Episodes 0 日常から
…………ここは?
微睡みの中薄く目を開けると、何処かの見たことのあるような公園に[俺]は立っていた。
『やーい、変態~』
『おばけ女~』
後ろから子供の声が聞こえたので振りかえると、数人の少年たちが、眼鏡をかけた幼い少女を囲んでいた。
そんな彼らは笑いながら、少女の肩まである黒い髪を引っ張っている。
…………またこの夢か。
そう思っていると、公園の入り口から黒い髪をした幼い頃の[僕]が走ってきて、少女の髪を引っ張っていた少年を殴った。
『いってぇ! なんだてめえ! 』
『やっちまえ!』
彼らは多少驚きながらも、いきなり現れた[僕]に反撃する。
人数が勝っているせいなのかひとりが[僕]の腕を後ろから羽交い締めにし、[僕]が抵抗している間にもうひとりが[僕]の頬を殴った。
唇を切ったのか、[僕]の口から赤い液体が一筋流れるが、シュゥゥという奇怪な音と共にその赤い液体が消え始めた。
『なおったぞ!』
『ばけものだ! 』
『ばけものだ~』
………胸糞悪いなぁ。早く起きればいいのに。
[僕]を殴った少年は与えた傷が治っていくのを見て、面白い物をみたと思ったのかはしゃぎ始めた、他の少年も同じようにはしゃいでいた。
羽交い締めから解放されたのでその間に[僕]は少女を守るように立っていた。
その光景を俺は見ていると、一筋の閃光が起き、いつものように彼らは消え去っていく。
…………こんな事知らないのになぁ。
再び目を開けると、自分の記憶の中では見たことのないはずなのに既視感があるような森の中に立っていた。
そして隣には[僕]がいた。
『……? 』
『……? 』
[僕]は首を傾げて、後ろを振りかえったので俺も同じように後ろを振り返ってみると、闇夜のような黒い服を着た、同じ色の髪を背中まで伸ばしている少女が首を傾げて[僕]をみていた。
『おまえだれだ? 』
『……わたしのなまえは──? 』
『なんで疑問系なんだよ』
『……? 』
『はぁ』
……はぁ。
[僕]はその少女に話しかけると、彼女はまた首を傾げて名前を言った。が少女の名前は聞き取れなかった。
[僕]は彼女の言動がおかしかったのか苦笑いになりながらもツッコミを入れると、彼女はみたび首を傾げていた。
そんな光景に溜め息をついてしまう。
瞬きをすると、何故か湖のほとりに俺は立っていた。
[僕]と少女の姿を探すために辺りを見渡すと、眼と鼻の先にいた。だがふたりは蝙蝠のような羽が生えた通常より大きな蜥蜴、いや神話の生物であるドラゴンのようなものと対峙? していた。
『はやくにげろ! 』
『……わからない』
[僕]は少女を背中に下がらせると彼女に逃げるように叫んでいるが、混乱しているのか首を横に振って苦痛そうな声で彼女はそれを否定していた。
……もうそろそろ、か
ドラゴンのようなものが獰猛に笑ったように見えた。すると首を上げ、口から赤いブレスを吐き出そうとしてきた。
この後の事が予想できたので俺は耳を防ぐが、直接脳内に誰かの叫び声が聞こえてきた。
「…………ろ! ……きろ! 」
……またこんな所で醒めるか。しかし五月蝿い
「いい加減に早く起きろ!」
「わかってる。五月蝿い」
「あたっ! 痛いぞ」
眠りから醒めるといつもの怒鳴り声が耳元から聞こえていたので、ベッドから起き上がり怒鳴り声の主の頭を軽く叩くと、俺の従姉妹のマイが頭を押さえながら文句を言った。
俺は先程みた夢の内容を頭の中に入れて、部屋にある時計を覗くともう少しで7時になる所だった。
「起こすときは叫ぶな。いつも言ってることだろ」
「たんこぶ出来てるぅ。朝御飯出来てるよ」
「わかった。着替える。部屋を出ろ! 」
説教をしようとするがまだ文句を言っていたので頭を押さえている彼女の首根っこを掴み、部屋から追い出す。
その後寝巻きから制服に着替える。
「はぁ、叔母さんはおっとりとしているのになんでその娘のマイはあんなに五月蝿いのかねぇ。しかし、あの夢は。っつ! 」
マイの事で溜め息をつき、先程まで見ていた夢の内容を深く思いだそうとするが、頭に激痛が走ってしまい考えるのを止めてしまう。
最近変な夢を見るようになっていたが、夢の内容を深く思いだそうとすればするほど何故か頭が痛くなって思考が停止してしまう。
しかし、夢の中の少女を何処かで見たことがあるような気がするが、深く思いだそうとすると先程言った通り頭痛がしてきたので考えるのを止めた。
「早くしないとご飯無くなりますよ~」
「わかった」
そうこうしていたら一階からマイの双子の姉であるアイが俺を呼んでいたので手早く着替え終わり、部屋を出て1階にあるダイニングキッチンに入ると、そこには微笑みながらパンを食べている叔母のリースと少し寝惚け顔の、ジャムを塗っているアイマイが座っていた。
「叔母さんおはよう。カイトは? 」
「リューさんおはようございます。カイトさんは上司からお呼びがかかりましたのでお仕事に出掛けましたよ」
俺も朝御飯を食べる為に椅子に座り叔母さんに挨拶をする。
そして叔父であるカイトの姿が無かったので叔母さんにカイトの事を聞いてみると、彼女は挨拶を返し、カイトが仕事に出掛けたと微笑みながら答えた。
「わかった。学校に遅れるからアイ、マイ。先に行ってる」
時計をみると登校時間まであと少しといった所なので机に置いてある麦茶を飲んだ後、ウィンナーが挟んであるパンをとり2人に声をかけてから家を出る。
「あ! まってください。リューくん!
ちょっと、待ちなよ! リュー! 」
学校へ道のりを歩いていると、追い付いたのか2人の俺を呼び止める声が後ろから聞こえたので歩くスピードを遅めて合流する。
「リューくん、歩くの早すぎだよ
もう、無理、疲れた」
ちょうどパンを食べ終わるとふたりが追い付いてきたが少し走ったのか呼吸が乱れていた。
「はいはい。行くぞ」
アイマイの姿を確認した後、見上げると白、赤、緑、青、黄、5色の飛行機雲が一直線に空を描いていた。
見上げた後、正面に顔を戻すと目の前が真っ暗になり意識が途切れた。
Episodes0は5/13投稿予定なので次回であるEpisodes1[異世界へ]は5/17~5/30に投稿します。
一応タイトルやキャラの名前は考えた後フルネームで検索してでない物を使用しています。
見やすいように地の文の最初は一行開けようとしましたが何故か出来ませんね。また今度試してみます。