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「会いたかったよ微〜!」
「うるさい黙れ」
「元気ね、相変わらず」
ゴールデンウィークが終わり、微たちは久し振りに学校に登校していた。
マリアとはもちろん学校外では会わないので、随分と久し振りに会うマリアは、やけにテンションが高かった。
「由乃も久し振り〜」
「久し振りマリア。ゴールデンウィークは何をしていたのかしら?」
「仕事〜。撮影とか〜テレビの収録とか〜CMとか〜全然遊べなかったけど、楽しかったよ」
「大変だったわね」
「そ、だから褒めて微〜」
「ウザい」
マリアは微に頭を向けて、撫でる様に促したが、微はそれには全く応じなかった。
学校もすぐ終わり、微と由乃は帰ろうとしていた。
すると、マリアが二人を引き留めた。
「ストーップ!!二人とも〜」
「どうしたの?」
「........」
「今日この後...ちょっと微、止まってよ、ねぇ!」
マリアが二人の前に立ち塞がり、由乃は止まったのだが、微はその横を止まる事なくすり抜けて帰ろうとしたので、マリアは微を力づくで止めた。
「離せ」
「まぁまぁ、話だけでも聞きんしゃい」
「嫌に決まってるだろ。どっか行くならあいつを連れて行け」
そう言って微は由乃を指差した。由乃は首を傾げてどちらでも構わないと言った顔をしている。
「まぁ先ずは内容を聞いてからにしましょう微、ね?」
「...ちっ、とりあえず離せ。そして手短にな」
「あ、ごめんごめん」
由乃の説得もあり、微はマリアの話を聞くことにした。
「今日これからうちに来ない?二人とも」
「マリアの家に?」
「絶対嫌だ。じゃあな」
「えー!何でどうして〜?遊んでよ〜!泊まってよ〜!ね〜って!」
「泊まるの?」
「うん、ダメ?」
「私は別に良いのだけど、微は泊まりは無理よ」
「どして」
「顔見てみなさい」
「わぁ...」
微は今までに無いほど面倒そうな顔をしていた。
「微〜」
「嫌だっつの」
「由乃も良いって言ってるしさ〜」
「俺には関係ない」
「かーすーか〜〜」
どうしても微と由乃と遊びたいが為に必死の説得をしてくる。
微があまりにも頑なにマリアの誘いを断るものだから、由乃が同情して助け舟を足してあげた。
「微、一度くらい良いんじゃないかしら?というか、このままだと最終的にマリアがあなたの家に来るわよ?」
「それは本当にやめて欲しいな」
「でしょ?泊まらないにしても、遊ぶくらいなら良いんじゃない?」
「はぁ...」
微はため息を吐いて、全てを諦めた様な顔をして、
「分かったよ...。ただし泊まらないからな」
と言った。マリアは喜んでぴょんぴょん跳ねた。
「やったーぃ!!」
「良かったわね」
「微と遊べる〜!」
(こいつを見てると、親戚のガキを思い出すな...)
由乃は快く、微はしょうがなくマリアの家へと向かった。
マリアの家に着くと、部屋着姿のエリオがリビングで寛いでいた。
「おかえ...わっ、大所帯だ...」
「ただいまエリオ〜」
「お邪魔します」
「........(ペコリ)」
マリア達の家は、さすが芸能人の家と言った感じで、とても広くオシャレだった。
アンティークな間接照明や、木製のテーブルや椅子、ソファも結構高価そうに見えるし、実際良い値段がするのだろう。
「お洒落なのねやっぱり」
「そうかな?小さい頃からこんな感じだし、思った事ないや」
由乃は家中をキョロキョロ見渡して楽しんでいたが、微はとりあえず邪魔にならない所に突っ立っているだけだった。
「お姉ちゃん、何で先輩がここに居るの?」
「ん?友達だから、呼んだの」
「呼んだって...。お姉ちゃん一応芸能人なんだよ?スクープとかされたらどうするの?男の人もいるし」
「?」
「大丈夫だよ、微だもん」
「微...?」
エリオは初めて聞く名前ではないことに気付き、微の方を見た。
微は自分が会話の中にいる気がして、頭の上にはてなマークを浮かべていた。
(あの人が先輩の言ってた...)
エリオはずっと微の顔を見ているが、微はエリオを一瞥するとすぐに目を逸らし携帯を弄った。
「それじゃあ私の部屋に行こっか」
そう言ってマリアは自分の部屋へと二人を案内した。
マリアの部屋はリビング同様、なかなかお洒落な部屋だった。
「ここが私の部屋〜」
「綺麗ね」
「........」
ついでに微は今のところ一度も言葉を発していない。
「どっか適当に座っててよ、座椅子とかベッドの上でも良いよ〜。私飲み物とか取って来るよ」
「ごめんなさいね、気を使わせちゃって」
「だいじょぶ〜」
マリアが部屋から出て行き、由乃はとりあえず着ていたブレザーと荷物を部屋の隅に置いてベッドを背もたれに床に座った。
微はまだ部屋の隅に立って何をしたら良いかわからないと言った顔をしている。
すると、見かねた由乃が微を呼んだ。
「微、こっちおいで」
「........」
由乃はそう言って微にチョイチョイと手招きすると、微が由乃の方を向いた。
そしてそのまま自分の隣の床をトントンと叩いた。
微は意外にも何の抵抗もなく由乃の隣に座った。
「........」
「意外だわ、もっと抵抗するものだと思ってたけど...」
「ああ...」
「?」
由乃は微の顔をジッと見つめた。微はそんな由乃を一瞥して、すぐにそっぽを向いた。
「...ねぇ、微」
「なんだ...」
「ちょっとごめんなさいね」
由乃は微の頰を触った。
すると、その頰はとても熱かった。
「やっぱり、風邪引いてたのね...!」
「うるさい...頭痛いから叫ぶな」
「何で言わなかったの」
「言えば何とか出来るのかよ...」
「昨日ちょっと寒かったから...。帰りましょう」
「そうしたい...が、悪い...肩貸せ」
その後部屋に来たマリアに事情を話すと、すぐに帰れと急かされ、二人は微の家に帰っていった。




