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微は朝に弱かった。

なので起きて15分ほどはベッドの上に座って頭を覚醒させてから、ようやくベッドから降りる。

朝ごはんは基本食べず、シャワーを浴びて髪をそれなりに整えたらさっさと家から出て行くのが通例だ。


微の両親は外国へと旅立つ前に微にピアスをあげた。

黒色の、タングステン製のもので結構いい値段のするピアスを高校の入学祝いとして買った。

普段あまりアクセサリーをつけない微だが、このピアスだけは気に入ってるのか、両親への情なのか毎日付け続けている。


ただし、髪の毛と同化してしまい、若干ピアスが目立たない。微はそこを良しとしているので、特に見せたくて付けているわけではない。


家でも教室でも基本的に一人だったので、一日を通して一言も喋らないで終えたことがある程、微は喋らない。

だが最近は由乃がいるせいで喋らざるを得なくなっているのが現状だった。

そんな由乃が、今日も朝から微を構った。


「あら微、おはよう」

「ちっ...ああ」

「まだ挨拶しただけよ?何で舌打ちするのかしら」

「“まだ„ってなんだ」


引っかかる言い方をされて、思わず微は由乃に噛み付いた。

だが、スルーされて話は違う話題へ。


「そんな事より微、今日放課後暇かしら?」

「........暇じゃない」

「嘘ついたわね。じゃあ今日の帰り私の夕飯に付き合いなさい」

「ふざけるな、何でそんな事に付き合わなきゃならない」

「嘘をついた罰よ」

「馬鹿馬鹿しい」

「決まりね」

「おい、勝手に...」


微が拒否しようとしたところで教科の先生が入って来てしまい、話は中断された。



あっという間に放課後。


もちろん逃げようとした微は、速攻で由乃に捕まり、言い争いになった。


「は・な・せ!!」

「嫌よ、今日は一緒に夕飯を食べると約束したじゃない」

「してない!というかお前力強すぎじゃないか?」


そして、由乃は微の手を握ってみんなからの注目が集まるように計らった。


「おい」

「何かしら?」

「なんだこの手は...!離せ!」

「離したら微帰っちゃうでしょう?」

「当たり前だろ」

「だからこうして手を握っておくのよ。まぁ目立つけど...」


そう言われて微は周りを見渡した。

すると、教室にいるみんなが微たちを見て、ヒソヒソと話したり、ニヤニヤしてこちらを見ていた。


「っ...!分かった、分かったから手を離せ!」

「逃げない?」

「逃げない、逃げないから離せ」

「分かったわ」


離すとすぐに微は由乃から距離を取った。


「じゃあ、行きましょう」

「早くしろ」


いつもと違う道、食べ物屋の多い通りを二人は歩く。

ただ微はせめてもの抵抗なのか由乃の三歩後ろを歩いている。さながら昔の日本の良き妻の如く。


「微、後ろが気になるわ。隣を歩きなさい」

「あんたと歩くと目立ってしょうがないから嫌だ」

「こんなに人が多いのだから、目立つはずがないでしょう?」

「とっとと飯食って帰るぞ」

「でもまだ夕飯にしては早すぎるわ」


現在17時、たしかに一般の家庭ではまだ親がご飯を作っている最中くらいだ。


「じゃあ何でこんな早く街中に出たんだ。これじゃ無駄な時間じゃないか」

「いいえ、元々どこか気軽に入れる場所でお茶をして時間を潰すつもりだったもの」

「なんだと?」

「だから、喫茶店でもファミレスでも探しなさい微。じゃなきゃお腹が減るまで歩き回る羽目になるわよ」

「何だその脅しは...」


結局由乃が見つけた適当なカフェに二人は入って行った。


(何でこんな無駄な時間を過ごさなきゃいけないんだ...)


微は心の内でそんな事を嘆いた。

由乃はメニュー表を見て何を頼もうか悩んでいた。


「どれにしようかしら...。ねぇ微、どれがいいと思う?」

「どれでもいいからさっさと飯食え」

「ここでは食べないわよ?」

「本当何故入ったんだ...」


微はアイスコーヒーを、由乃はバナナジュースを頼んで一息ついた。


「あら?微」

「なんだ」

「ピアス付けてるのね。髪が邪魔で分からなかったわ」

「ああ...まぁな」

「誰かから貰ったのかしら?」

「入学祝いで親に貰っただけだ。良いものだから、何となく付けてるだけ」

「へぇ」

「んな事よりさっさと夕飯食って帰りたいんだが」

「ゆっくりしましょう?せっかく来たのだから」

「連れて、来られた。な」


由乃は微とのしばしの歓談を楽しんだ後、夕飯を食べた。

その帰り道、由乃は微の隣を無理やり歩いた。


「微、今日は楽しかった?」

「楽しくはなかったな」

「そう...」


由乃は少しだけ残念そうにした。

それに若干の罪悪感を感じて、微は由乃にフォローを入れた。


「楽しくなくも無かった...な...」

「ふふっ、フォローかしら?」

「そんなわけないだろ、バカ」

「ありがとう、優しいのね」

「もう黙れ...」


そして二人は分かれ道でさよならをした。

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