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微は高校二年生で、一人暮らしをしていた。
親が海外で仕事をしているのだが、微は日本の方が安心だという理由で日本に残って一人暮らしをしている。
だから今は学校近くのアパートを借りて一人で自炊して暮らしている。
たまに親から国際電話で電話がかかってくるので、それで成績や学校での調子を教えたりしている。
ついでに両親は微の性格をよく分かっているので、友達がいないことも把握済みだ。
『あ、もしもし?微〜?』
「ああ」
『無愛想ねぇ〜相変わらず。どぉ〜?二年生になって、何か変わった〜?』
「俺が変化を嫌う事を知ってるくせに、そういうことを聞いて来るか」
『冗談よぉ〜。別に無理に周りや私の言ったことに合わせろとは言わないけど、友達の一人くらい作っておきなさいよ〜?』
「はいはい」
母親のその言葉に、微の頭の中に由乃の顔が浮かんだ。
(何が友達だ...)
微は持っていた携帯をベッドへと投げた。
朝、教室に着くと、既に由乃が来ていた。
微が荷物を机に置いた音で微が来たことに気付いた由乃が振り向いて来た。
「おはよう、微」
「ああ...」
「眠そうね」
「朝だからな」
「朝は弱いのかしら?」
「さぁな」
そこから流れる様に午前の授業を終えて、お昼休みの時間。
「微、一緒にご飯を食べましょ」
「一人で、食え」
「微、コンビニご飯?」
「それを聞いてどうする」
「栄養が偏るわ。私のおかず少しあげる」
「おい俺の机で広げるな」
由乃は微の言うことなど無視して微の机の上に自分の弁当を広げた。
由乃の弁当はなかなか栄養バランスが良さそうで、美味しそうだった。
だが微は朝コンビニで買ったおにぎりと野菜ジュースを食べた。
「はい、微」
「...いらん」
「美味しいわよ?」
「たとえそうだったとしても、その受け取り方はしない」
由乃は箸で取ったおかずを微の目の前にもって来た。空いている方の手でおかずを机に落とさない様にしながら。
俗に言うアーンというやつだった。
「ちょっと、早くしないと溢れそう。それにこの体勢辛いわ」
「ならやめればいい」
「微が食べるまでやめないわ」
「ならずっとそうしてろ。机にこぼすなよ」
微は野菜ジュースを飲みながらそう言うと、由乃がジッと微の目を見つめる。
ずっと視線を感じていると、我慢の限界を感じたのか微が反応した。
「いつまでそうしている」
「微が食べるまで」
「いい加減にしろ、周りの奴らが見始めた」
「微が早く食べていれば、ここまで注目されなかったわ」
「お前...自分が何やってるか分かってるのか?」
「ええ、食べて微」
「〜〜〜!!ちっ!」
微はバクッと由乃の差し出したおかずを食べて、由乃にこれで満足かと睨んだ。
由乃は満足そうに微笑んでいる。
「美味しい?微」
「普通だ...!」
微はそう言って教室から出て行った。
クラスメイトはただただ自分たちのご飯を食べることだけに集中した。
というかするしかなかった。
一方その頃、教室から出て行った微は、学校の庭にあたる場所にあるベンチに座ってイライラを抑えた。
(クソがっ!なんなんだあの女...!)