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微を待っている間、由乃は学校内を散歩して回った。
普段行くこともない様な音楽室に行き着いた。すると、中からピアノと綺麗な歌声が聞こえて来た。
ひょっこりと顔を覗かせて見ると、そこには綺麗な茶髪の美青年がピアノを弾いて歌っていた。
音楽室に一人、気持ちよさそうに窓から入る風に吹かれながら歌っていた。
やがれ歌が終わり、ピアノの演奏も終わった。
そこを見計らって由乃は音楽室へと入って拍手をした。
「っ!?」
急に入ってきた由乃に驚いたのと、気持ちよさそうに歌っていたのを聴かれた恥ずかしさで、どうしたらいいか分からないと言った顔をしていた。
そんな事は気にせずに由乃は素直な感想をその青年に告げた。
「凄くいい歌だったわ。その歌なんて題名?」
「あ...え...?」
「ん?」
「じ...自分で...その、作ったんです」
「自作?」
「は、はい」
青年は恥ずかしそうに顔を真っ赤にしてそう言った。由乃の顔を見れず俯いていると、
「凄いじゃない!自分でって事は歌詞も伴奏も全部?」
「え?あ、はい」
青年は由乃の意外な反応に俯けていた顔を上げ、由乃の顔を見た。
由乃はニッコリと笑って、見返した。
「す、すごいって言われたのは...初めてです」
「そうなの?」
「はい、男のくせにピアノとかってよく言われてました」
「そう?男の人でもピアノは良いと思うのだけど...」
由乃は不満そうにそう言った。
そして由乃は思い出した様に自己紹介をした。
「そうだ、申し遅れたわね。私牧田 由乃」
「あ、僕はエリオと言います」
「エリオ...外国の方?そういえばそれっぽい顔...」
「あ、はい。母親が日本人ではないです。この学校には姉と一緒に転校して来ました」
「転校...。へぇ、何年生かしら?」
「二年です」
「あら、後輩くんだ」
その後、二人は少しだけ雑談を交わしていた。
「へぇ〜お姉さんと一緒に...」
「お姉ちゃんはモデルをやってて...こっちに来た方が色々便利って言って、僕の転校と一緒に来たんです」
「お姉さんはモデルなの?...あぁ、でも確かにエリオくんよく見たらカッコいいわね」
「か...!やめて下さい...」
「ごめんごめん、褒め言葉に弱かったのね。あなたはモデルはしないの?」
「僕はお姉ちゃんほど自信家じゃないんです...」
エリオは制服の裾をギュッと握ってまた俯きながらそう言った。
「先輩は、吹奏楽部とかですか?」
「いえ、違うわよ?ここに来たのは、暇つぶしの散歩の最中に寄っただけ」
「人を...大丈夫なんですか?ここで駄弁ってて」
「そろそろ終わるかしらね...。じゃあ、私はこれで」
「あ、はい。さようなら」
「ええ、ばいばい」
由乃はそう言って音楽室から出て行った。
残されたエリオは、心の中で由乃の名前を呼んでみた。
(牧田 由乃...先輩。変な人。だけど、良い人だ)
エリオはカバンを持って学校を後にした。
流に頼まれて微は、マリアに校内を案内していた。
「あそこがトイレ。あそこもトイレ。あれは...トイレだな」
「もうトイレは大丈夫だよ。トイレマスター」
「誰がトイレマスターだ。ていうかこの校内の設備使う前に卒業するだろ。移動教室は周りについて行けば良いわけだし」
「まぁまぁ良いじゃないの」
マリアはケラケラ笑ってそう言った。
モデルと言うから変に高飛車な奴なのかと思っていた微だが、どうやらそうではないと感じた。
(てっきり我儘な女かと思ったが、話してて何か楽だと感じる...)
微は素直にそう思った。
由乃とはまた違った感じ。
「だからと言って、近くに居たいとは思えないけどな...」
「ん?何か言った?」
「何も」
微はその後数カ所知っておいた方が良さそうな教室などを紹介して終わらせた。
「今日はありがとう。本来は午前中には帰れる筈だったのにね。ごめん!」
「別にいい。大して謝意は伝わらない」
「ん〜微くんさぁ、終始つまらなそうだったのは、私にだけ?」
「全員に対して」
「そか!じゃあ良いや」
校門前まで一緒に向かい、マリアは大手を振って微に別れを告げた。
「じゃーなー!」
「........」
微は顎で早く帰れと促して、自分の帰り道を歩いた。
(面白い奴だったなぁ〜和泉 微!友達になりたいなぁ〜。帰ったらエリオに言おうっと!)
マリアは帰りがけ、スキップする様に歩いた。




