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蒼炎之狼~覚醒編~  作者: LIAR
第2章 森の狩人と近衛騎士
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烈の瞬き

 手にしたペンダントはいつもより強く光輝いていた。



「むぉ!?――」



 クァァァァァァァ──



 甲高い音が鳴り響き、ペンダントの光は大きくなっていく。


 持っているのが辛くなるほどの熱が手に伝わってくる……



 くっそぉ、トモの野郎! 熱いって言えよ!




『ごめーん。もうちょっとだから』


 軽く言うなよ! 火傷確定だぞこれ!




 俺の苦悶の表情に比例して、コレルの顔がみるみる歪んでいく。



「貴様ぁ! 既に″其処に″居たのかぁぁっ!」



 そして、コレルを包み込むほどの巨大な光の矢が、ペンダントから迸った。




――バシュゥッ!



「ぐぅぁ! これ程とは……認めん! 認めんぞ! 貴様等、蒼の、蒼のああああああぁぁぁぁ……」


「黙って死ねぇぇぇぇぇぇ!」


『いやいやいや、兄貴、さっき言ったけどそいつ死なないんだってば……ま、いっか』



 貫いた光は消え、コレルは両膝を地面に着き、仰向けに倒れた。



「コレル! 大丈夫かコレル!」



 コレルを抱き抱えた。息はしている。酷い脂汗をかいてはいるが、いつの間にか辺りを漂わす異臭は消えていた。



『逃げやがった……野郎、やっぱり白き牡鹿の言う通りだったぜ』


 白き牡鹿? なんだそりゃ。


「メスじゃなかったのか? 伝説じゃ、白き″牝鹿メス″って聞いたぞ? どっちだ?」


『あ、それはね……』


「ぅ……うぅ……ぁ……何で、鹿が……」


「コレル!」



 目を開けたコレルが、俺の後方を見て震えている。



「鹿? お前まで何言ってん――」



 気配を感じ振り返ると、其処には真っ白い体毛の牡鹿が立っていた。



「うおあっ! しし、しか、しろ、し、し鹿っ」


『驚かなくて良いよ。俺だよトモだよ』


「え? トモ? ……はぁ? トモって、何で、お前、鹿になったの?」



 頭がどうにかなったのかと思ったが、確かに先程のやり取りを思い出すに、今更、もう何も驚く事はない。そうだそうだ。落ち着こう。



 俺は深呼吸をすることにした。



『説明は後で。取り敢えず、その人を休ませないと』


「お、おぅ」



 コレルは朦朧としていた。テントに運んで寝かせる。


 水を飲ませると、コレルはあっという間に安らかな寝息をたてて眠った。


 はあ、俺も、喉がカラカラだ。


『あ、兄貴はその水飲んじゃダメだ。この辺に生えてる″眠り草″を擦った匂いがする』


「ブッ! あっぶねえっ! 何で? えぇ? 何で、口付けてから言う? バカ? お前バカ?」



 こいつは……



『ヒッヒッヒッ……鹿ですが何か』



 間違いない。この馬鹿な鹿は間違いなく、俺の弟なんだとやっとこれで確信出来た。



 皆暫くは起きないだろうと言うシカの言葉に従い、俺達は再び見張りをしていた切り株の所まで来て腰掛けた。


「ふぅ……」



 夜空には沢山の星が瞬いている事を、今更に驚く。

 街で見上げる夜空とは圧倒的に質量が異なって見えた。



「此処は星が綺麗だな。こんなに煌めいて入るとは」


『ああ、あいつが逃げたから余計に空が澄んでるね』



「そうなのか」




 こうして兄弟で夜空を眺めたのはいつの頃だったか……

 そう、あの頃と違うのは……それぞれの立場と、今コイツが鹿になっている事。



 そうそう、後は何にも変わっちゃいない。




……大問題だよ。




「トモ。ちゃんと説明しなさい。兄ちゃん怒らないから」


『嘘だっ!』



 怒りが治まらん。コイツばかり何か知ってる感がどうにも許せん。

 内容次第じゃ、白い鹿だろうが何だろうが、容赦なく殴りつけてやる……


……まぁ、結局何も出来なかった自分に一番腹が立っているんだけど。



『兄貴さぁ、そう言って怒らなかった試しがねぇじゃん』


「そうだな。解るか? 俺が今どれだけ……お前がそんな姿じゃ無かったら――」


『ぶっ飛ばされてる。解ってるよ』




 悪びれもせず淡々と言葉尻を返しやがる。

 全く、怒りが逸れちまったよ。



「ならいい。話してくれ」


『うん。じゃあ、この土地にまつわる話からいこう。

 実はこのバルディウス王国が建国される前……

 遥か昔に起きたとある事件から説明しなきゃならないんだけど……時間あるから良いよね?

 今から二千年くらい前――』


「おい! つい三年前みたいな口調で古代を語るのははよせ。

 二千年前だと? どんだけ大昔の話なんだ。見たわけじゃあるまいし」


『ハハハ、俺達、忘れてるけど実は見てきたらしいよ。魂がね。最も、俺も牡鹿に逢うまでは、はあっ? って感じだったけど』


「魂、だと?」



 これからトモが話す内容は、俺の許容範囲を遥かに超えたものになる事は、間違いないようだった。





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