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「何だ。いないじゃないか」
「家にいるって言ってたんじゃないのか?」
「いるはずなんだが...」
微の家に帰って来た二人は、家にいない母親を心配して電話をかけた。
『もしもし〜?微〜?』
「あんた今どこにいんだ?家にいると思ったのに」
『久しぶりに日本に帰って来たから道分からなくなっちゃった〜。だから今親切な子と一緒に向かってるの〜』
「親切な子...?」
『微のお友達〜お母さん微にお友達がいて、安心した〜』
「ちっ...あいつか。まぁ今向かってるなら、早く来いよ」
『あいあ〜い』
そう言ってから微は電話を切った。
流が見ていたので、一応状況を説明した。
「お袋、今牧田と一緒にこっち向かってるらしい」
「牧田?何故?」
「さぁ?まぁ待ってよう」
微と流は、一応四人分のお茶を用意して由乃たちの到着を待った。
しばらくしてからインターホンのベルが鳴り、微が玄関のドアを開けると二人が立っていた。
「ただいま〜」
「連れて来たわ」
「悪いな、お袋お礼言ったか?」
「ありがと〜由乃ちゃん」
「いいえ」
由乃が帰ろうとしたが、流と母親が止めた。
「せっかくだから上がって行け」
「そうよ〜、お礼もしたいから〜」
「でも...迷惑じゃありませんか?」
「正直迷惑...いてっ」
「上がっていけ」
微が余計なことを言おうとしたので、流が肘で脇腹を突いて黙らせた。
由乃は、「では少しだけ」と言って微の家に上がっていった。
「由乃ちゃん、名前教えて無かったね〜、早苗って言うの〜よろしくね〜。微と仲良くしてくれてありがとね〜」
「いえ、そんな...。こちらこそ仲良くして頂いて」
「仲良くはしてない」
「あらぁ〜微が照れてるわ〜珍しい」
「照れてない」
「照れなくて良いわよ微」
「うるさいなお前」
微はわかりやすくイライラし始めた。
「微はね〜あまり人と話さない子だからね〜。女の子の友達どころか男の子の友達もいなくてね〜」
「そうでしょうね」
「中学三年生の時の修学旅行なんて一人で回って凄く楽しそうにしてたのよ〜?あの時は本当にこの子大丈夫かしらって思ったわ〜」
「回りたいところ全部回れたんだ」
「先生すらも撒いたって言ってたな」
「しつこかったがな」
微は茶を啜って少し自慢気だった。
一人で回れたことが本当に嬉しかったのだろう。
「まぁ、1月の修学旅行は私も同伴するから決して一人では回れないがな」
「別に流なら構わない」
「じゃあ私も一緒に回るわね」
「お前はいい」
「どうしてよ、私だって微と一緒に回りたいわ」
「他の奴と回ればいいだろ」
「あらぁ〜微がモテてるわ〜しかもこんな美人さんに〜」
早苗はとても嬉しそうにしながらニヤニヤしている。
「てか親父は?」
「お父さんは仕事でこっちに来れませ〜ん」
「置いてきたのか」
「そうとも言うわ〜」
「元気か?親父は」
「相変わらず仕事漬けだけど〜大丈夫〜元気よ〜」
「そうか」
「あまりお父さんに無茶をさせてはいけないぞ」
「分かってるわ〜任せてね〜」
ずっと黙っていた由乃が、三人に質問した。
「あの、海外で仕事って...、何をしてらっしゃるのでしょう?」
「え〜気になる〜?気になっちゃうのね〜?」
「親父は大学の講師、お袋はファッション雑誌の編集長ってか社長だ」
「凄いですね...。早苗さんは何の雑誌の社長を?」
「えっとね〜、◯◯◯◯って雑誌だよ〜」
早苗がそういうと、由乃は目を丸くして驚いた。
「え!?それって凄く有名なファッション雑誌じゃないですか!」
「あら〜知ってる人いたわ〜」
「俺も聞くまで知らなかった」
「私もだ。よく知っていたな牧田」
「いえ...逆に何で知らないんですか...」
早苗が所属しているファッション雑誌は、世界でも5本の指に入るほど有名だが、ファッションに興味の無い微と流は知らなかったようだ。
「あ〜そうだ微〜私の雑誌に載ってよ〜」
「え...嫌に決まってるだろ」
「何でよ〜お母さん困ってるの〜お願〜い」
「日本でも売られてるんだろ...。もし見つかったら嫌だし。他の人に頼め」
「微〜お願〜い」
「嫌だ」
「微」
「っ...!」
早苗は先程までのゆったりとした喋り方ではなく、急に声が低くなった喋り方になり、微を見る目も鋭くなった。
それは微が睨んでくる目とそっくりだった。
「お母さん困ってるのだけど」
「う...でも嫌なものは嫌だし...」
「へぇ?」
早苗が出す圧の様なものが微にのし掛かって、微は俯いて早苗の顔が見れない。
「じゃあ、お母さんと一緒に日本から出る?」
「強制じゃないか!」
「あら、強制じゃ無いわ?微が首を縦に今から振るの。ちなみに、快く承諾してくれるなら日本を出ないであげる」
「う...。じょ、条件が...一つある」
「なぁに?」
「日本にはその雑誌を売らない様にしろ...」
「『しろ』?」
「して下さい...」
「ん!分かったわ〜ありがと〜微」
早苗はいつもの空気感に戻った。
流は澄まし顔で茶を啜っていた。そんな流にも早苗の矛先が向いた。
「ついでに流にも来てもらうわ〜」
「は?私もか?」
「当たり前よ〜微一人じゃ言うこと聞かないもの〜」
「私もその雑誌に載らなきゃいけないのか?」
「不満でも?」
「...無いです」
こうして微と流は早苗がプロデュースする海外の某有名雑誌に出ることになった。
ついでに由乃は早苗の恐ろしさを知った。




