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由乃と微が付き合って、初めてのデート。その時と場所は、修学旅行中の自由行動にて行われた。
「微、この自由行動をデートとしましょう」
「デートって...修学旅行中なんだが」
「いいじゃない、ね?」
「まぁ構わんが」
微は由乃の隣をゆっくりと歩いた。置いていかれないように、置いていかないように、確かに横にいると思わせる様に。
「微、歩くの遅くなった?」
「別にお前を置いて行っても良いんだがな」
「もしかして私に合わせてくれてるの?」
「...悪いか?」
「んーん、嬉しい」
由乃がニコッと笑うと、由乃は何とも言えない顔をしてそっぽを向いた。
「先にお土産とか買っていっちゃおうかしら。それでバスに荷物置いちゃいましょう?」
「かさばるしな」
「うん」
微と由乃は二人でお土産屋さんに入っていった。
「面白いものがいっぱいあるわね」
「そだな」
「あ、この帽子とか微に似合いそう」
由乃は掛けてあった帽子を微に被せてみた。
微は鏡がないので似合ってるかどうかも分かっていない。
「んー微妙だったわね」
「なら被せるな」
「大きかったのね、微頭小さいから」
「お前のが小さいだろ」
「そう?」
微と由乃はそんな何でもない会話をしながら買い物を続けた。
(楽しいなぁ...)
由乃は心の中でそう感じた。
微は今まで由乃の何気ない会話をどうでも良さそうに聞くか、早く会話を終わらせようとしていた。
だが今はそうではなく、ちゃんと続く様に会話をしてくれている。
「ありがとう、微」
由乃は少しだけ先を歩いている微に向かって小さくそう呟いた。本人に直接言うと、きっと恥ずかしがってしまうから。
その甲斐あって微には由乃の言葉は全く届いていなかった。
「何してんだ?行くぞ」
「ええ、今行くわ」
由乃は嬉しそうに微の横へと走っていった。
「これくらいで良いかしらね」
「意外に少しだな」
「うち、お父さんとお母さんだけだもの。これくらいで十分よ」
「あっそ」
意外にテキパキとお土産を選べたので、まだ全然時間があった。
なので、由乃が近くの海に行きたいと言うので市営バスで向かう事にした。
「わざわざバス乗ってまで行くか普通」
「良いじゃない、滅多に来れないのだから」
「にしても...まぁ良いや」
微は全てを諦めた様な顔をして流れる風景を眺め始めた。
「微は、海好き?」
「行くのはいいが、入るのは好きじゃない」
「どうして?」
「人が嫌だ。あと日焼けすると風呂が嫌になる」
「理由が女子みたいで可愛いわね。要するに日焼けしたくないんでしょう?」
「そうとも言うな」
バスを乗り継いで20分ほどで海についた。
サラサラの白い砂浜に青い海と空、ロケーションは最高だった。
「涼しいな」
「そうね。それに綺麗だわ、カメラとか持って来れば良かった」
「携帯で十分だろ」
「そうだけど、こういうのは一眼レフとか良いカメラで撮ってみたいわ」
「金貯めろ」
微は波打ち際の方まで歩いて行き、寄せては返す波を眺め始めた。
由乃はその隣に立ち、同じ場所を見つめる。
「ねぇ微、私のどこを好きになってくれたの?」
「あ?言えるかそんなこと」
「ずっと好きでいてもらうには、そういうことも知っておかないとと思って」
「言わない」
「むぅ...」
由乃は頰を膨らましてむくれると、微の肩に頭をグリグリと押し付けてきた。微はその行為を嫌そうに突っぱねた。
「ウザい」
「だって...」
由乃は上目遣いに微を見つめる。
微は溜息を吐いて、その重い口を開いた。
「...真っ直ぐ、気持ちを伝えて来るところ...」
「ほぉ」
「キモ...。この話は終わりだ」
微はそのまま波打ち際を歩いて行ってしまった。
海の方から潮風が吹いてきて、微の髪を揺らす。由乃は微のその姿を写真に収めてみたくなり、すぐに携帯のカメラで撮影した。
パシャっというカメラのシャッター音に気づいた微は、由乃の方を振り向いた。
「何撮ってんだよ」
「私の彼氏さんがあまりにもカッコよくて」
「ウザ...」
「ふふふっ」
微はまた由乃に背を向けて歩き出した。
由乃は微の元へと走り寄り、微の横を歩いた。
「微、私微が大好きよ」
「何だ急に...」
「どうしても今伝えたくて」
「あっそ」
「微は?私のこと好き?」
「...嫌いじゃない」
「微らしくて良いわね。その返し」
「帰るぞ、腹減った」
「うんっ」
こうして二人の修学旅行は幕を閉じた。




