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放課後、授業も終わり学校にもう用はない微は、早々に家に帰ろうとしていた。
だが、帰ろうと下駄箱に向かっている途中で流から連絡があった。
「もしもし」
『微か?少し残っててくれ。私も一緒に帰る』
「...ああ、なるほど」
『理解が早くて助かる』
微は、今日母親が帰って来る事を察して、駅前にあるファストフード店で流が仕事を終わらせるのを待つことにした。
その道中、由乃が後ろから声をかけて来た。
「微、一緒に帰りましょう」
「帰らない」
「あら、どうして?」
「流が終わるのを待つから」
「一ノ瀬先生を?どうして?」
「...母親が帰って来るから、一緒に帰って来いとか言われたんだろうな」
「あぁ、前に言っていた事ね」
由乃は納得のいった顔をして手を叩いた。
「それでどうして駅の方に歩いて行くの?」
「別にどうだっていいだろ」
「駅にある店で時間潰しね。なるほど」
微が嫌そうな顔したので由乃はその憶測に確信を持った。
そしてもちろんそんな微を由乃が放っておくわけもなく、付いて行くことを告げた。
「嫌に決まってんだろ」
「良いじゃない、先生が来たら帰るから」
「また送れとか言われる」
「送ったらいいじゃない」
「何故お前は時々上から目線なんだ?」
「お願い、ね?微といたいの」
「勝手にしろ」
微は溜息を吐いて由乃を置いて駅の方へと歩き出した。
由乃は嬉しそうに笑って微の横を歩いた。
ファストフード店に着いた微たちは、適当に注文した後、二階にある駅を一望できる席に座って流を待つ事にした。
「ここなら先生が来たら気付けるわね」
「終わったら連絡来るからここじゃなくても良いんだがな」
微は外の景色、というより空を眺めながら流を待った。
由乃も微の見てる空を眺めてみた。今は夕焼け色に染まっている。だが夕日は別の方向にあるので見えない。
「微のお母さんは、具体的にどんな人なのかしら?」
「お袋?」
「ええ、この前『俺らを生んだとは思えない』って言ってたから、少し気になってて」
「あぁ...言ったなそんなことも」
「どんな人なの?」
「何というか、マイペースだな。俺と流を否応なく巻き込んで行くタイプだな」
「二人を?凄いわね...」
「俺らはどちらかというと、父親を見て育ったな。物静かで、寡黙だった」
「そうなのね」
微と由乃がそんな話をしていると、流から連絡があり、微と由乃は店を出て、店の前で流を待った。しばらくしてから流がやって来て、由乃がいることに驚いていた。
「なんだ、牧田もいたのか」
「お疲れ様です先生」
「何か付いてきた。じゃあ俺らは帰るから、お前も気を付けて帰れよ」
「ん?一緒には帰らないのか?」
「帰らないだろ?」
「帰るわよ?」
「え...帰るのか?」
結局由乃も二人と一緒に帰って、今日のところは由乃も寄り道をしないで帰った。
微たちと分かれて家まで真っ直ぐに帰っていた由乃は、前の方で荷物を道に落としてしまったのか、しゃがんで拾っている女性を見つけた。
由乃の方にその荷物が転がってきたのだが、女性は気付かずどこかへ行こうとしてしまった。
「あの、これもあなたのですか?」
「?。...あらぁ〜そうみたいです〜thank you〜♪」
「いいえ」
やたらと発音の良い英語でお礼を言われたが、由乃はニコッと微笑んだ。
由乃は女性にしては割と背の高い方なのだが、その由乃と比べてあまりにも小さいその女性は、由乃を高々と見上げている。
「大きいのねぇ〜、それにとても綺麗だわぁ〜」
「いえ、そんなことは...」
由乃は謙遜して返した。
そろそろ由乃は帰ろうとしたところで、女性が由乃を引き止めた。
「あのぉ〜ここら辺で、和泉って言うお家知らな〜い?」
「和泉...?心当たりが一つだけありますけど...」
「息子と娘がその家に住んでるんだけどね〜?久しぶりに日本に帰って来たから分からなくなっちゃった〜」
「息子...」
由乃はジーッとその女性を見てみた。すると、どこかその顔に面影のある人物が浮かんだ。
(微にどことなく似てるわ...それに和泉って...)
「つかぬ事をお聞きしますが...。その息子さんのお名前は...?」
「微って言うの〜」
「........っ!」
間違いなく、この女性は微の母親だった。
「その家なら知ってます、友達なので。よろしければお送りします」
「あら、微のお友達〜?あらら〜じゃあお願い出来るかな〜」
とりあえず、由乃は微の母親を微の家まで送ることにした。
続きます




