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初の二話同時掲載です

全クラスが大食堂に集まってバイキングを食べる事になった今日の夕飯。

微は好きなものとか野菜とか適当によそってそそくさとこの空間から抜け出した。


(トイレって言って出てきたが、鍵を忘れたな...)


部屋の班長がルームキーを持っていたのを忘れて出て来てしまった微は、路頭に迷った様にホテル内を散策した。

そこである事を思いつき、サービスカウンターに向かった。


「あの、すみません。本日こちらに宿泊させて頂いている者なのですが...」

「はい、どうされましたか?」

「ちょっと時間を持て余してまして、どこか散歩などに良さそうなルートなどはありますか?」

「散歩、ですか...。少々お待ちください。いくつかあるので...」

「お願いします」


カウンターにいた女性は奥の方へパンフレットを取りに行ってしまった。

こういう時の微は意外とちゃんと敬語を使えるし、社交性がある。ソロプレイとはいえ、常に他人を遠ざける訳では無いのだ。

そしてあえて学生である事を伏せていく事で、学校側に無断で抜け出した生徒がいることを知らせないための予防も怠らない。見た目が大人っぽい微だから出来た芸当だ。


「お待たせしました。こちらなど星空がよく見える(ひら)けた場所に出ることが出来ます。山の様ですが、ライトなどを持って行けば大事無いかと...」

「星空...良いですね」

「はい、満点ですよ。ただ比較的暖かいこの地でも夜は冷えますので、暖かい格好をして出掛けた方がよろしいかと」


カウンターの女性が微の格好を見てそう言った。微の今の格好はスウェットのズボンに薄い長袖一枚という寝巻きの格好だった。


「よろしければ上着などをお貸ししましょうか?」

「いえ、自分のを持って行きます」

「そうですか。気を付けて行ってらっしゃいませ」


微は携帯を取り出して流に電話をかけた。

すると意外とすぐに電話に出た。


『どうした?』

「流、今どこにいる?」

『喫煙所だが?...まさか食堂にいないのか?』

「ああ、今からどこか散歩しに行ってくる。寒いから上着貸してくれ」

『はぁ...。お前はもうちょっと協調生というものをだな...』

「今更だろ」


微は喫煙所にいる流と合流して上着を借り、散歩へと出かけた。

すると、出口辺りで微の名前を呼んだ者がいて、微のその足は止められた。


「微」

「ん...?何だお前か」


呼んだのはもちろん由乃だった。

由乃も食堂から出て行ったのだろうが、奥にトイレのマークがあるところを見ると、トイレのために一旦出て来たといったところだろう。


「どこかへ出かけるの?食堂にいなきゃいけないじゃない」

「抜け出すことは流に教えてある。点呼の時間には帰ってくるさ」

「そう...」

「ああ」


由乃はそう言って俯いて何かを考えている。

微はそのまま無視して外へと歩き出した。


「行くぞ」

「え?」


だが今回は、そうしなかった。

由乃の手を握って、微は携帯の明かりを使って山へと登って行った。


「ちょっ...!微!私戻らなきゃ...」

「知るか」

「知るかって...」


由乃の言葉に一切聞く耳を持たない微はどんどん山を登って行って、遂におすすめと言われていた星空の見える開けた丘に到着した。


「はぁ...!はっ...!ちょっと...休憩させて...」

「はぁ...はぁ...」


由乃と微は止まることなく山を登って来たので、息が切れてしまっていた。

そして息を整えたところで、由乃は木製の椅子の様な場所に座り込んだ。

微は星空を眺めて満足そうな顔をしている。


(楽しそう...)


由乃が思わずクスクスっと笑うと、それが聞こえたのか微が振り向いて来た。


「........」

「........?」


微はジッと由乃を見つめていたので、由乃は不思議そうに首をコテンっと傾けて見つめ返した。

すると、微は自分の着ていた上着を由乃の頭の上に乱雑に被せた。


「わっ!?何?急に」

「........」


微は被せた後でもその上着から手を離すことなく、由乃の顔が見えない様に隠した。

由乃は何が怒っているか分からず、ただ慌てた。


「ちょっ...、微?上着貸してくれるの?なら離してくれないと着れないわ」

「........」


微は一向に黙ったまま、由乃の顔を隠し続けた。そして、小さく呟くように喋った。


「お前は...ってるのか...?...を」

「え?ごめんなさい、何て言ったの?」


由乃は聞き逃してしまったので、微に聞き返した。


「お前は、知ってるのか?俺を」

「え?どういうこと?」

「さっきお前は、俺を知ってるって言った。なら俺がどういう奴なのか教えてくれ...」

「微...?」


微から出て来る声と言葉とは思えず、由乃は異常であることを察した。


「俺は、今までどうだった?一人でしっかりと生きられていたか?俺はそのつもりだった。事実誰にも頼らずに勉強もして来た、家事もこなして一人暮らしもしてる」

「........」

「ただ最近、そうじゃなくなって来た気がする」

「そうじゃなくなって...?」

「お前が俺に構い続けて来て最初の方はお前を遠ざけていれば離れると思った...。なのにお前はしつこく俺の後ろを付いてきた。どれだけ早く走っても、当たり前のように付いて来る」


心なしか微の手が震えてきている様な気がしている由乃。だが、しっかりと耳を傾け、微の声を聞き漏らさない様にした。


「お前に会ってから俺は...俺は弱くなるばかりだ...!!後ろにいて俺を追いかけていたはずのお前が、いつのまにか隣にいて、今は俺の前を歩いてる...!お前一体なんなんだよ!!?」

「微...」

「簡単に人に好きとか言って来るし、平気で俺の部屋に泊まるし、笑顔とか...向けてんじゃねぇよ!優しくするな!笑いかけるな!俺のためにとか、迷惑なんだよっ!!」

「ごめん...」

「怖いんだ...。今までずっと一人だったのに、お前が隣から居なくなって前を歩いてて、手を伸ばしても届かないところまで離れている...。そう考えたら胸のあたりが凄く...凄く痛いんだ...!」

「........」

「無くす事は怖くない...。本当に怖いのは無くしたものがもう二度手に入らない事が、俺は怖くて仕方がない...!」


微の手も声までもが震えている。

由乃は手探りで微の手を探し当て、握りしめた。

その手は少し濡れている。それが微の涙によるものだということはすぐに分かった。


「いっそお前に会わなければ良かった...。こんな感情を持つ事になるのなら...!」

「微、聞いて?」


由乃はスッと立ち上がり、上着を微の肩にかけた。

そして両手でそっと微の顔を包み込み、しっかりと目を見つめた。


「大丈夫よ微。私はまだここにいるわ。ごめんね?少し離れすぎてしまったわ。大丈夫、呼んだら必ず戻って来るから」

「........」

「微は、私が微に恋情を抱いていたなら、微は私を遠ざけると言ったわね」

「ああ...」

「それは、もうこれ以上弱くなりたくないから?私に頼ってしまう事で、私無しじゃ嫌だと思ってしまうと察したから?」

「...ああ」

「ふふっ、馬鹿ね微」

「なんだと...」

「一人より二人の方が強いに決まってるじゃない」


由乃はニコッと笑ってそう言った。

微は笑顔と言葉を聞いて、目を見開いた。


「微、私は微に色々な物を見せると約束したわ。気付けばまだ全然見せられてないじゃない」

「........」

「なのに、また遠ざけようとなんてしないで?...まぁ私が先に遠ざけてしまったのだけど...」

「どうしてだ...?」

「微に嫌われたくなかったのよ。これ以上近づいて、微に嫌われるくらいなら、このまま情が消えるのを待とうと思ったの...。結果的に微を困らせてしまったわね、ごめんなさい」


「まぁ消えるわけないのは分かってたのだけど...」と言いながら由乃は微のおでこに自分のおでこを合わせた。


「そういえば、大事なことを伝えてなかったわね」

「........?」

「大好きよ微。愛してるわ」

「...何言ってんだ」

「あら、気持ちは言葉にしてこそよ?ほら、微は?私のこと好き?」

「うるさい...。分かってるだろ」

「ちゃんと言葉にして頂戴?ね?」


由乃は完全に面白がっていて、微はその由乃に思い通りにされるのが嫌で、必死の抵抗をしていた。


「...どこにも行くなよ」


微はあまりにも小さい声でそう言った。そのせいで由乃には届いておらず、聞き逃した由乃はもう一度言ってくれるよう頼んだ。


「え?何て言ったの?聞こえなかった」

「うるさい、さっさと帰るぞ」

「え〜?なんて言ったのよ?微!」


こうして二人は暗い夜道を帰っていった。

月明かりが優しく二人を照らし続けた。

ということで、無事二人が付き合う事になりました。

今までずっと読んできてくれた読者の皆様、誠に有難うございました。

感想などを送ってくれた方やお気に入り登録してくれた方、例えそうでない方でも、読んで楽しんでくれた事が何よりの励みになります!


次回からは付き合ったからこその試練や、二人のイチャラブなどなどなるべく期間を空けずに書いていきたいと思います。乞うご期待。(新キャラの予感も感じておいてくださいな...!)

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