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蒼炎之狼~覚醒編~  作者: LIAR
第1章 記憶喪失のおっさんと稲妻の剣
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来るべき未来へ

『ダッシュで来い!』


 ケラウノス……あんなのどうやって倒せるんだよ


『言えば、信じるのか?』


 う、それは……内容によるよ……

 無理だろ、だってあんなでかくて、それに――


『いい。もう貴様には期待せん。見ての通り俺様は剣士がいないと力を発揮出来んからな』


 そりゃ、剣だからな


『――ああそうさ。たとえ俺様がこの星を丸ごとぶった斬る力を持っていたとしても、だ。貴様がいつまでも動かぬなら、俺様は只の鉄塊さ』


 だって、だって何にも覚えてないんだぞ? 訳もわからずこんな所で、あんな化け物を……無理だよ……



『無理、か……解った。貴様なんぞそのままアレに喰われてしまえ。俺様は次の主を此所で待つ』


 そんな……俺、こんな所で死にたくねえよ……



 すると、ケラウノスの柄の部分が光り出した。



『まだ解らんのか! どの三千世界に於いても、いつもそうだ、貴様等人間が! 人間だけが未来を……チッ、もう知らん!』



 ケラウノス……怒ってる?


 ケラウノス? 人間だけが、何だよ……おい


 ケラウノス! おーい



 ……返事がない。



 巨大なニンジンの化け物はゆっくりとした動きながら、歩幅があるので確実に距離を縮めて来ている。



 もう、選択の余地はない。


 死ぬか。戦って、死ぬか……


 俺は……俺は……




――気付くと俺は走っていた。ニンジンの葉に足を取られて何度も転びながら、無我夢中で、ケラウノスの元へと。


「ゼィ、ゼィ、ゼィ……」


 満身創痍だ。落下の後でもう、一歩も動けないと思っていたけど、何とか前に、前に……


「ハァ、ハァ、もう、少し……」


 俺、自分の事、何も解らない、でも……

 解らないまま、死んでいくなんて嫌だ!


「ゼィ、ゼィ、ゼィ……」


 ごめんな、ケラウノス。さっき助けてくれたのに、弱音ばっかり言って……


 お前の言う通りだ。未来を……


「ゼィ、ゼィ……」


 人間だけが未来を変えられる! そうなんだろ? ケラウノス!

 俺の未来を切り開けるのは、俺だけなんだ!



 倒れ込みながら、ケラウノスの柄に手が触れた。強く、強く握りしめた。


 どうだケラウノス……あと頼めるか?



『ああ。頼み方がなっちゃいないが、まぁいいだろう。合格だ。よくやったな』


「へへ……」



 化け物の触手が唸りを上げているのが聞こえたが、俺は此所で、意識が朦朧となっていった。



『我並びに我が使いよ……天空にあまねく精霊達に告ぐ……』



 ケラウノスが何やら唱え始めた。その美しい旋律のような声を聞きながら、俺の意識は心地好い闇へと、溶けて行った――




――時同じくして、軍用車両は急ブレーキをかけた。



 キキィーッ!



 がっつりとシートベルトに引き戻されたフードの男は、隣で頭を抱えている女に言った。


「大丈夫ですかマスター!」



「ったぁ……何!? どうしたのよ!」


「こ、これ見て下さい!」



 中央の画面ディスプレイの赤い点が、徐々に大きく拡大していく。


「ま、まさか!」


「どういう事ですかこれ」


「戻って! カノン! 逃げるのよ!」



 軍用車両は、路面から外れながらUターンをきめた。



「何が起こってるんです?」


「くっ、時間がないっ」



 拡大していく赤い点は、みるみるうちに画面ディスプレイを侵食していった。やがて青い点にも触れるのであろう事が、カノンと呼ばれた男にも想像出来た。


「カノン、ここから一番近い(世界)に飛ぶわよ!」


「えー!」


 女は画面ディスプレイを操作した。


「KNB2006α-……グラーデか……仕方ないわね!」


「え、そこって……物理世界(あっち)の星ですよそれ!」


「時間無いって言ってるでしょ! これは間違いなく″あの人″よ! 彼も其処へ飛ぶはず!」


「何でわかるんですか?」


「このエネルギー値見て。この世界システムの許容を超えてる! 爆発するわ!」


「えーっ! 何してんだよあの人は!」


「知らないわよ! 会ったら殴ってやる!」



 軍用車両は、迫り来る稲光を後方から視認すると同時に、光の玉となって天空へと上昇していき、やがて消えた。



――その日、1つの星が消滅し、2つの光が惑星に落下したのを、惑星グラーデのとある国の通信衛星が確認した。



 これが後の銀河系星間戦争の引き金となるのは、これまたずっと後のお話。




第1章――終――

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