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『風邪引いた。今日は休むわ』


という由乃のメールを読んだ微が最初に思った事は、心配ではなく安堵だった。


(今日は静かに過ごせるな...)


彼女が体調不良で休んでいると言うのに、全く心配しない甲斐性無しの彼氏がこちらでございます。


微が教室で一人で携帯を弄ったりしながら過ごしていると、結構活発なクラスの女子が話しかけて来た。


「やっほ!いずみん!」

「いずみん...?」

「今日由乃ちゃん休みじゃん?どうしたの?」

「風邪」

「へぇ〜いつも一緒にいるから寂しいんじゃな〜い?」

「そうでもない」


微はその女子の方は一切見ずに、携帯の画面だけを見て答えて行く。

そうしていれば大抵の人はつまらないと感じて立ち去って行くのだが、目の前の女子のように空気の読めない人は、永遠と話しかけ続けてくる。


「いずみんってさぁ、やっぱ由乃ちゃんと付き合ってんの?」

「何故そう思う?」

「ん〜だっていつも一緒にいるし〜何だかんだ、私たちに対する対応と由乃ちゃんの対応が違って見えるから!」

「そうでもない」


微は自覚が無い様だが、由乃以外の人と話すときは淡々と、聞かれた事を答えるだけだったり、目すら合わせない。

対して、由乃と話すときはほんの少し空気が柔らかくなったり、ちゃんと目を見て喋ってくれる。


「ほんと、態度変わるよねぇ」

「お前...意外と見てるんだな」

「由乃ちゃんといずみん見てると面白いんだも〜ん」

「そうかよ...」


微は離れないと察して、トイレに行こうとすると、その女子が最後に一言言ってきた。


「そうだ、お見舞い。帰りに行ってあげなよ〜」

「余計なお世話だ」


微は睨みつけてそう返した。だいぶイライラがピークだった模様。

いつもはああいうのは由乃が捌いているで、微は逃げるしか出来なかった。



放課後になり、微は帰ろうと下駄箱に行くと、久坂がいた。


「あ...微くん...」

「どーも」

「今帰り...ですか?」

「はい」

「私も...今帰り...なんです」

「そうですか、さようなら」


微は一人で歩き出すと、制服の裾を掴まれ、その足は止められた。


「あ、あの...!」

「何ですか」

「いっ...、一緒に...か、帰りません...か?」

「何故?」

「何故...?あ...えと...微くんと...一緒に帰ってみたいから...です...」

「はぁ...」


微は溜息を吐いた後、


「一緒には帰りません。ただ、付いて来たければ好きにすればいいです」

「あ...ありがと...」


微が歩く隣で、久坂がちょこちょこと一生懸命付いてくる。

歩幅が明らかに微の方が大きいのに、全く合わせようともしないので、久坂は少し大変そうだった。


「微くん...歩くの...早いね...」

「大変なら付いて来ない方がいいですよ」


微は歩くスピードを緩める事なくそう言った。

家への分かれ道まで行き着くと、微は立ち止まった。


「じゃ、さようなら」

「えと...ここ、そっち...ですか?」


微はいつもの自分の家の方ではなく、由乃の家がある道を選んだ。

理由は、御察しの通りだ。


「まぁいつもはそっちですけど、今日はこっちに用があるので」

「ど、どうして...でしょう...?」

「どうしてでしょうね?」

「そういえば...いつも一緒の女の子...いません...ね」

「...それが?」

「もしかして...それと関係がある...ですか?」


久坂は妙に察しがよく、微はそれに分かりやすくイラついた。それはもう眉間にガッツリとシワが寄るほどに。


「それを知って、あなたに何か迷惑をかけますか?」

「い...いえ...」

「ふん...」


微は見切りをつけて一人、由乃の家の方へ歩いて行くと、久坂が微を呼んだ。


「微くん!」

「........」

「私...微くんが...好きなんだと思います...!だから...その...」

「じゃあ、迷惑です」


微はそう吐き捨ててまた歩き出した。

久坂はあっさりと切り捨てられ、呆然と立ち尽くす事しか出来なかった。

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