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蒼炎之狼~覚醒編~  作者: LIAR
第2章 森の狩人と近衛騎士
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警戒

 夜は一人三時間ずつの見張り番ということで、俺が最初に名乗りを上げた。


 皆、空元気だったんだな。

 ジェイクのいびきが苛々する。


 あー! 気が散る!


 結界の境界線付近に丁度良い感じの切り株があったので、そいつに座って警戒する事にした。


――三十分程すると、背後から声を掛けられた。



「マサトさん、ちょっと、いいですか?」


 コレルだった。


「うあっ! こ、コレル? あぁびっくりした……危うくコイツ(ハンマー)でぶん殴る所だったぞ。どうした、眠れないのか?」


「すいません、あの、実は……」



 コレルの表情が暗い。



「何だよ。俺はアッチの気はないぞ」


コイツ(ロッド)でぶん殴りますよ! いや、実は皆さんが森に入っていって三十分位してからの事なんですが」



 コレルは、周囲を見渡してから俺を見た。



「この森、やっぱりおかしいです」


「どういう事だ。率直に言え」


「笑わないでくれますか?」



 コレルの瞳が潤んでいる。可愛い……あ、いや、俺はそんな、違うって。こいつ本当に男か!



「あ、ああ、笑わないから言えよ」


「はい。この当たりの精霊の、様子が変なんです」


「変? どんな風に変なんだ?」



 精霊自体に個別の意思はないと教わった。

 どちらかというと″感情に近い全体的意思″だとか。

 もう、自分でも何を言ってるか解らんがね。



「はい。まるで何かに、怯えているような……」


「そりゃお前、俺達(よそ者)が来たからじゃないのか?

 人間を警戒するのは自然な感情じゃないか」


「そうです。わかってますよ。僕も最初はそう思ったんです」



「そうか。まあ、魔法科の人間に俺が魔法を語るってのも何か、滑稽な話だな。どこがどう違うんだ?」


「最初に結界を張った時は何の異常もなかったんです。

 僕の考えですが、そのあと地霊神の加護を受けたじゃないですか。恐らくアレだと思うんです」


「ああ。俺大っ嫌いなんだよね、あれは」


「痛いですもんね。僕もです。

 それに妖魔なんて時代遅れの化物、いるわけない……って、思ってたんです」


「思って、た?」



 コレルの意図がわからない。



「精霊が、急に色めき出したというか、興奮したというか……」


「色めき……どういう事だ」



 コレルは首を横に振った。



「わかりません。もしかすると、この土地の地霊神が″訳あり″な神なのかも」



 それって……



 俺は、昼間のカミラの話を、思い出した。

 妖魔が誓いを立てて地霊神になったとか何とか……

 それが何か曰く付き物件みたいな土地になったって事、なのか?



「それならよ、俺じゃなくてウォレスに聞けよ。あいつが導師でやったんだから」


「だって……あの人苦手です。目が怖いんですもん」



 泣きそうな顔をするコレルに笑った。



「心配ない。あいつは冗談でも何でも真顔で言う癖があるだけだ」


「本当ですか。ならいいんですけど」


「それよりお前、そんな事なら何で部隊長ジェイクに報告しない?」



 コレルの表情が強張ったのを、俺は見逃さなかった。

 コイツ、まだ何か隠してやがるな。



「それは、隊長に言ったら一笑に付されそうで、嫌だったんです」



 報告漏れは、部隊の死活問題だろ……



「そうか。でもな、ジェイクが地霊神の加護を受けようって言ったんだぞ。ちゃんと報告しないと」


「すいません。マサトさんなら、東方の国の出身でしょ?

 蒼き狼の伝説は知っていると思って……」


「ああ、東方から来た神の使いって奴か」



……何も知らんけどな。今日初めて知ったし。



 でもコレルは目を輝かせて喜んだ。


「そうです! 知ってるんですね! 良かった」


「何が良かったんだかわからないが」


「それなら、ここの地霊神が″何″か、御存知でしょう?」


「は?」


「いやぁマサトさん。危うく騙される所でしたよ。意地悪だなぁ。ここまで話していて、中々尻尾を出さないんだから」



 コレルはニヤリとして見せた。ちょっと人間離れしたその含み笑いに、俺は寒気を感じた。


 コイツが何を言いたいのかわからない。



「何だそれ。東方の出身なら何か知っていなきゃいけないのかよ」


「フフフ……勿体振らないで下さいよ」


「何をだ?」



 コレルはニヤニヤしながら言った。



「もういいから。蒼炎の紋章を、見せてください」



 コレルの眼は、もう笑っていない。


 何だ、コイツ……



「そうえんの紋章? 何それ。何の事を言っているんだ?」


「もう、しらばっくれなくてもいいんですよぉ。弟を探しにきた訳ではないんでしょう?  ″そっちの方″が大事ですもんねぇ」



「お前……誰だ?」



 コレルの眼が、白く光り始めた。


 飯の時のアレは、錯覚じゃなかった。

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