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「おまたせ」

「ん」


由乃は街に出かける為、少しおしゃれな格好で外へと出てきた。

微を待たせてはいけないと少し急いだのか、若干息が上がっている。


「行くぞ」

「うん」


微と由乃はバスを使って街まで出かけた。

空いている席が一つあったので、由乃が微に席を譲った。


「座ったら?」

「別にそこまで遠いわけじゃないし」

「そう?なら良いのだけど」

「お前が座れば?」

「私は微と一緒がいいの」

「意味分からない」

「そうかしら?」


由乃はクスクスと笑った。


しばらく話をしながら過ごしていると、目的の街のバス停に着いた。

降車して二人は、由乃の行きたいと言っていたお店に向かうことにした。


「服屋...かぁ」

「何故露骨に嫌な顔を...?」

「服屋の店員のあの、話しかけるのが当たり前みたいな風潮やめて欲しい」

「あー...確かに微は苦手そうね」

「目があっただけで寄って来てあーだこーだ好み聞いて来て、愛想笑いの嵐。服買いに来て疲れるってあり得ないだろ...」

「私の近くにいなさい。あと不機嫌オーラ全開で立ってなさい」

「そもそも店に入るという選択は間違いじゃ...」

「それはダメよ」


二人は女性服の店に入って由乃の服を選ぶ。

由乃は少し楽しそうに服を見て回ってるが、微は果てしなく退屈そうな顔をして由乃の後ろをついて回った。


(少し犬っぽい...)


心の中でそう思いつつ、ニヤける顔を必死に隠しながら由乃は服を手に取って体に合わせて微に見せた。


「どう?私に似合うかしら?」

「知るか」

「微の好みはどんな感じなのかしら?」

「自分の好きなやつ着れば良いだろ」

「でも微の好みも知っておきたいのよ」


微は何となく目についたマキシ丈のスカートを指差した。


「この中だったら、まぁアレだな」

「マキシ丈のスカート?微はそういうのが好きなの?」

「別に、ただ目に入っただけ。短いよりは長い方がいいな」

「そう...じゃアレを買いましょう」

「は?目的はアレじゃないだろ?」

「微の選んでくれた服だもの」


由乃はそう言って微の選んだ服を手にとって、サイズを確かめるために試着室へと向かった。

微は試着室の横の壁際で突っ立って待っていた。

すると案の定店員が話しかけて来た。


「中にいる女性は彼女さんですか?」

「...違いますけど」

「どんな服がお好みですか?よろしければ...」

「余計なことしなくて大丈夫です」

「あ...そう...ですか...」


微が店員を思いっきり睨みつけて圧をかけていると、試着室の中から由乃が出て来た。


「ごめんなさい。この子少し人見知りで」

「あ、いえ...こちらこそ申し訳ありませんでした」

「まったくその...いてっ」

「他のお客さんを見てあげてください」


由乃はにこやかにそう言いながら余計なことを言おうとした微の脇腹を小突いた。

店員は気まずそうに去って行った後、由乃は微に少しだけ説教をした。


「あんな冷たい言い方しなくても良いでしょ?」

「聞こえてたのか...。俺はああいうありがた迷惑が嫌いなんだよ」

「だとしてもよ」

「ちっ...分かったよ...」


微は不機嫌そうにそっぽを向いた。

ついでに由乃の着た服はぴったりだったので、それを買って店から出て行った。


「さて、次はどこに行こうかしら...」

「おいまさかもう行く所無いのか?」

「んー服を買うだけだったから、特にもう行こうとしてる場所はないわね」

「何でそれだけのためにこんな所に...」


微のテンションが下がったところで、由乃が雑貨屋を見つけた。

とりあえずその雑貨屋に入ることにした。


「雑貨屋って面白いわよね。色んな便利なものとかあって」

「え?ああ...そうだな...」

「いつまで凹んでるのよ。良いじゃない、せっかく街に来たのだから楽しみなさいな」

「誰のせいで...はぁ...」


微は溜息を吐いた後、店を歩き回って店にある商品を見て行った。


(流に何か買って行ってやるかな...)


微は流に何か雑貨を買ってやろうと女物が集まるエリアに行ってみた。

するとそこには由乃がいて、商品を見ているところだった。


「あら微、ここは女物しかないわよ?」

「分かってる。流に何か買ってやろうかと」

「そう。なら、一緒に選んであげる。先生はどんなものが好きなの?」

「役立つもの」

「役立つものね...」


由乃はキョロキョロと見渡してみて、一つの商品を手にとった。


「これは?カップのホルダー」

「これホルダーなのか?」


大きいクリップの先にカップを入れるためのホルダーの様なものが取り付けられていて、謳い文句を見てみると、『どこでもカップホルダー』と書いてある。

どうやらそのクリップで机などに挟んでホルダーとして使う様だ。


「確かに便利だろうが、使わなそうだな」

「そう?」

「ああ。他にも探してみるか...」


15分ほど店内を見回り、微は気になるものを見つけた。


「何だこれ...?」

「...はん...はんどぶれんだー?」

「ハンドブレンダー?何だそれ」

「刻む、泡立てる、混ぜる。が、この機械一つで出来るらしいわ」

「キッチン用品?」

「そうね」

「ふーん...」

「確かに便利ね」


確かにその商品はとても便利なのだが、少々お高め。微の予算は一応5000円と決めていたのだが、ハンドブレンダーは9000円する。

買えないことも無いが、どうしようかと迷っていると、由乃が一つ提案した。


「先生にはお世話になってるし、私も半分出すわよ?」

「いや、流石に悪い」

「でも、これがいいんでしょう?」

「まぁ...便利ではあるし、この前欲しいとか言ってた気がするが」

「大丈夫よ。何も無償で出すわけじゃ無いわ」

「だろうな。何が望みだ」

「そうね...」


由乃は腕を組んでしばらく頭を悩ませ、思い付いたのか微の顔を見た。


「今月の25日、一緒にどこか出かけましょう?それで良いわ」

「...それだけか?」

「え?」

「いや、別に...。それで良いんだな?」

「ええ、これが良いわ」

「分かった」


二人はそう言ってレジに向かって、流へのプレゼントを買った。


「ついでに、どうして急に贈り物を?」

「流の誕生日、明日なんだ。さっき思い出した」

「ああ、なるほど」

「誘ってくれてちょうど良かった」

「...そう」


由乃は何故かその言葉を聞いて、少しだけ不満そうにした。


(先生のプレゼントを買う為の...“ついで„)


由乃は心の中でそう思った。

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