教室乗り込みからのカプッ!
少女に集中していて気が付かなかったがさっきの2人が俺の近くから少女のことを見ていた。さっきのような巫山戯た様子は全くなく、真剣な表情でしょうじょと先生の成り行きを見守っていた。
視線を戻すと先生が何かを語りかけ、少女はただ立ち尽くしていた。
「何を言っているんだろうな」
「さぁね」
「アフレコしてみようぜ」
「幼稚ね」
「うるせぇ」
2人のやりとりを横目に見ていると教室の喧騒が一際大きくなった。
何かと思い少女の方を見ると丁度少女が走っているところだった。さっきの足取りとは全く違いしっかりとした足取りで進んでいる。先生はもう腰が引けていて今にも逃げ出しそうである。しかし、先生の1人がこちらをちらりと見たかと思うと引き気味だった体を戻し、臨戦態勢をとった。きっと俺らが様子を見ていることに気がついたのだろう。
しかし少女は止まることなく走り続け、接触するかどうかの瀬戸際で屈み先生二人の間をすり抜けた。侵入者だというのに教室では何故か歓声があがり皆笑顔だった。
しかし俺は気づいてしまった少女の顔がとても可愛いことに。
何故俺が俯いていた少女の顔を見ることが出来たのかというと、少女が屈む瞬間顔を少しあげたからだ。といってもその間1秒程度。だから皆がなぜ喜んでいるのか俺には理解出来なかった。突破された先生は生徒に嫌われるような先生じゃなかったしどちらかと言えば好かれている方だった先生のミスに対して喜んでいるのでなければ何故か。きっと皆毎日同じような日々に飽きていたのだろう。だから不法侵入であれ、刺激を加えてくれた少女が突破したことに喜んでいるのだろう。推測だが。
少女はというと、先生の間をすり抜けたあとそのままの勢いで走り抜け見えなくなった。
それから2分足らずで少女は俺たちの教室に乗り込んできた。ここに来るとは誰も予想していなかったため、教室中はパニック状態になった。俺はといえば足音は聞こえていたけどまさか自分のクラスに来るとは思ってもみてなかったので少し驚いた。
しかし怖いのはここからだ、少女は相当なスピードで俺たちのクラス(3階)にやってきたというのに息切れすらしていなくて、加えて言うととても嬉しそうな笑顔だったのだ。鋭い牙を見せながら………。八重歯と言うには長く鋭すぎる歯これを牙と言わずしてなにを牙というのだろうか。
そして彼女はその笑顔を崩さずに教室に足を踏み入れ近くにいた生徒をカプッ
俺は悟った彼女は人間ではない。バンパイアだと。逃げようかとも考えたが、普通なら10分はかかり、急いでも5分はかかる3階まで2分足らずで来れるほど足が速い彼女から逃げ切れるとは考えられなかったので、諦めた。
そして彼女は1人、もう1人と血を吸っていった。血を吸われた生徒は意識を失っているのか横たわったり壁にもたれかかったりしている。
「情けという言葉は…………………無さそうだな」
「化け物に情けも何もないでしょ」
「いやーもしかしたらっていう可能性もあるかもじゃん?もうその考えは消えたけど。」
「にしてもなんなのあいつ血を吸うなんて………まさかバンパイアだなんて言うつもりじゃないでしょうね……………」
「いや、そのまさかだろうよ。あの容姿はゲーム世界、アニメに出てくるものと一致しているからな。」
「まさかあんたのオタク知識が有効的に使われる日が来るなんてね」
「そんなこと言ってる場合ですか!いまは彼女の目的とどうするべきか考えるのが先決でしょう!」
「えーと君はたしか小鳥遊たかなし 浩輔こうすけだっけか。」
「そうです。今はじゃれ合っている場合ではありません!彼女に血を吸われたらどうなるか分からないんですから!」
「そ、それもそうだな」
「でも、どうすればいいって言うの?」
「とりあえず皆を落ち着かせましょう騒いでいてはできることも出来なくなりますから」
「わかった。」
よし。これで影響力の高い2人が動けば少しは落ち着くだろう。