誤算
「来い! 化け物!」
「ギャギャギャギャー!」
前方から襲い掛かってくる三匹を横に一閃、まとめてなぎ倒した。
そこに落下してきた先程の4本脚のニンジンを再度蹴り上げ、ニンジンを持って振り回している別のニンジンお化けにぶつける。
「ギャ? ギャー!」
車を背にして前方から来る化け物達を相手していると、今度は背後から叫び声が。
「グギーィ!」
「てめえ! それに触るんじゃねえ!」
飛び後ろ蹴りでそいつを吹っ飛ばし、俺はボンネット上に着地した。
「これは俺のだ! ……多分」
5分後。
次々と集まって来る化け物共だが、剣を振り回せば当たる。さほど速くない。そして、ほぼ一撃で死ぬ。
ちょっと……いや、かなり、退屈になってきた。
「おい……あの……ちょっ……ちょっと待て、てめえら! 弱すぎだろ!」
「ギャギャー!」
しかし……この数は……
辺りを見渡すと、全く数が減っていない気がする。
緑の葉っぱが次々と揺れ、ボコボコと異形の姿を現していた。
ちょっと……流石に、バテてきた。
このままだと、ヤバい。延々と続けられたら、流石に……
「ハァ、ハァ、ハァ……」
――どれ程の時間が経ったろうか――
尋常でない、夥しい数の死体、と呼べば良いのか……生ゴミの処理場みたいだ。
しかも、全然、減っていない――
体力を使い果たした俺は、ゼイゼイとその場にへたれ込んだ。
ダメ、かも……死ぬ……な、恐らく……
目が回る。力が入らん――
大の字になってしまった。
このまま、喰われるのかな……夢なら良いな……何にも思い出せないけど、最後に闘って死ねた……って、事で……良しとする、かな……
嗚呼……
空が……
綺麗だ……
……あれ?
え?
襲って、来ない……
周りを見ると、奴等はおかしな行動を一斉に始めていた。
「グギャ! ガブッ!」
「ギャ! ギャギャ」
奴等は、一斉に共食いを始めやがった。
なにこれ……
何とも凄惨な光景だ。ニンジン共は一匹喰う毎に一回り大きくなっていく。
でかくなったニンジンがまた別のニンジンに喰われ、更に巨大になっていった。
おいおいおいおい……この展開は……
キング◯ライムかてめえら……ん? キング◯ライムって何だ……ああ、ガキの頃にやったゲームの……
「う!? ううあっ! っくぅぁ……」
突然、物凄い頭痛に襲われた。尋常でない激痛に、身をよじりながら頭を抱えた。
何だ、これ……
もしかして、何か思い出す展開か、この痛みは……
「ぐぁぁぁっ……ぁ……あれ」
暫く動けずにいると、さっきまでの痛みが嘘のように消えた。
「え……何だ、痛みが……」
そして結局何も変わっちゃいなかった。
何だったんだ――傷口に塩を塗られたような、そんな気分――
ふと、辺りが影に包まれた。そして、嫌な気配。
「グ……グルゥ……グ……」
ま、さ、か……
影を目で追っていく。
そこには、身の丈10メートルはありそうな、巨木のような、そいつが立っていた。
「う……うわあああっ! !」
「グルァアアアアアアッ!」
変わったのは、こいつの方だった。