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もうすぐ冬休みが来るということで、クラスメイトたちは盛り上がっていた。
はずだったのだが...。
「数学のテストを返す。出席番号順に取りに来い」
流がそう言うと、出席番号一番の生徒から順番に教卓にいる流の元へと集まり、色々な表情をしていた。
そう、今週は先週終えたばかりの期末テストの返しの週で、なかなかストレスが感じられる日なのだ。
微も取りに教壇に向かうと、流がボソッと微に耳打ちした。
「良い結果じゃないか。頑張ったのか?」
「別に、流の授業は眠れないからな」
「なるほど、嫌でも内容は頭に残っていたか」
「まぁ、聞いてなくても出来るがな」
「ついでに牧田はお前と同じ点数だぞ」
「だからなんだ」
微はさっさと丸つけされた回答用紙を流から奪って自席についた。
学校も終わり放課後、いつもの様に由乃と微が一緒に帰っていた。
「微、テストどうだった?」
「別に普通」
「数学のテスト、私と同じ点数らしいわね」
「流から聞いたのか...。まぁそうらしいな」
「嬉しいわ。微と同じ点数」
「何言ってんだお前」
微と由乃は分かれ道で分かれた。
微が一人で家に続く道を歩いていると、由乃が後ろから呼びかけた。
「あ、そうだ。微!」
「........?」
「明日、楽しみにしてるわ」
「...何の話だ?」
「25日よ、約束したでしょ?」
「........ああ...」
「ふふっ!」
微は由乃に借りがあって、流への誕生日プレゼントのお金を一緒に払う代わりに、クリスマスに二人で出かける事を約束した。由乃がその事について言っている事に微はようやく理解した。
微は家に帰ってから、ふとカレンダーを見た。
(クリスマス...だったのか)
最初約束した時、何故25日だったのか疑問だったが、由乃がクリスマスに出掛けたかったのを今やっと理解した。
世のカップル達がこぞってイルミネーションやら高いレストランを予約する中、微はどうやって時間を潰すかを考えた。
(イルミネーション行きたいって言ったら、...まぁ最悪そこら辺の家のチカチカしてるもん見せれば良いか。高いレストランは...ファミレスもある意味高いっちゃ高いし)
だが流への誕生日プレゼントを買って貰ったのも確かで、微はそれが少しだけ引っかかっていた。...本当に少しだけ。
そんな事を考えていると、流が微の家にやって来た。
「微、今日泊めてくれ」
「ん」
「夕飯は?何か作ろうか?」
「別に良い...」
「何か考え事か?らしくないな」
「別に...」
微は窓付近に座り込んで、空を見上げた。
少しだけ曇っていて、見ていてもあまり楽しくはなかった。
「何かあったのか?悩みなら聞くぞ」
「悩み...」
流が優しくそう言って来たので、微は少しだけ由乃のことについて話した。
「例えば...、借りのある奴に借りを返すとする。それで、どこか出掛けてくれって頼まれたら、その出先は俺が決めなきゃなのか?」
「まぁ、あっちが決めるならただ付き合わされるだけだからな」
「そうか...」
「何だ?牧田にどこか連れて行ってくれと言われたのか?」
流は濁していた微の言葉をあっさりと翻訳して全貌を明らかにさせた。
「なっ...!う...まぁ...あいつ、なんだけど...。改めて言われると...イラつくな...」
「良いじゃないか。どんな借りがあるか知らないが、楽しませてやれ」
「俺にそんな事...」
「お前が良いと牧田が言ったのだろう?なら出来るさ」
「改めて思うが...あいつ面倒くさい」
「の割には、ほとんど言う事を聞いている気がするが?」
「...気のせいだ」
「ふふふ、微は優しいな」
流はそう言って微の頭を撫でた。
「そういえば、誕生日プレゼント嬉しかったぞ。ありがとう」
「ああ。調子はどうだ?」
「良いなあれ、便利で」
「それは良かった」
「そうだ、今日はアレでオムライスを作ってやろう。今取りに行くから待ってろ」
「材料は?」
「後で買いに行こう」
「その言い方は俺も一緒だな」
微は溜息をついて出かける準備をした。
「どうせ車だろう?なら俺も付いて行って買い物も一緒に済まそう」
「ん、悪いな」
「別に良い」
微と流は二人で近くのスーパーに車で向かい、買い物を始めた。
「足りないのは、玉ねぎ、人参だけだったか?」
「ああ、後鶏肉な」
「何かお菓子とか買うか?」
「何故?」
「何となく思っただけだ」
「あそ」
二人でカートを押しながらデパート内を見回って行き、目的のものをカゴに入れていく。
「微、さっきの話の続きだがどこに連れて行ってやろうとか決めているのか?」
「いや...決めてないが」
「女の子はそういう事に敏感だぞ?」
「だから?」
「だから、場所選びは重要だぞ。変なところ連れて行くと離れてしまう」
「好都合だ」
「おいおい、彼女だろう?大事にしてやれ」
「彼女なわけないだろ、何言ってんだ流」
微は足を止めて流にそう言った。
流はてっきり二人が付き合っていると勘違いしていたみたいで、微のその態度に驚いていた。
「何だ、クリスマスに二人で出かけると言うからてっきり...。違うのか?」
「違う」
「というか、牧田はそのつもりなんじゃないか?」
「そんなわけないだろ。大方クリスマスのくだらない風潮に身を投じたいが為の俺と出かけろって事だろ」
「そんな理由で牧田はお前を使わないと思うがな...」
「どっちにしろ迷惑な話だ」
「でも付き合ってやるんだろ?」
「借りがあるからな。それだけの理由だ」
微はそう言って鶏肉を選びに行った。
(手強いな...。大変だぞ牧田)
流は心の中でそう呟きながら、見守ることにした。




