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土曜日の夜、由乃はソファで間接照明の灯りを使って本を読んでいた。
すると3歳くらいの子供が、大きな画用紙を持って歩いてきた。
「かーしゃ」
「んー?どした?」
「おえかきした」
「お〜すごいすごい上手いじゃない」
「えへへ〜」
由乃がその女の子の頭を撫でてあげると、嬉しそうに笑った。
「かーしゃ、とーしゃは?」
「お父さんはもう少しで帰ってくるよ。さっき連絡があったから」
「れんらく...?」
「そ、八重は良い子に待てるかな〜?」
「うん」
八重というのはその女の子の名前だ。由乃が桜のソメイヨシノから名前を取ったという事で、八重も桜の八重桜から取ったらしい。
しばらく待って居ると、ガチャっという音が玄関の方からした。
八重が走って音のした玄関へと走っていった。
「とーしゃ、おかえり」
「ん、ただいま」
とーしゃ。つまり八重のお父さん、由乃の旦那はもちろん、微のことだった。
由乃が遅れて微を出迎えると、微は由乃の方に目を向けた。
「おかえり微」
「ああ」
八重を片手で抱きかかえ、空いている片方の手で荷物を持とうとしたが、由乃に持ってもらい、そのままリビングに向かった。
「とーしゃ、あのね、八重ね、おえかきしたの」
「そか」
「みて?」
「ち、近い近い...」
八重が早く微に見せてあげたくて微の顔に画用紙を押し付けるが、そのせいで全く絵が見えない。
微は一旦離して、じっくりと見てあげた。
「これ、俺たちか?」
「うん、とーしゃとかーしゃと八重」
「上手いんじゃないか?」
「しししっ」
微がそう褒めると、由乃がジェスチャーで頭を撫でてあげる様に促した。
微は八重の頭を撫でてあげると八重はもっと嬉しそうに笑った。
「微、ご飯は?食べてきたの?」
「まだ。悪い、連絡してなかったな」
「大丈夫よ、今日はカレーだから」
「そうか」
由乃がキッチンでカレーを温めていると、微が冷蔵庫の麦茶を飲みにやってきた。
ついでに八重はテレビのアニメに夢中で、二人を見ていない。
「........」
「ふふっ、相変わらず甘え下手ね」
麦茶を飲みながら、背中合わせで由乃に寄りかかった。空いている方の手は、由乃の手の小指を摘んでいた。
「疲れた?」
「ん...」
「お疲れ様、今日も頑張ったわね」
「ん...」
由乃は火を一旦止めて、微の方に振り返り両手を広げた。そして首を傾げながら、
「おいで?」
と、優しく微笑んだ。
微は一旦躊躇ったが、麦茶を置いて由乃の肩に顔を埋めた。
由乃は微の首に手を回し、八重にした様に頭を撫でてあげた。
微は抱き返しはしなかったが、少しだけ体重をかけていた。
「...少し、疲れた...かも」
「偉い偉い」
「...もういい」
「そう?」
由乃は数少ない微の甘えモードがすぐに終わった事に物足りなさを感じた。
だが、八重が二人に気付いてしまった。
「とーしゃとかーしゃ、らぶらぶ?」
「ら...!どこで覚えたそんな言葉...」
「あらあら、ふふふっ。八重もおいで」
「うん!」
八重は微と由乃の方へと小走りでやって来ると、由乃が抱き上げた。
そして、微の目の前に持ってきた。
「ほら、八重もお父さんをなでなでしてあげて?」
「...おい」
「とーしゃ、やえになでなでされるの...や?」
「...や...やじゃない...」
微の耳は赤くなっているのに由乃は笑いを堪えるのに必死だった。
微は八重が頭を撫でやすい位置まで持って来て好きにさせた。
「とーしゃのかみのけ、すき」
「...あそ」
「素直じゃないわね」
由乃はクスクスと笑った。
八重は小さなその手で、微の頭を撫でてあげた。微は八重を由乃から受け渡され、夕飯が用意されるまで八重と一緒にテレビを見て時間を潰した。
「はい、出来たわよ」
「ん」
「とーしゃ、ごはんたべてない?」
「ああ、今から」
「八重がたべさせたげる」
「いや、大丈夫」
「やらせてあげて、私もされたから」
微は小さくため息を吐いて、八重にスプーンを持たせて、自分は口を開けた。
八重は喜びながらスプーンにカレーを救い、微の口元に持ってきた。
「あーん」
「ん...」
「おいし?」
「ん、うまい」
口の中に入ったカレーはルーだけで、ご飯は全く掬えてなかったが、微は気を利かせてそう言った。
そのおかげで八重は嬉しそうだった。ついでに由乃は横でクスクスと笑って楽しそうだった。
微は風呂に入ってサッパリしたら、眠くなってきたので寝る事にした。
大人用ベッド二つ分に微と由乃が眠り、その間に八重がすっぽりと入り眠った。
八重は微の腕を枕に、由乃は伸ばされた微の手を握って安心したように眠る。微は結局最後まで起きていたが、その二人の寝顔を見ていたら、自然と眠ってしまった。
ちょっとだけ未来の話をしました。
如何でしたでしょうか?これから先、いくつかこういった話を書いていきたいと思っております。
これからもよろしくお願いいたします。




