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家に帰って来た微をとりあえずベッドに寝かせた。


「薬が置いてある場所教えて」

「無い...」

「え?無いの?...じゃあ後で買って来ましょう。気持ち悪い?吐きそう?」

「吐きはしない...。ただ頭痛い」

「頭痛ね、熱もかなりあるし...。ちょっと待ってて。今冷たいタオルおでこに貼るから」

「帰れお前」

「嫌よ」


微の命令に一切耳を傾けず、由乃は洗面器に氷と水を入れて、それでタオルを冷やして微のおでこに乗せた。


「じゃあちょっと薬局行って色々買って来るから。待っててちょうだい」

「ああ...」


力無い微の返事を聞いて、由乃は少し早足で薬局へと向かった。

薬局にて、色々迷ってる時間も惜しく、早く帰ってあげたい由乃は薬局にいる薬剤師の人にどの薬が良いかを聞いた。


「すみません、風邪薬で良いのはどれですか?」

「症状はどういったものでしょう?」

「頭痛があって、吐き気は無いんですけど、熱が凄くて」

「なるほど...。でしたらこれを処方して見てください」

「ありがとうございます」


ついでにスポーツドリンクを一緒に買って帰った。


「ただいま微」

「ああ...」

「薬。買って来たから飲んで、スポーツドリンクも買って来たから」

「...悪い」

「私もして貰ったから。ほんのお返し」


薬を飲んだが、すぐに効果は表れないので微はやはり少し辛そうだった。

心配な由乃はずっと隣で微を診ていた。


「お前...もう帰れ。移るだろ」

「帰らない。微が治るまでここにいるわ」

「死にはしないんだ...」

「そこまで大袈裟に考えてるわけじゃ無いけど、好きな人が辛かったら側にいたいの。何かしてあげたいの」

「...あっそ」


微はおでこに乗っているタオルを手に取り、由乃に渡した。


「...緩い。何かしたいなら、もっかい冷やせ...」

「ん、ありがと」


由乃は言われた通り冷やしたタオルを微のおでこに乗せた。

なかなか眠らない微の為に、由乃は微の胸元を手でポンポン優しくリズムよく叩いた。


「...何をしてる」

「小さい頃眠れない時にお母さんとかにされなかった?こうやってると眠れるわ」

「いや、もういい年だから無理だろ」

「やらないよりマシじゃないかしら?」

「普通に気が散るからやめろ」


微は胸元にある由乃の手を握って退けた。

だが退けた後、微は由乃の手を離さなかった。


「微?もうしないから、離しても良いわよ?」

「...そうか」


微は由乃の手を離し、おでこに乗っていたタオルを目の部分まで下ろした。

少しだけ赤くなっている微の耳を見て、由乃はようやく気付いた。


「あ、ごめんなさい。握ってたかったのね」

「...もういい」


微は掛け布団の中に手を隠そうとしたが、由乃に掴まってそれは阻まれた。


「ごめんごめん、こうしてましょう?」

「別に...」

「うん、微は別にしたくないのよね。ごめんなさい、私が手を繋いでいたいの」


由乃は優しく笑ってそう言った。

微はまだ恥ずかしそうで、タオルを目から上にはあげなかった。


微がベッドに着いてから約一時間が経った頃、微は疲れたのか眠ってしまった。


(やっと眠った...)


由乃は繋いでいた微の手を離し、寒く無いように手を掛け布団の中にしまってあげた。


「さてと...」


由乃は立ち上がり、部屋の掃除を始めた。

脱ぎっぱなしの服や下着を洗濯したり、 溜まっていた洗い物などをすること一時間。

その後荷物を纏めて、微を起こすことなく微の家を出た。




由乃が出て行って2、30分ほど経った頃、微が目を覚ました。


「ん...」


微はベッドから上半身だけ起き上がらせ、辺りを見渡した。


(部屋が綺麗になってる...。洗濯物も、干してある)


部屋を見渡して、立とうとしたが気怠くて出来なかったのでまたベッドの上に寝転んだ。


(あいつは...帰ったか...)


微は家に誰もいないことに気付き、由乃が帰った事を察した。

既に外は暗く、たまに家の前を通り過ぎる車の音だけがする。

微は一人暮らしを高校生から始めていて、こうして何度も体調を崩したりもしていた。

今まで特に思った事など無かったのに、何故か今とても微は寂しいと感じた。

それが何故なのか、微は実は見当がついていた。


(あいつがいるから...か)


目を閉じれば由乃の顔が浮かぶ、手に意識を集中すれば、少し冷たい由乃の手の温度が蘇る。


(思った以上に...弱くなったものだな...)


微は落ち込むかと思いきや、そうでも無かった。

何故か悪い気分にはならなかったからだ。


そんな事を考えていると、家のドアを誰かが開ける音がした。

部屋に入って来たのは由乃だった。


「ただいま〜...ってあら、起きてたのね微」

「まぁな。何をしてる」

「家に帰って着替えたり、下着持って来た。今日は付きっ切りで看病しようと思って」

「別に...いや、何でもない」


何かを言いかけてやめた微。それに対して疑問を抱きながらも、由乃は順調に回復している微を見て安心した。

由乃はベッドの上に座り、微のおでこに手を当てる。


「ん、熱は下がってるわね。でもまだちょっと熱いかも」

「まぁ頭は痛くないし、後は寝てれば治る」

「そうね。お腹空いてる?何か作るわよ?...と言ってもがっつり肉料理とかは作らないけど」

「うどんでいい」

「分かった。ちょっと待ってて」


由乃は台所を借りてうどんを作り始めた。

グツグツという音や、野菜などを切る音が台所からする。今さっきまで無音だった家が、たった一人誰かが来ただけでこんなにも騒がしくなる。


微は重い体を持ち上げて立ち上がり、由乃のいる台所へと向かった。


「ごめんなさい後もうちょっとだから待ってて?」

「ん...」


微は由乃の作るうどんを見ながら返事をした。

由乃も火から目を離さないようにしている。

微はふと由乃の顔を見た。由乃は微に見られてることに気付かずにいる。

そして微は由乃の肩に猫のように顔を擦りつけた。


「んぅ...」

「っとと、どうしたの?寒い?」

「んーん...なんとなく...」

「ふふっ、そう?微はたまに分からないわ」


由乃は笑いながらそう言った。微は満足したのかベッドの方へ戻っていった。

しばらくするとうどんが出来上がり、微は食べ始めた。お腹が空いていたのかどんどん鍋の中身は減っていく。


「お腹空いてた?」

「まぁ」

「美味しい?」

「まぁ」

「良かった」


微が食べている姿を見ながら、由乃も自分の分を作っておいたので食べ始めた。



ご飯も食べ終わり暇なので、眠くなるまで由乃と微は部屋にあったDVDを見て時間を潰した。


微はいつのまにか寝てしまっていたので、由乃は静かに布団を敷いた。


(可愛い寝顔...)


由乃は微の寝顔を見て微笑んだ。

そして微の頰にチュッとキスをして、自分も眠りについた。

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