、頭文字が見事にABCと並んでいるので俺は大声を出して笑いそうになった。


 アントニスはなにか言いたそうにこちらを見つめた。

 俺は声に出さず、唇だけで「夜。手筈通りの連絡方法で」と告げた。

 アントニスはこくりと頷く。


 どうやら、何か伝えたいことがあるらしい。

 大体の予想がつくが、さて。


 このあと、事情聴取という名のお説教はしばらく続いた。

 主に、国王とデネボラがレグルス王子の育て方が悪かったと嘆き、周りがフォローをするという形の新しいお説教スタイルだった。


 その間、俺とアルキオーネの両親と、ごろつき三人組は空気と一体化して大気になりそうになっていた。


 ***


 王都にある屋敷に帰る頃、俺はクタクタだった。

 しかし、やらねばならないことが俺にはあった。


 メリーナに頼み、手紙を送るよう手配してもらう。

 それから、王都に滞在する日を二日ばかり延ばしてもらうようお願いした。


 早ければ今日中、もしくは明日中に決着する。

 というか、着かせる。

 その為の準備だった。

 じゃないと、アルキオーネの誕生日に間に合わなくなるからな。


 俺には既に黒幕がなんとなく分かっていた。

 しかし、証拠がない。

 となれば、自白してもらう必要がある。


 窓越しに空を見上げる。

 キラキラと金の粉を撒いたような空が広がる。


 俺は上手く行きますようにと、星に向かってお祈りをした。


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