27
修学旅行が終わって一ヶ月。つまり、由乃と微が付き合い始めて一ヶ月目がやってきた。
「微、私達が付き合い始めて今日でちょうど一ヶ月なわけだけれど、何かした方がいいかしら?」
「何かしたいなら、勝手にやってろ。俺は帰って寝てる」
「それじゃ意味無いわ。せっかくの一ヶ月記念なのに」
「月ごとに関係が続いた事を祝ってくのか?どれだけ暇なんだ」
「むぅ...」
由乃は顎に手を当て少しだけ考え込んだ。
「まぁ微がそういう事する人じゃないのは知ってるし。良いわ、でも一年続いたら流石にどこか行きましょうね」
「もし仮に、万が一、続いたとしたらな」
「ネガティブね...」
「他人との付き合い方なんて、そんなもんだ」
「ずっとそうやって来たの?」
「ずっとそうやって来た。だから、今お前とこうなってるのは、自分でも意外だ」
微はそう言って由乃を見つめた。
由乃はそう言われて嬉しかったのか、微に笑いかけた。
「じゃあ、期待に応えないとね」
「好きにしろ」
由乃は胸の前でガッツポーズを作った。微はそんな由乃を見て溜息を吐きながら、飲み物を買いに自動販売機のある裏庭に向かった。
誰もいなかったので、何にしようかゆっくりと考える事にした微は、お金を入れずに自販機を見つめていた。
するといつの間にか後ろに生徒が立っていた。
「あの...買わない、ですか?」
「っ!...ああ、すみません。先どうぞ」
微は後ろに立っていた女生徒を先に通した。
上履きの色から判断すると、微の一個上の様だった。
妙におどおどしている生徒で、微が一個下なのが分からないみたいだ。微はそんな先輩を横目で睨む様に見てしまった。
「わ、私の顔に...何か付いてますか?」
微の視線に気付いていた様で、その女生徒は微にそう言った。
だが微は持ち前のソロプレイスキルで分厚い心の壁を気付いた。
「別に」
「そう...ですか」
女生徒は小さいので、微の顔を見上げる様にジッと見つめて、何かに気付いた様な顔をした。
そして、気にせず飲み物を選んでいる微に話しかけた。
「微...くん?」
「あ?」
急に見知らぬ先輩から名前を呼ばれた微は、その先輩の顔を見つめた。もしかしたらどこかで会っている気がしたからだ。
だが、どうしても分からず諦めた。
「私の顔は知らないと思います...。私が一方的に見てただけなので...」
「誰?」
「私、三年の久坂 亜美って言います...。図書室でいつも本を読ませていただいてる...です」
「へぇ」
久坂は怯える様に微にそう言った。
久坂はいつも放課後など空いた時間に図書室に行っては、大人しく本を読んでいる様な生徒だった。
図書委員である微の顔と名前は、よく由乃と話しているのが耳に入ってきたかららしい。
「だから俺の名前を...」
「はい、あの...ごめんなさい。盗み聞きみたいに...」
「別に。図書室で喋ってた俺たちが悪い」
「い、いえ...。微って名前は...どう書く...ですか?」
「微妙の微ですけど」
久坂は手のひらに微の漢字を書くと、納得した様に首を縦に振った。
「綺麗な名前だと思う...です」
「そりゃどうも」
微はさして嬉しくも無さそうにそう応えた。
チャイムが鳴ったので、二人は自分たちの教室に戻る事にした。
「じゃ、じゃあ...また図書室で...」
「はぁ...」
微何を言ってるんだ?といった顔をしながら、どう返事をすればいいか分からずそんな応え方になってしまった。
微はその後すぐに久坂に背を向けて、自分の教室の方へ歩いて行った。そして久坂は、その背中をズッと見つめ続けた。
「微...くん」
微は教室に向かっている最中に久坂について少しだけ思い出してみた。
が、
(まったく、記憶に無いな。そもそもあの図書室に人が入って来た事なんてないんじゃないか?)
微には久坂の存在は今日初めて知ることになった。
教室に入ると、まだ教師は来ていなかったらしく、少し安心した。
隣にいた由乃に久坂について聞いてみた。
「なぁ、あの図書室に人がいたらしい」
「当たり前じゃない、何言ってるの?」
「知ってたのか?」
「知らなかったの?何人かはいるわ。ついでに、一つ上の気弱そうな女子がいつもいるわ」
「多分だが、さっきそいつに会った」
「あら、話しかけたの?微が?冗談でしょう?」
由乃は信じられないといった顔をして微を見てきた。が、微はちゃんと状況を説明した。
「いや、あっちから。図書委員なのを知ってたみたいだ」
「そりゃあ、毎日いるみたいだし。そう、あの人微に喋りかけて来たのね」
「まぁな。俺が二年なのを知らないのか、ずっと敬語だったが」
「ああいうタイプはそういうの気にしないわよ」
由乃はどこか遠い目をしていたが、微にとってそんな事はどうでも良く、とりあえず早く帰りたいとか考えていた。
新キャラ!




